産業ファイナンス部門

部門長メッセージ

産業ファイナンス部門は、我が国企業の行う海外投資・輸出事業、船舶航空、中堅・中小企業向け等のファイナンスを行う部署で構成され、多様な金融手法を用いて、我が国産業の国際競争力の維持・向上のための取り組みを実施しております。

海外M&A等を中心に我が国企業の対外投資意欲は引き続き高い中、当部門の2015年度の出融資保証承諾件数は264件、出融資保証承諾実績額は1兆5,802億円となりました。

2015年に作成した「中期経営計画(平成27~29年度)」も2年目となり、同計画において「産業分野」の「①我が国の経済基盤を支える各種産業の海外事業展開に対する支援の強化」、「②我が国の競争優位にある技術・ビジネスモデル等の海外展開支援を通じた成長産業化への貢献」、「中堅・中小分野」の「中堅・中小企業の海外展開に対するJBICの特徴を活かした支援」を「重点取組課題」として、真摯にかつより一層注力して取り組んでまいります。

産業ファイナンス部門長 木村 茂樹(執行役員)

 

事業環境と重点課題

大型化する日本企業の海外M&A

日本企業の海外直接投資は、2008年のリーマンショックによる落ち込みはあったものの、急速に進んだ円高の影響もあり、2011年には1,000億ドルを超える水準を回復しました。その後、2013年以降の円安進行にもかかわらず、引き続き、日本企業の海外直接投資は堅調に推移し、2015年には1,286億ドルに達する状況にあります(図表1)。

堅調な日本企業による海外直接投資の中においても、円高による買収価格の低下等を背景に2009年より日本企業による海外M&Aが急速に伸長し、こうした傾向は、その後の為替動向にかかわらず継続し、株式会社レコフのM&Aデータベースによれば、2012年519件、2015年には561件と増え続けています。このように、日本企業にとって、縮小する国内市場に代わる新規市場の獲得、グローバル競争を勝ち抜くための規模拡大を目的とした海外M&Aが、事業戦略上の重要な選択肢となっていることが見て取れます。

また、日本企業の取り組む海外M&Aの金額規模別件数割合も、2001年~2005年は50億円以上の案件数が全体の2割であったものが、2011年~2015年の同案件数は約2倍の4割まで増加しているなど(図表2)、資金調達手段の多様化、調達コストの低下等の追い風もあり、通信、ヘルスケア業界などを中心に取り組むM&A案件が大型化している傾向にあります。

 

伸び悩む日本からの輸出額

世界の輸出取引額は2011年から2014年にかけて漸増し、2014年には18.9兆ドルに達したにもかかわらず、2015年は中国の内需減少、資源価格の低迷等を背景に前年比13.2%減の16.4兆ドルとなりました。一方、日本の輸出額は、2012年から2015年にかけて円安が進行したもののドルベースでは漸減しており、2015年の輸出額は前年比9.4%減の6,249億ドルとなりました(図表3)。国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、日本の輸出額が伸び悩む要因には、世界貿易の伸びの鈍化といった外部要因に加え、日本企業側の内部要因として、企業が海外の成長を取り込むことを目的に現地生産体制を確立し、日本企業のサプライチェーンが海外に構築されてきたこと等も挙げられています。

 

海外事業を強化する中堅・中小企業

また、中堅・中小企業の海外事業展開に目を転じると、アジアを中心とする新興国の経済成長に伴い、日系大手企業の現地調達ニーズへの対応に加え、海外市場の需要を取り込むことで新たなビジネス拡大を目指す中堅・中小企業が増加しています。JBICが行った「わが国製造業の海外事業展開に関する調査報告(2015年海外直接投資アンケート結果(第27回))」において、日本企業の海外事業展開における中期見通しについて、「強化・拡大する」との回答数は80.5%と漸減傾向にある中、中堅・中小企業の同回答数は2012年以降着実に増加し75.2%となっています(図表4)。

海外事業に挑戦する中堅・中小企業の裾野や進出先国、資金ニーズは多様化しています。一方、中堅・中小企業は大企業に比べて、海外事業に必要な資金調達、情報収集等の面で制約を抱えている場合があることから、中堅・中小企業に対してはより一層、支援を多面的に充実させていくことが重要となります。

 

JBICの取り組み

多様な手法を活用した日本企業の海外展開支援

日本企業による海外M&A案件(食品)を支援 日本企業との石油化学合弁事業に出資する現地有力企業との関係強化に係るMOUを締結

JBICは日本企業の海外M&Aやインフラ、資源案件等の支援を推進することを目的に2013年2月に「海外展開支援出資ファシリティ」、2013年4月に「海外展開支援融資ファシリティ」を創設しました。特に産業ファイナンス部門では、「海外展開支援融資ファシリティ」において、JBICからの直接融資および日本の金融機関と締結したM&Aクレジットラインを活用した間接融資(ツー・ステップ・ローン)を通じて、食品・飲料、人材派遣、金融、鉄鋳物、化学、メディア、ITといったさまざまな業種の海外企業に対して日本企業が行うM&Aに必要な長期資金を機動的に供給し、2015年度はM&A案件向けに1兆233億円の承諾を行いました。

