資源ファイナンス部門

事業環境と重点課題

世界のエネルギー需給バランスは、グローバルなマクロ経済情勢をはじめ、さまざまな要因の影響を受けますが、近年では、米国の非在来型石油増産やOPECの市場シェア重視戦略等により需給は緩和状態にあります。しかし、アジア地域のエネルギー需要は他地域に比べて高い伸びを示す一方で、アジアの代表的産油国・産ガス国であるインドネシアでは、目覚ましい経済成長に伴い国内エネルギー需要の増大により、輸出余力が低下し、結果、アジア地域全体での石油・天然ガスの必要輸入量が拡大しています。

こうした状況下、原油については、日本の輸入における中東依存度が8割以上になっており、原油の輸入が中東地域の地政学的なリスクに晒される度合いは、引き続き高止まりしています。日本のエネルギー安全保障の観点からは、日本として中東諸国との関係維持・強化を図りつつ、中東以外の地域からも原油輸入を安定的に確保していくことが重要となります。

また、液化天然ガス(LNG)に関しては、日本は世界で最大のLNG輸入国ですが、最近では中国、インドなども輸入を増大させており、アジア全体では世界のLNG取引量の7割以上を占めています。電源としての天然ガスへの依存度が高くなっている現在の日本の電力事情も踏まえれば、LNGの安定的な調達が不可欠となりますが、そのためにも、日本企業の海外LNGプロジェクトへの参画を支援し、LNGの長期引き取りに結びつけていくことが重要となります。また、輸入するLNGの価格体系の多様化に取り組むことにより中長期的なLNG調達コストの抑制という課題にも取り組んでいく必要があります。

日本の産業において幅広い用途で使用される鉱物資源についても、中国やインドなどの新興国における需要は一時的な減速感はあるものの引き続き増加傾向にあり、その安定的な供給確保の重要性に変化はありません。鉄鉱石についていえば、量的な確保に加えて、既往鉱山の鉱石品位が低下する中で高品位の鉄鉱石を確保していくことも重要な課題となっています。また、銅についても、足元の価格から新規鉱山開発が少なくなっており、中長期的には需給の逼迫が予想される中、銅鉱石の確保が重要となります。

このように世界のエネルギーおよびその他資源の需給バランスが変化し、過激派の台頭等、地政学リスクが高まる環境下、安定的な資源確保のため、日本企業による資源の権益取得や長期引き取りを積極的に支援していくことはますます重要になっています。

 

JBICの取り組み

JBICは、海外からのエネルギー資源や鉱物資源の安定的な供給確保という課題に応えるべく、2015年度に次のような取り組みを実施しました。

石油・天然ガス

JBICは、米国本土から日本向けにLNGを調達する初めてのプロジェクトである、キャメロンLNGプロジェクトおよびフリーポートLNGプロジェクトから、それぞれ日本にLNGを輸送するのに必要なLNG船事業に必要な資金をプロジェクトファイナンス*1により支援しました。両プロジェクトは、米国本土から日本向けに長期契約に基づきLNGを輸出する初めてのプロジェクトです。日本の電力・ガス会社のLNG購入価格は、従来、原油価格をベースとしたものでしたが、両プロジェクトで液化される天然ガスは、米国の天然ガス市場価格をベースとして調達されるため、両プロジェクトへの支援は、LNG供給源の多角化とともにLNG価格の多様化にも寄与するものと期待されます。

米国フリーポートLNGプロジェクトにおいて生産されるLNGの輸送に使用されるLNG船(イメージ)

JBICは、日本の資源戦略上、重要な国との関係を強化し、エネルギー資源確保や安定供給を金融面から支援しています。2015年度は、日本企業がアラブ首長国連邦アブダビ首長国にて産出される原油を長期・安定的に輸入するために必要な資金を融資するとともに、ロシア連邦のサハリンⅠオドプト鉱区の追加開発に必要な資金を融資しました。日本企業がアブダビ首長国に保有する油田権益の約6割が2018年に期限を迎える予定ですが、本件融資は日本企業の有する同国の海上油田権益の更新を側面支援するものです。また、サハリンⅠオドプト鉱区で生産される原油は、日本企業が保有する権益比率に応じて引き取り、主に日本に販売する予定です。日本の原油調達における中東依存度が8割以上に達する中、同鉱区の追加開発に対する支援は、日本の原油調達先の多角化に貢献することが期待され、地理的に日本に近い極東ロシアに位置するため、日本のエネルギー安全保障上も重要なものと考えられます。

  トリニダード・トバゴにおけるメタノール/ジメチルエーテルの製造事業

また、JBICは、トリニダード・トバゴにおいて、天然ガスを原料としたメタノールおよびジメチルエーテル*2の製造事業をプロジェクトファイナンスにより支援しました。メタノールは、ガソリン添加剤や燃料電池の燃料としての用途の他、接着剤や合成樹脂等の化学品原料にもなりますが、日本は100%輸入に依存しているため、調達先の分散化が重要となります。本プロジェクトは日本企業が直接出資する海外メタノール生産拠点を拡大・分散することにつながるため、日本のエネルギー資源確保や安定供給への貢献が期待されます。

