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2013年5月31日
株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:奥田 碩)は、本日、JBICの平成24年度業務実績を以下の通り公表しました。なお、地域別や金融目的別の実績、過去5年間の推移などについては、別添資料をご参照下さい。
Ⅰ .出融資・保証業務
■ 平成24年度のJBICの出融資・保証承諾額は、前年度比165.7%の4兆2,409億円となり、過去最高となりました。
■ 平成25年3月末時点の残高は、出融資残高が10兆6,853億円、保証残高は2兆4,006億円、合計13兆860億円となりました。
Ⅱ .業務上の主な取り組み
1.日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得の促進への取り組み
石油、天然ガスをはじめとするエネルギー資源や、鉄や銅、レアメタル等の鉱物資源の需要は増加の一途を辿っており、世界各国は資源の長期安定的な確保に向けて戦略を強化しています。こうした中、JBICは、日本企業による海外での資源権益の取得や開発、資源の輸入等への支援の他、資源分野における日本企業のビジネス機会創出等に向けた取り組みにも力を入れています。平成24年度においては、日本企業による海外でのエネルギー資源や鉱物資源の開発・取得、石油や天然ガスの輸入等に必要な資金について、計45件、総額2兆1,251億円の出融資・保証承諾を実施しました。
エネルギー資源分野では、日本企業が出資参画する豪州やパプアニューギニアでのLNGプロジェクト、豪州やカナダでの炭鉱プロジェクトに加え、カナダでの炭層メタンガスやシェールガス、米国でのシェールオイルやタイトオイルといった非在来型エネルギー資源プロジェクトを支援しました。また、電力の安定供給に必要な火力発電用燃料としてLNGや原油の輸入資金なども支援しました。
鉱物資源分野では、豪州での鉄鉱山やチリでの銅鉱山の権益取得や開発資金、さらにレアメタル関連ではフィリピンでのニッケル・コバルト混合硫化物生産事業、チリでのモリブデン精練事業、ブラジルでのニオブの開発・生産事業等を支援しました。
また、JBICは、日本企業による資源の長期安定的な確保や事業参画機会の創出を図るべく、外国の有力企業等との関係強化も進めており、カザフスタンのカザトムプロム社、英国BG Group 、ブラジル石油公社(ペトロブラス)、アンデス開発公社(CAF)、アブダビ国営石油会社(ADNOC)などとの間で、それぞれ業務協力協定を締結しました。
2.日本の産業の国際競争力の維持及び向上への取り組み
経済のグローバル化に伴い、国際的な競争が激しさを増す中、JBICは、様々な金融手法を活用しながら、日本企業による機械・設備や船舶等の輸出に対する支援、日本企業の海外でのインフラ事業参画やM&Aに対する支援、中堅・中小企業も含め海外市場の成長を取り込むべく行われる日本企業の海外での製造・販売事業等への支援を行っており、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献しています。これらの分野における出融資・保証承諾は、計182件、総額1兆8,001億円の出融資・保証承諾を実施しました。
<海外インフラ分野における取り組み>
電力分野では、日本企業が輸出者や事業者として参画するタイでのガス焚複合火力発電事業、モロッコやチリでの石炭火力発電事業を支援した他、インドネシア向けの送変電設備等の輸出を支援しました。運輸分野では、日本企業が出資参画する英国都市間高速鉄道事業やベネズエラ向けの鉄道車両の輸出を、通信分野では、日本とシンガポールを結ぶ光海底ケーブルの輸出を支援しました。水分野でも、シンガポールの海水淡水化プラント向け機器輸出を支援しました。
この他、日印共同の地域開発構想「デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)構想」の推進主体のインド法人DMICDC向け出資を行った他、北米・欧州、東南アジア、インドの各地域を対象とするインフラファンドにも出資しています。
