資源ファイナンス部門

部門長メッセージ

資源の太宗を海外に依存している日本にとって、安定的な国民生活や産業基盤の維持・強化のために、海外からの石油・天然ガスなどのエネルギー資源や鉱物資源の安定的な調達は不可欠です。

資源ファイナンス部門では、日本にとって重要な資源の海外における開発および取得を促進する業務を担っています。海外における資源開発プロジェクトは、大規模かつ長期にわたる投資を必要とし、また地政学的なリスクや価格変動リスク等さまざまなリスクを内包しています。JBICは、民間資金を補完する形で長期の資金を融資や出資の形を通じて提供するとともに、公的機関として現地の政府や国営石油会社等との積極的な対話の実践を通じてプロジェクトが円滑に実施される環境づくりにも注力しています。

今後もこうした取り組みを通じて、日本の資源の安定的な確保に貢献してまいります。

資源ファイナンス部門長 山田 正明(常務執行役員)

 

事業環境と重点課題

世界のエネルギー需給バランスは、グローバルなマクロ経済情勢をはじめ、さまざまな要因の影響を受けますが、近年では、米国のシェールオイル増産等により需給は緩和状態にあります。しかし、アジア地域のエネルギー需要は他地域に比べて高い伸びを示しており、特にアジアの代表的産油国・産ガス国であるインドネシアでは、急速な経済成長に伴う国内エネルギー需要の増大により輸出余力が低下するなど、アジア地域全体として石油・天然ガスの需要が増大しています。また、COP21(国連気候変動枠組条約締結国会議)において合意された「パリ協定」で全ての参加国による温室効果ガス削減目標の提出が義務付けられる等、地球温暖化に対する関心が高まる中、火力発電燃料の中でCO2排出量が少ない天然ガスの活用が注目されています。

かかる状況下、原油については、日本の輸入における中東依存度が8割超となっており、原油の輸入が中東地域の地政学的なリスクにさらされる度合いは、引き続き高止まりしているところ、日本のエネルギー安全保障の観点からは、中東産油国との関係維持・強化を図りつつ、原油の調達先を中東以外の地域に多角化していくことも重要となります。

液化天然ガス(LNG)に関しては、今後米国や豪州等で大型のLNGプロジェクトが立ち上がり、供給量の増加が見込まれることから、短中期的にはLNG市場は供給過剰状態が継続する見込みです。一方で、需要面では中国、インド等が輸入を増大させているほか、他のアジア諸国においてもLNGの輸入を開始・増大させる動きを見せています。したがって、日本の中長期的なLNGの供給セキュリティを確保するためには、アジアを含む世界のLNG需給を見据えた戦略的取り組みが求められます。

日本の産業において幅広い用途で使用される鉱物資源についても、中国における需要に一時的な減速感があるものの全体で見ると引き続き需要増加基調にあり、その安定的な供給確保の重要性に変化はありません。鉄鉱石について言えば、量的な確保に加えて、既往鉱山の鉱石品位が低下する中で高品位の鉄鉱石を確保していくことも重要であり、銅鉱石についても採掘条件が悪化している中、優良案件の発掘が課題となっています。

このように世界のエネルギーおよび鉱物資源の需給バランスが変化し、過激派の台頭等、地政学リスクが高まる環境下、安定的な資源確保のため、日本企業による資源の権益取得や長期引き取りを積極的に支援していく必要性が高まっています。

 

JBICの取り組み

JBICは、海外からのエネルギー資源や鉱物資源の安定的な供給確保という課題に応えるべく、2016年度に次のような取り組みを実施しました。

石油・天然ガス

タングーLNGプロジェクト

日本政府は、「エネルギー基本計画」(2014年4月11日閣議決定)において、石油および天然ガスの自主開発比率を2030年までに40%以上へ引き上げる目標を掲げており、JBICは日本のエネルギー安定供給確保・自主開発比率の維持・向上を金融面から支援しています。具体的取り組みとして、日本の資源戦略上極めて重要な国であるアラブ首長国連邦アブダビ首長国において、100%権益を保有しオペレーターとして油田の開発・操業を行っている日本企業であるアブダビ石油(株)が、新たにヘイル油田の開発等を行うために必要な資金を融資しました。またLNGの分野でも、インドネシアのタングーLNGプロジェクトにおいて、既存の天然ガス液化設備の拡張に必要な資金を融資しました。LNG市場における供給過剰・価格低迷により、中長期的に必要となるLNGプロジェクトへの投資の停滞が懸念される中で、地理的に日本に近く、既に安定した生産・供給実績を有し、関西電力(株)がその引取りを予定しているLNGプロジェクトの拡張を支援することは、日本のLNGの中長期的な安定確保に資するものです。

鉱物資源等

アメリカ・モレンシー銅鉱山(資料提供:住友金属鉱山株式会社)

日本政府は、「資源確保指針」(2008年3月28日閣議了解)を踏まえ、2012年6月に「資源確保戦略」を策定しています。その中で、鉱物資源の安定的かつ安価な供給の確保が我が国の国富を生み出す高付加価値・高機能なものづくりの大前提となるとの認識の下、官民のリソースを最大限活かし、資源の確保をより戦略的に進めることとしています。

