定例記者会見(2017年7月25日)

株式会社国際協力銀行 総裁記者会見

  • 日時)2017年7月25日 16:30~17:30
  • 場所)国際協力銀行 本店
  • 説明者)総裁 近藤 章

総裁からの説明

去年の6月24日、BREXITの日に就任いたしまして、その前に4年間、国際協力銀行の社外取締役を務めましたので、JBICの仕事に携わるようになり、ちょうど5年あまりです。やはり、社外取締役であった4年間と、総裁を務めた1年間は、JBICとの距離が違いますので、この1年間どういうことを考えたか、どういうことを感じたか、まずお話したいと思います。

Ⅰ.輸銀・JBICの長い歴史と世界や実績

ご承知の通り、JBICは1950年にできた日本輸出銀行からスタート致しまして、1952年に日本輸出入銀行になり、その後、幾つかの変遷を経て、2012年4月から現在のJBICの体制がスタートしています。この長い歴史の重みというのは、やはり私が1年間ここで仕事をさせて頂いて、非常に強く感じております。

他の先進国や発展途上国にも、JBICと同じようなExport Credit Agency(輸出信用機関、ECA)はありますが、1950年代から積み上げてきたJBICの実績は、こうした各国のECA、あるいは世銀グループ、アジア開銀、米州開銀、アフリカ開銀等のMultilateral Development Bank(国際開発金融機関、MDB)に比べて、全く遜色のない、世界に誇るべきものだと私は改めて感じる次第です。

地域別に少しお話します。第一に、アジアについてですが、東アジアについては、JBICの中国向けの累計の出融資・保証承諾額は4兆円近く、韓国向けは1.2兆円あります。また、東南アジアはASEAN5か国で13.1兆円。これらを合計すると約18兆円になります。中でも中国は、今や世界経済を牽引する力になっていますが、中国が提唱する「一帯一路」について言えば、JBICとしても古くから、その対象エリアで日本企業が関わるプロジェクトへの融資を多く手掛けています。お手許資料p.17をご覧ください。中国を除いた金額ですが、例えば、中央アジアからロシア、欧州を通る「一帯」エリア向けには累計12.7兆円。海を回っていくルートである「一路」エリアでは16.2兆円の承諾実績があります。また、南アジアでは、インドとJBICの関係は早くからスタートしています。最初に旧輸銀が円借款を供与したのはインドということで、非常に長い歴史があり、累積承諾額は1.3兆円にのぼります。

第二に、ロシアについても、資源を中心に、1.6兆円の累計の承諾実績があります。色々と考えるべき論点はありますが、JBICとしては、日本政府と良くご相談しながら、更にロシアでの経済協力を深めていきたいと考えております。

第三に、中南米諸国に関しても、JBICは資源確保の観点から、あるいは日系企業の進出支援の観点から、色々な面で協力を果たしています。特にブラジルやメキシコなどはJBICにとって重要な国になっています。

第四に、中東におきましても、湾岸諸国ではエネルギー資源の確保という観点から、更には各国への産業政策への協力も含めた重層関係構築へと、重点が移りつつありますが、非常に大きな額の出融資保証の承諾をしております。それから、トルコも、最近の病院PPP支援ですとか、インフラ中心に大きな進展がございます。トルコ政府の発行するサムライ債への保証により、東京のサムライ債市場の活性化支援とホスト国との関係強化に繋げる取り組みもしています。

最後に、アフリカについても、JBICは2017年8月に開催されたTICAD VIの機会を捉えて、2013年6月に創設した「アフリカ貿易投資促進ファシリティ(FAITH)」の実施期間を1年延長し、金額を50億ドルから70億ドルまで増額することで、アフリカ向け投資支援を拡充致しました(「アフリカ貿易投資促進ファシリティ(FAITH2)」)。

Ⅱ.日本の政策金融機関として、各国輸出信用機関や国際開発金融機関と協調して民間資金を呼び込む

全体としてJBICが世界の経済、日本の企業の発展に果たしてきた役割というのは非常に大きいと思っていますが、他方で、日本企業を支援するという政策金融機関としての役割の中身は変化してきています。最初は輸出金融から始まり、その後は、時代と共に、輸入金融、海外投資への金融などへと融資スキームも多様化してきました。

昨今では、「融資から出資へ」というリスクマネー供給強化への流れがあり、これはJBICのみならず世界のECAやMDBにとっても大きな流れです。しかしながら、一つの制約は資本です。特にMDBにとっては、加盟国からの増資はリーマンショック直後には多くなされたものの、最近では難しくなっています。従って、限られた資本をどう有効に使っていくかが共通の課題となっています。

また、資本の有効活用にも関連しますが、どういうリスクマネジメントをしていくかも重要なポイントです。私は民間金融機関にいた経験から、我々が支援するプロジェクトはBankableではないといけない、つまり資金回収が確実でなければいけないと申しております。ただ他方で、我々の場合、またMDBの場合も同じですが、政策に即したリスクテイクが出来るし、民間金融機関よりも長い資金の調達や供給も出来ますので、こうした強みを活かしていく必要もあります。もう一つ忘れてならないのは、リーマンショックのような国際的な金融危機に対して公的機関が果たす役割です。我々、JBICも当時は円高対応緊急ファシリティの下、民間金融機関と協調してメーカーや商社等の海外進出を支援してきました。加えて、国際金融公社(IFC)と協力して、発展途上国の金融機関への資本増強を支援するファンドを立ち上げました。これは我々の今までの出資の中で一番規模が大きいのですが、きちんと資金回収も出来ており成功しています。

