国際金融社会への貢献
アジア通貨危機の教訓
~アジア通貨危機を振り返って~
1997年に、タイを震源としてインドネシア、マレーシアなどのアジア諸国に波及して起こったアジア通貨危機から約10年が経った。このトピックでは、この危機が発生し収束に向かうまでの経緯を振り返り、その中で日本やJBICが担ってきた役割を紹介してみよう。
アジア通貨危機を振り返る
「資本の自由な移動で、貧しい国が豊かになることもあるが、富が一夜にして消えてしまうこともある」。アジア通貨危機に苦しんだマレーシアのマハティール前首相は、金融危機の怖さを繰り返し語っている。
危機はそう遠い昔のことではない。1997年7月、タイのバンコクを震源地とした「アジア通貨危機」は、インドネシア、マレーシア、韓国等に波及し、世界経済全体に深刻な影響を及ぼした。
一口にアジア通貨危機といっても、各国毎の事情はそれぞれ異なるが、共通していたのは、危機発生前の段階では各国ともに急速な経済成長に沸いており、海外からの資本も多く流入していたことだ。国内の旺盛な設備投資のために長期的に必要となる資金の多くは海外からの短期的な借入で賄われていた。加えて、国内投資のための「内貨」需要を「外貨」借入で賄うという、二種類のミスマッチが生じていた。また、海外からの短期性の銀行資金や証券投資など、比較的逃げ足の速い資金が、設備投資のみならず不動産や株式投資にも向かっていた。上述のミスマッチがある中で、何らかの要因により海外の貸し手による「信認」が損なわれると、国内銀行の貸出が不良債権化し、国内の金融システムが機能不全となり、経済全体が危機に陥る。しかしながら、そういった状況を下支えするだけの金融・資本システムはまだ整備されていなかったため、悪循環に陥り、さらに海外からの流入資金が引き上げることになった。こうなると、国としての外貨準備も底をつき、為替レートが急激に下落、外貨建債務の返済を迫られる企業は資金繰りに窮するようになる。これが起こったのが、1997年7月だった。その後、個別に事情はそれぞれ異なるものの、マレーシア、インドネシア、韓国へと波及し、アジア通貨危機と呼ばれる状況に発展していった。
危機脱出に日本のサポート
アジアの国々は経済的にも歴史的にも、日本との結びつきが強く、特に東南アジア地域においては、1980年代以降、日本企業の製造拠点が多数造られてきた。こうした関係から日本はアジア通貨危機の解決に向けて、金融面でのサポートに積極的に動き、JBICの前身である日本輸出入銀行(輸銀)は日本政府と一体となって重要な役割を果たした。
過去の教訓を踏まえると、金融危機発生時には、まず十分な資金を投じることで市場の信認を確保することが先決だ。1997年8月には、タイに対してアジア各国と国際通貨基金(IMF)が協調して172億ドルの融資を実施。うち、輸銀は40億ドルを融資した。しかしながら、この融資規模を超えるタイの債務残高が明らかになったことでインパクトは薄れ、周辺国への伝播を断ち切るまでには至らなかった。タイから飛び火したインドネシア、韓国に対しても同年にIMF、世界銀行(世銀)およびアジア開発銀行が協調して融資を実行。日本としても輸銀が融資枠を設定して備える準備を実施するなどして、事態の悪化に一定の歯止めをかけた。
金融危機を経て、これら諸国の金融機関を含む民間部門はたちまち疲弊したが、日本、特にアジアに生産拠点を抱える製造業を中心とした日本企業も大きなダメージを受けた。多額の投資をして進出を果たした日本企業としては、そう簡単に撤退できない一方で、現地の景気の冷え込みが激しく、資金繰りの困難に直面。現地銀行が疲弊し、邦銀の資金調達も悪化している中で、日本企業や邦銀が支援を求めたのがJBICだ。中小企業から大手に至るまで支援総額は1兆3,719億円。この支援を一助として現地に踏みとどまった企業の多くが、その後回復を遂げ、現地においてさらに発展し、大活躍している。
また、当時の輸銀が行った支援の中で特筆すべきは、1998年10月にIMF・世銀年次総会で発表された「新宮澤構想」での役割だろう。当時の宮澤喜一蔵相の名前を冠したこの構想において、日本政府はアジア支援のために300億ドル規模の資金支援を行うと表明。その中で、輸銀は150億ドル分の中長期資金支援の一部を担当した。これら支援等をはじめとする一連の対策によって通貨危機は終息し、その後アジア諸国の経済は成長を続けている。
アジア通貨危機の教訓
アジア通貨危機は数々の教訓を残した。JBICはこの教訓に基づき、また、輸銀時代から培ってきたアジア各国とのネットワークを活かしながら、機動的な対応へのノウハウ蓄積、再発を防ぐためのシステムづくりに貢献している。その内容を紹介してみよう。
アジア通貨危機を例に取ると、危機には段階があり、まず為替の暴落、資金流出、外貨準備不足が起こる。JBICは、IMFなど国際機関や各国と協調して大規模な国際収支支援を行う。
第2段階では、現地の日系企業が経営困難に直面する。コスト上昇や外貨建債務の負担増、金融活動の収縮による資金調達の悪化などが原因だ。この段階においてJBICは現地の日系企業に対して設備資金や長期運転資金を供給する。
第3段階では、金融危機がもたらす実体経済へのダメージが問題となる。これに対しては、アジア通貨危機の「新宮澤構想」のような資金支援スキームによって危機を早期に食い止め、金融秩序のすみやかな回復を行うことが必要だ。
さらには、その後の危機再発防止に向けた、金融資本市場の環境整備への取組みだ。具体例としては「国際金融社会の発展に向けて」にて紹介しよう。
このように、JBICは各国政府や国際機関等と密接に連携を取りながら、各局面やニーズに機動的に応じることができるように不断の努力を続けている。
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