また、M&A案件以外にも「海外展開支援融資ファシリティ」の下、油田開発のためのFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)長期傭船サービス事業に対するプロジェクトファイナンスによる支援や、日本企業が参画する衛星通信事業に対する融資を実施したほか、メキシコ・ペソ建て、JBIC初となるインド・ルピー建ての現地通貨建て融資を行い、日本企業の現地における現地通貨の調達支援を実施しました。

「海外展開支援出資ファシリティ」においては、2015年度には、中国の未上場成長企業やアジア諸国の企業を投資対象とするファンドへの出資を行ったり、日系ファンドの支援の下で事業分離・独立を図った日本企業が、台湾の有力企業等との台湾における石油化学合弁事業を実施するにあたって、JBICが初期段階から出資機能を活用して事業支援を行いました。

日本企業の輸出・海外販売支援

日本企業により建造されたオフショア支援船を輸出金融により支援

JBICは日本企業の輸出支援や海外販売支援にも積極的に取り組んでいます。2015年度には、相手国政府等のバイヤーに対し、案件検討の初期段階からファイナンスに関する提案などの働きかけ、交渉を直接行い、輸出に係る円滑なファイナンス組成を行うことを通じて、日本企業による肥料プラント等の輸出の拡大を支援しました。また、多くの中堅・中小企業との取引関係を持ち、地域経済において大きな役割を果たしている日本の造船会社が建造するばら積み船、オフショア支援船等を輸出するため、船舶輸出バイヤーズクレジットを機動的に活用して、日本の造船業の支援を行いました。

また、JBICは2016年5月の株式会社国際協力銀行法の一部改正により、海外現地法人等による第三国向け輸出や進出先国での販売支援のための融資であるローカル・バイヤーズ・クレジットを輸出金融化することが可能となり、日本企業の受注拡大支援を一層強化して取り組んでいきます。

中堅・中小企業の海外事業展開支援

メキシコ州政府と中堅・中小企業進出支援のためのMOU締結

JBICは2012年度から本店および西日本オフィスに中堅・中小企業支援専門の部署を配置して、中堅・中小企業支援に積極的に取り組んでいます。中堅・中小企業支援融資の件数は、2012年度は34件でしたが、2015年度には133件に急増しています。

中堅・中小企業の支援にあたっては、民間金融機関を通じた投資クレジットライン(融資枠)を設定する等の取り組みにより、地域金融機関およびリース会社の海外現地法人との連携を拡大しています。また、米ドル・ユーロ等のハードカレンシー建てでの円滑な融資に加えて、中堅・中小企業の海外現地法人における現地通貨に対する資金ニーズにはタイ・バーツ、インドネシア・ルピア、メキシコ・ペソを含む現地通貨建て融資による補完にも、積極的に取り組みました。

また、2010年12月に金融庁・財務省・経済産業省の三省庁で発表した「本邦金融機関、国際協力銀行及び日本貿易振興機構等の連携による中堅・中小企業のアジア地域等への進出支援体制の整備・強化について」の枠組みを発展させる形で、2015年度にJBICはメキシコの4つの州政府および地場金融機関1行との間で業務協力のための覚書(MOU)を各々締結しました。MOUに基づき州政府、地場金融機関の設置する現地のジャパンデスクの積極活用等により中堅・中小企業のメキシコ進出を支援していきます。

その他にも、海外志向の強まる中堅・中小企業の支援にあたり、JBIC本店および西日本オフィス勤務の職員のみならず、海外駐在員等も活用して、海外投資環境等の情報を提供するセミナーや個別相談会を全国各地で開催しました。

多様化する日本企業のニーズでの対応

中国経済の減速、世界貿易の伸びの鈍化等、日本企業を取り巻く経済環境は絶えず変化していますが、今後もJBICは日本政府の政策動向を踏まえつつ、日本の産業の国際競争力の維持・向上のために貢献していきます。

プロジェクトファイナンス、資本性劣後融資、現地通貨建ての融資などを含めたJBICの金融メニューは、2016年5月の株式会社国際協力銀行法の一部改正により一層多様化されることとなります。

産業ファイナンス部門では、これらの金融手法を活用しながら、日本企業の海外事業展開への支援を深化し、我が国の持続的な成長につながる新たなビジネス機会の探索と創造に貢献すべく、日本企業のニーズへの的確な対応を通じて、日本と世界をつなぐ役割を引き続き果たしていく所存です。