こうした状況の中で、今まで以上に各国のECAあるいはMDBとの協調が求められてくると考えています。お手許資料p.14をご覧下さい。これは、我々のECAやMDBとの協調実績の事例を幾つかお示ししたものです。例えば、韓国輸出入銀行は我々の約10分の1の規模ですが、昨今、第三国でのプロジェクトでの韓国企業と日本企業との協働に伴い、協調融資の事例も出ています。大型案件で言いますと、北豪州のイクシスLNGという、INPEXがやっておられる洋上の液化天然ガス開発案件がございます。現在建設中ですが、洋上の2つある施設のうち、1つはサムスン造船、大宇マリーンという韓国の造船会社が携わっています。それゆえ、イクシス案件では、INPEXを支援するJBICと、サムスン造船、大宇マリーンを支援する韓国輸銀が、各々自国企業を支援する目的から協調融資を行っています。その他にも、アジア開発銀行(ADB)とは、最近のインドネシア地熱発電所をはじめとして、複数案件で協調融資をしております。

Ⅲ.JBIC に求められるリスク管理とガバナンス

それからもう一つ、輸銀時代からJBICに至るまで、誇るべき伝統というのは、不良債権償却の少なさにあったと思います。その理由の一つには、我々の主たる融資先が、歴史的には東アジア・ASEAN諸国であり、発展著しい地域であったことが挙げられます。しかしながら、最近では、資源価格下落や工事遅延等の事由で、融資契約上や財務上の手当てが求められる場合もあり得ますので、私もこれから気を付けて見なければならないと感じています。

お手許資料p.3を見て下さい。2016年3月期と2017年3月期の財務諸表を比較してみますと、業務粗利益はほとんど横ばいですが、当期純利益では結構差がございます。この差は、引当金を積み増しているのが原因です。当期純利益の推移は、2013年3月期は633億円で、2014年3月期は913億円、一番多かったのは2015年3月期で1,261億円。これが一昨年度の2016年3月期は427億円に減少し、直近の2017年3月期は横ばいとなっています。この落差は主として引当金の積み増しによるものです。

JBICに寄せられる期待として、インフラ輸出をはじめとする世界各国での日本企業の活躍のご支援ですとか、資源確保、環境案件の推進など、色々な機能が求められていますが、それを実現していくためには、同時にリスク管理の高度化とガバナンス強化を行うことも、我々としての経営課題だと認識しています。

お手許資料p.5を見て頂きますと、2017年6月22日付で、組織の改編を行いました。何を狙ったかというと、ガバナンス体制の強化と経営管理充実のための施策であります。ガバナンス体制の強化というのは、審査・リスク管理部門を新設しまして、そこに審査部、外国審査部及びリスク管理部を移転しました。勿論営業部門は支援に向けて励むわけではありますが、やはりリスク管理機能を強化していかないと、将来に禍根を残すということになりかねません。もう一つは、経営管理の充実でありまして、財務・システム部門に、管理部とIT統括・与信事務部を一つの部門として集約いたしました。今は昔と違って、いかにITをうまく使っていくかが経営管理の一つの大きな柱です。そのために、財務部門にシステム部門を統合する、ということを致しました。一般論として、企業ではCFOとCIOは二つ分かれていて、あまりコミュニケーションがよくない様子が見られます。CFOになる人は財務部門一筋で、あまりITのことはよくわからない、と。逆にITの人たちは財務のことはわからない、と。そうすると企業全体の経営管理をしていく場合、財務部門とIT部門の距離をつめていく必要がある。それは私、民間にいるときから痛切に感じておりまして、SONYにいたときは、経理担当兼社内IT担当ということでやらせて頂いていました。勿論我々も予算に縛られますので、大きなIT投資を一度にやることは叶いませんが、着実に進めていきたいと思っております。

何度も申し上げますが、財務規律という非常に重要な課題に、MDBも、ECAも直面しています。やはり、これだけ資源価格が変動して、更に地政学的なリスクも高まる中で、それを支える最大のディフェンス・ラインが財務規律だと思います。民間金融機関に対する財務規律であるBIS規制の導入は、1980年代のコンチネンタル・イリノイ銀行の破たんが契機です。なぜ破たんしたか。資本が足りなくなった等、徐々に破たんしていったのではなく、エネルギー部門に対する過度の与信集中が原因でした。日本の場合でも、バブル崩壊後の銀行破たんというのは、不動産に対する過度の与信集中が原因であった思います。その後、BIS規制は複雑化して、高度化して、この頃は銀行がお金を貸しづらくなるという、皮肉な現象まで起こしているわけです。

我々は民間金融機関と違い、BIS規制のもとにはありません。我々は「資産は自己資本の10倍を超えてはならない」という法律に定められた規制のみを遵守する必要があります。他方、MDBにとっては、BIS規制は関係ありませんが、資金調達のためにAAA格の格付を維持することが至上命題です。これは非常に高度な財務管理を要求されています。この点では我々は国際開発機関と異なりますが、そうとはいえ、自主的に内部規律をきちんと守っていくことは非常に重要です。これをなくして、長年培ってきたJBICの実績と経験を将来につなげていけなくなる、それを私は避けたいと思いますので、今回の組織改編を行いました。これを第一歩として、これから具体的にどういう風に実効性のある財務規律、あるいは内部ガバナンスの強化をするのか、私のこの1年間の将来の課題と考えています。