セミナー「気候変動と省エネ投資 ~WEO2009が描く低炭素社会への道筋~」を開催しました
セミナーの様子国際協力銀行(JBIC)は、2009年11月26日、国際エネルギー機関(IEA)、(財)海外投融資情報財団(JOI)との共催により、「気候変動と省エネ投資 ~WEO2009が描く低炭素社会への道筋~」を開催しました。
IEAは、11月10日に世界の最新のエネルギー情勢等を踏まえた上で分析・作成している長期のエネルギー需給見通し「World Energy Outlook2009」(WEO2009)を公表しました。セミナー当日は、WEOの内容を踏まえ、世界エネルギー需給見通しの概要、低炭素社会の実現のために必要な投資や取り組みについて活発な議論が行われ、関係企業・機関から90人を超える出席者がありました。
挨拶
挨拶をするJBIC森田セミナー冒頭の挨拶では、JBIC専務取締役の森田嘉彦が、WEO2009の概要について説明を行いました。「低炭素社会の実現には、膨大な投資が必要と言われているが、WEO2009では、国・地域・セクター別の低炭素社会の実現に向け必要となる投資規模についての分析がなされている」と概要を説明し、当セミナーが2009年12月にデンマーク・コペンハーゲンで行われるCOP15や、今後の政策論議に向け、有意義で具体的な議論に発展するものとの期待を述べました。
講演
講演をするIEA田中事務局長 IEAの田中伸男 事務局長より「世界エネルギー展望2009」と題した講演をいただきました。戦後最悪の景気後退からの回復の見通し、原油価格、金融・経済危機によるエネルギー投資の落ち込み、12月のCOP15に向けた気候変動に関する交渉について、2030年までに各国政府が既存の政策や対策を変更しなかった場合の「現状維持シナリオ」と大気中の温室効果ガス濃度をCO2換算で約450ppmの水準で安定させた「450ppmシナリオ」について説明がありました。また、財務省の中尾武彦 国際局長より、「資金問題について」と題し、気候変動問題対策への資金に関する世界的な議論について講演いただきました。
講演をするJBIC本郷最後にJBIC環境ビジネス支援室長の本郷尚より、「資金循環としての気候変動問題」と題し講演を行いました。
講演では、今後、「CO2削減」、「適応」、「水インフラ」、「森林保全」、「生物多様性」等の地球環境制約による追加資金需要が1兆ドル以上になると考えられ、開発途上国への資金供給が重要になってくる中で、民間資金を有効活用するためには呼び水としての公的資金が必要であると説明しました。
また、排出量取引を活用していくためには、CDM等の現行制度の改良に加え、新たな分野も必要であると述べました。今後、排出量取引のために新たに必要となる分野は、森林保全、二酸化炭素地下貯留およびセクター別のアプローチであると述べた上で、民間企業にとって取り組みやすいビジネス環境やルール作りが不可欠であると説明しました。
さらに技術面では、投資という形で途上国への技術移転を行なうことで配当を得、その収益により更なる技術的な開発へと繋げていく、といった「技術循環」を、JBICが国際機関、民間金融機関または開発途上国の金融機関と協力しながら後押ししていくことが重要だと述べた上で、民間資金の呼び水と技術の普及を狙いとした環境投資支援(LIFE)イニシアティブをJBICが推進していることを説明しました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションの様子JBIC本郷がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、パネリストにIEAの田中 事務局長、財務省 国際局開発企画官の高見博氏、経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 地球環境対策室長の村上敬亮氏、電気事業連合会立地環境部長(国際問題担当)の前田一郎氏をお迎えし、活発な議論が行われました。
IEAのWEO2009についての見解と、450ppmシナリオの実現可能性について
電事連 前田氏: WEO2009の見解と電気事業が考える2020年の世界は非常に近いと感じている。日本の再生可能エネルギー導入量は、世界と比較しても遜色のないレベルであるが、更なる導入に向けては、より信頼度の高い蓄電池システムや系統制御システムなどの技術開発が必要となるであろう。
技術の移転について
経産省 村上氏: 2020年が技術やイノベーションという観点から見るとすぐそこであるということを考えると、これから2020年までに革新的な技術が出てくるとは考えにくい。現状のCDMプロジェクトでは追加性がどこにあるかが問題である。新しいクレジットメカニズムを考えていくべきだ。
技術普及の仕組みについて
財務省 高見氏:開発途上国支援については、交渉上、2国間での支援よりも、多国間の枠組みによる支援への関心が高まっている。世界銀行などの国際開発金融機関において再生エネルギーなどを中心とした支援にウェイトがかけられ、また石炭発電において排出削減効果の高い技術の採用を推奨している。二国間支援では、高い技術を持つ民間企業による投資の呼び水となるよう、JBICの機能を活用していきたいと考えている。
IEA 田中氏:新しい革新技術を考えると2050年を期限として考えねばならない。特に、CO2の分離貯留技術(CCS)はコストがかかる技術だが、これが実現しないとCO2の削減は難しい。さらに、運輸部門からCO2を無くさないと2050年に50パーセントの削減は難しく、R&Dも倍増させる必要がある。
まとめ
JBIC 本郷:技術面から見ると2020年は「明日」のことであり、今あるものをどのように普及させるかがポイントである。一方で、CCSが2050年にCO2を50パーセント削減させるカギになってくるようである。資金面ではマルチラテラルな国際機関と、バイラテラルな政府機関、民間金融機関と、それぞれの金融機関で固有の役割があるが、主となるであろう民間をどのように動かす仕組みとするか、また、日本の顔が見える支援であることが大事であり、これからの国際交渉の中でどのように反映させていくかが課題である。そして民間が投資しやすい環境を整備していくことが重要である。
JBICでは、今後も引き続き低炭素社会形成に向けて有益な情報を提供するとともに、優れた環境・省エネ技術の普及支援に努めていきます。