JBICは、電線・自動車等の幅広い用途において日本産業に必須となる銅の長期安定確保を図るべく、日本企業によるアメリカ・モレンシー銅鉱山の追加権益取得に必要な資金を融資しました。また、良質な発電用一般炭の長期引取権を確保するため、日本企業によるインドネシアのマリナウ炭鉱権益取得資金を融資しました。JBICは、これらの取り組みを通じて、日本の鉱物資源の安定供給確保に貢献しております。

資源国等との重層的な関係強化に向けた取り組み

ロシア連邦極東地域の先進経済特区および自由港向けプロジェクト開発促進会社設立に関する出資契約の調印式
イラク変電所

安定的な資源供給の確保の観点から、資源供給国や資源メジャーとの関係強化も重要です。JBICは、日本の公的機関としてのステータスを活かし、資源国政府・政府機関との協議・対話を継続的に実施し、日本企業による資源権益取得および資源開発事業の円滑な実施を後押ししています。

日本にとって重要な資源国との二国間関係強化に向けた取り組みとして、ロシアの政府機関、資源関連企業および金融機関等と複数の覚書および合意文書を締結しました。これは2016年5月の日露首脳会談において、安倍首相よりプーチン大統領に提示された「8項目の協力プラン」*1に基づきロシア政府および関連企業との間で今後の案件形成に関する協力関係を強化し、日露ビジネスの活性化に貢献するものです。

また、メキシコ石油公社(PEMEX)が日本で発行する円建て外債(サムライ債)への保証を供与しました。これは、アジア向けの原油輸出強化を掲げているメキシコが、原油調達先の多角化を目指す日本の資源政策において有望視されている産油国であることに加え、同国において憲法改正を通じたエネルギー改革により75年間独占状態にあった油田権益が外資に開放されたことから、上流権益取得や中・下流ビジネス全般において日本企業の商機が拡大しているところ、JBICとして、PEMEXとの関係強化を通じた日本企業による商機獲得の側面支援として取り組んだものです。

さらに、イラク政府が日本企業から変電設備一式を購入するために必要な資金を融資しました。これは日本企業によるインフラ輸出の支援により、電力供給能力の向上・安定化を通じたイラクの自立的な復興に寄与するとともに、世界第5位の原油埋蔵量を誇る産油国であるイラクと日本の関係強化にもつながるものです。なお、本案件は2016年の「株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律」の施行により同年10月1日から開始された「特別業務」として実施する、初めての案件となりました。

今後に向けて

昨今の資源価格の下落・低迷に伴い、資源メジャーや日本企業による資源開発投資が停滞し、中長期的な資源需給のタイト化が懸念される一方、資源産出国の財政が逼迫している状況下、日本企業が優良な資源権益を取得できる好機となっています。JBICとしては、日本企業によるこのような資源権益の取得・開発を積極的に支援することにより、資源の安定確保に貢献していきます。

調達先の分散化の観点では、特に石油・天然ガスおよび鉱物資源等の「最後のフロンティア」として期待されているアフリカに関して、域外各国がアフリカでの資源開発投資を開始している中、日本企業による権益取得や資源の引き取りに結びつく資源開発プロジェクトを支援していきます。アフリカの資源開発プロジェクトは、プロジェクト実施国での雇用創出および外貨獲得効果に加えて関連のインフラ開発や産業振興の推進等、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の下でのアフリカ支援の意義も持つものです。

LNGに関しては、当面の需給の緩和、将来的なエネルギーミックスおよび電力・ガス市場自由化によるLNG需要見通しの不透明感から、日本の電力・ガス会社としては、LNG調達先の多角化とともに、LNG取引における価格決定方式の多様化、仕向地条項撤廃といった柔軟性・流動性を求めている状況にあり、日本政府も2016年5月に「LNG市場戦略」を発表し、流動性の高いLNG市場の構築を謳っています。このような流れの中で日本の電力・ガス会社等はアジア諸国等でのLNG需要創出ビジネスにも取り組み始めており、JBICとしても、日本企業の上流投資やLNGプロジェクトに加えて、こうしたLNG需要創出ビジネスへの取り組みを金融面で支援することを検討していきます。

JBICは、資源国政府・政府機関等との対話を通じて、引き続き資源開発プロジェクトの形成や円滑な実施のための環境づくりにも取り組んでいきます。資源国との関係強化のためには、資源開発プロジェクトでの協力のみならず、相手国のニーズに応じて、インフラ整備や産業の高度化、雇用創出、技術移転ならびに再生可能エネルギーや省エネルギー等環境負荷軽減分野を含めた包括的かつ継続的な協力関係の構築が必要です。JBICは、資源国におけるインフラおよび製造業等プロジェクト向け支援を含め総合的な取り組みを通じ、資源国政府との重層的かつ良好な関係を維持・強化していきます。

 

近年の主な資源関連案件への取り組み

近年の主な資源関連案件への取り組みマップ

 

注釈
  1. *1①健康寿命の伸長、②快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり、③中小企業交流・協力の抜本的拡大、④エネルギー、⑤ロシアの産業多様化・生産性向上、⑥極東の産業新興・輸出基地化、⑦先端技術協力、⑧人的交流の抜本的拡大、からなる協力プランです。