鉱物資源等

JBICは、鉄鋼業界等の日本企業の海外事業展開を支援しており、日本企業がインドネシアにおいて実施する、建設用鋼材や自動車用鋼板の製造販売事業に必要な資金を融資しました。インドネシアの経済成長を背景に自動車用鋼板や建設用鋼材の需要は今後も伸長が見込まれ、日本企業の販売基盤の拡充を支援することにより、国際競争力の維持・向上に貢献するものです。また、日本企業がアラブ首長国連邦にて実施する、原油・天然ガス輸送パイプライン用大径鋼管の製造・販売事業に必要な資金を融資しました。日本企業がパイプライン用の高品質鋼管の現地生産化を行うことで、世界屈指の石油および天然ガスの生産地域であるアラブ首長国連邦を含む中東湾岸地域における顧客ニーズ対応とコスト競争力の強化が見込まれます。

インドネシアにおける自動車用冷延鋼板
および溶融亜鉛めっき鋼板の製造・販売事業
UAEにおける原油・石油ガス輸送
パイプライン用大径鋼管の製造・販売事業

資源国等との重層的な関係強化に向けた取り組み

  アブダビ国営石油会社と石油ガス分野の業務協力協定を締結

安定的な資源供給の確保の観点から、資源供給国や資源メジャーとの関係強化も重要です。JBICは、日本の公的機関としてのステータスを活かし、資源国政府・政府機関との協議・対話を継続的に実施し、日本企業による資源権益取得および資源開発事業の円滑な実施を後押ししています。

日本にとって重要な資源国との二国間関係強化に向けた取り組みとして、特に、過去30年以上に亘り安定的かつ良質な原油の輸入先である、アブダビ首長国アブダビ国営石油会社(ADNOC)との間で、石油・ガス分野に係る協力強化を目的として覚書を締結しました。本覚書を締結することで、アブダビ首長国で操業する日本企業の既存油田権益の延長や新規権益の取得等が重要であることを相互に確認しています。

今後に向けて

日本政府は、2014~2015年度に策定・改訂した「日本再興戦略」および「エネルギー基本計画」において、安定的かつ安価な(経済的な)資源の確保に対する取り組みとして、「資源およびその調達先の分散化・多角化」を掲げていますが、JBICとしても、2015年6月に発表した中期経営計画(平成27~29年度)において、資源分野の重点取組課題として「我が国企業の資源ビジネスの支援推進」を掲げるとともに、「資源の調達先の分散や安定確保に資する案件の推進」や「LNG調達コスト低減に資する案件の推進」を掲げています。

昨今の資源価格の下落・低迷に伴い、資源メジャーや日本企業による資源開発投資が停滞し、中長期的な資源需給のタイト化が懸念される一方、資源産出国の財政が逼迫している状況下、優良な資源権益を取得できる好機となっています。JBICとしては、日本企業によるこのような資源権益の取得・開発を積極的に支援することにより、資源の安定確保に貢献していきます。

調達先の分散化の観点では、特に石油・天然ガスおよび鉱物資源等の「最後のフロンティア」として期待されているアフリカに関して、域外各国がアフリカでの資源開発投資を開始している中、JBICは日本企業による権益取得や引き取りに結びつく資源開発プロジェクトを支援していきます。アフリカの資源開発プロジェクトは、プロジェクト実施国での雇用創出および外貨獲得効果に加えて関連のインフラ開発や産業振興の推進等、アフリカ開発会議等の下でのアフリカ支援の意義も持つものです。

LNGに関しては、当面の需給の緩和、将来の需要見通しの不透明感から、日本の電力・ガス会社としては、LNG調達先の多角化とともに、LNG取引における価格決定方式の多様化、仕向地条項撤廃といった柔軟性・流動性を求めている状況です。先述の米国のLNGプロジェクトに続き、北米の他地域において、日本を含むアジア向け輸出を目指したシェールガス由来のLNGプロジェクトが計画されています。こうしたプロジェクトは上述の日本の電力・ガス会社のニーズに沿ったものとなることが期待されており、JBICとしても、これらプロジェクトへの支援を積極的に検討していきます。

JBICは、資源国政府・政府機関等との対話を通じて、引き続き資源開発プロジェクトの形成や円滑な実施のための環境づくりにも取り組んでいきます。資源国との関係強化のためには、資源開発プロジェクトでの協力のみならず、相手国のニーズに応じて、インフラ整備や産業の高度化、雇用創出、技術移転ならびに再生可能エネルギーや省エネルギー等環境負荷軽減分野を含めた包括的かつ継続的な協力関係の構築が必要です。JBICは、資源国におけるインフラおよび製造業等プロジェクト向け支援を含め総合的な取り組みを通じ、資源国政府との重層的かつ良好な関係を維持・強化していきます。

近年の主な資源関連案件への取り組み

近年の主な資源関連案件への取り組みマップ

 

注釈
  1. *1プロジェクトファイナンス:プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュ・フローに限定し、プロジェクトの現地資産等のみを担保として徴求する融資スキームのこと。
  2. *2ジメチルエーテル:LPG代替、自動車および発電向けディーゼル燃料代替として注目されている次世代クリーンエネルギーのこと。