2009年7月号世界最大級の「ラービグ石油精製・石化プラント」が動きだした 欧阿中東ファイナンス部参事役 玉木 直季に聞く
2009年4月、サウジアラビアで世界最大規模のラービグ石油精製・石化プラントの基幹設備が稼働しました。住友化学(株)と世界最大の石油会社サウジアラムコ社が折半出資したペトロ・ラービグ社が整備・建設を進めてきたもので、JBICはプロジェクト・ファイナンスによる融資支援を行っています。
「最大」づくし、「初」づくし
2004年5月、新聞各紙一面に「住友化学がサウジアラビアに世界最大級のプラント 数千億円投資」という字が躍った直後、JBICに住友化学から連絡がありました。西海岸のラービグで計画している石油精製・石油化学プラントに対するプロジェクト・ファイナンスの要請でした。
「日量40万バーレルの原油処理能力に加え、生産能力は年換算でエチレン130万トン、プロピレン90万トンという世界最大級のプラントです。JBICにとっても最大規模かつサウジ向け初のプロジェクト・ファイナンス案件でした。直ちに実情調査に着手しました」(玉木)。
サウジアラビアは、日本の輸入原油の30%を供給する重要な国です。そのサウジアラビアでは、東のペルシャ湾で採掘した原油をパイプラインで西の紅海側に送り、石油コンビナートをつくる国家プロジェクトが進んでいました。西海岸の雇用創出と高付加価値製品づくりによる産業振興、ホルムズ海峡を通らない製品輸出が目的で、その中核のひとつが今回のプラントで、アラムコ社にとっても初の石化プロジェクトでした。
「1つのボート」に乗って
アラムコ社、住友化学、ファイナンシャルアドバイザーである銀行を交えた融資交渉がスタートしました。
「プロジェクト・ファイナンスは将来の事業収益で返済を受ける融資手法です。本件は、アラムコ社が安価な原料を供給するのでコスト競争力が高く、事業性はきわめて有望です。課題は債権保全策で、自分たちだけでなく、専門家も派遣してリスク評価を厳密に行ったうえで、強力なセキュリティパッケージを構築しました。9.11の記憶が新しかったこともあり、テロリスクについてもかなり議論しました」(玉木)。
融資に関する諸条件の詰めでは、弁護士を交えてロンドン、ドバイ、東京、アラムコ本社があるサウジアラビアのダハランでハードな交渉を行ってきました。「顔合わせのミーティング直後から、まるで旧知の仲のような信頼関係が築かれました。交渉が暗礁に乗りあげそうになることもありましたが、『我々は1つのボートに乗ったチーム』であるということをメンバー間で確認しあい、問題をクリアしてきました」と玉木。
欧阿中東ファイナンス部参事役 玉木 直季
こうして巨大プロジェクトが固まり、06年3月、JBICはペトロ・ラービグ社との間で貸付契約に調印しました。翌07年春に安倍首相(当時)が湾岸諸国を歴訪した際、産油国との間で、原油売買を超えた重層的関係づくりを表明していますが、まさに、ラービグのプラントはその先駆けかつ象徴的なプロジェクトとなりました。
「融資プロジェクトを通じて、サウジの政策金融機関の一つ公的投資基金(PIF)やイスラム開発銀行(IDB)とも協力関係を築くことができ、イスラム金融との交流を深めるきっかけにもなりました。アラムコ社でも、国際的金融機関が事業性を評価するプロジェクト・ファイナンスのメリットに着目し、社内に専門部署を設置してJBICに研修者も派遣しました。その後、私は09年春までドバイに駐在していましたが、現地でもプラント建設を見守ってきました」(玉木)。
ラービグのプラントは、ほぼ予定通り基幹設備が稼動しています。ペトロ・ラービグ社は拡張も計画しており、周辺国からも注目されています。JBICは、今後も、海外での日本企業の長期開発プロジェクトを支援していきます。