また、JBICは、インフラ分野をはじめとする日本企業の事業参画機会創出等を図るべく、外国の政府や政府機関等との関係強化も進めており、英国貿易投資総省、ベトナムのハノイ市及びホーチミン市の人民委員会との間で、インフラプロジェクト等の民間投資事業への日本企業のビジネス拡大支援を企図した覚書を調印した他、米国輸出入銀行との間では、日米両国企業の第三国向け輸出支援のための協定書を締結しました。
<日本からの輸出や海外での製造・販売事業等への取り組み>
機械設備の輸出では、上述のインフラ関連機器の他、カザフスタンへの製油所関連機器、アンゴラへの紡織機器、ブラジルへの印刷機械、インドへの冷間圧延機や石化プラント機器、トルコへのエチレン・プラント機器の輸出を支援した他、船舶についても、トルコやバハマ、香港などへのばら積み船やバハマへの海底資源探査船の輸出を支援しました。また、マレーシアやインド、トルコ、ロシア、南アフリカの各地場金融機関や中米経済統合銀行との間で、日本からの輸出支援を企図したクレジットラインを設定しました。
こうした輸出支援に加え、自動車や電機・電子、機械・金属等、幅広い分野において、日本企業による海外での製造・販売事業への支援を実施した他、商業用モータや空調機器、食品や医療機器、保険や航空機リース等多様な分野での海外M&Aを支援しました。また、タイやインドネシアにおける日本企業の投資事業への支援においては、バーツやルピアといった現地通貨建の支援も実施しました。
<中堅・中小企業の海外事業展開を支援>
JBICは、中堅・中小企業の海外事業展開支援を目的として、主にアジア地域に進出する企業への融資や、地方銀行をはじめとする複数の本邦金融機関との間で設定した投資クレジットライン、日本の中堅・中小企業等のASEAN地域進出支援を目的としたファンドに出資や、タイのカシコン銀行との間では、タイの洪水被害を被った日本の中堅・中小企業の現地法人等を支援するべく、多くの地方銀行等と共に融資を行いました。これらにより合計34件、341億円の出融資の承諾を行いました。さらに、途上国地場金融機関及び日本の地域金融機関と連携した地元企業の海外展開支援の枠組みにおいては、インドのインドステイト銀行、フィリピンのバンコ・デ・オロ・ウニバンク及びメトロバンクとの間で新たに覚書をそれぞれ締結しました。
3.環境分野における取り組み
環境分野においては、日本企業が出資参画するカナダでの再生可能エネルギー発電事業について、カナダドル建のプロジェクトファイナンスにより支援した他、ブラジルでの製油所でのコジェネレーション事業及び海底油田でのフレアガス削減事業における温室効果ガス排出削減を支援しました。さらに、インドやマレーシア、トルコやコロンビアなど複数の地場金融機関に対し、再生可能エネルギー及びエネルギー効率化事業ないしは日本からのこれら分野の関連機器輸出を対象としたクレジットラインを設定しました。
4.国際金融秩序の混乱の防止またはその被害への対処
インドネシア政府との間で、国際金融市場の混乱に対する同国政府の危機対応能力を強化するための予防的措置として、世界銀行、アジア開発銀行、豪州政府と協調する形での融資枠を設定しました。また、ミャンマーの国際金融市場への復帰を支援すべく、ミャンマー政府に対し、同国のアジア開発銀行(ADB)及び国際開発協会(IDA)に対する延滞債務解消のために、約20年振りのブリッジローンを融資しました。
5.「円高対応緊急ファシリティ」の下での取り組み
2013年3月末で終了した 「円高対応緊急ファシリティ」の下、平成24年度中には、総額約34,903百万米ドル(ファシリティ累計約39,208百万米ドル)の出融資承諾を行いました。内訳としては、資源・エネルギーの確保・開発の促進に係るものが23,017百万米ドル(同累計約25,903百万米ドル)、M&A支援等に係るものが11,851百万米ドル(同累計13,271百万米ドル)、海外事業安定化支援に係るものが34百万米ドル(同累計34百万米ドル)となりました。なお、本ファシリティについては、支援対象分野を拡充の上、2013年4月から「海外展開支援融資ファシリティ」として発展的に改編されており、JBICは、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)を踏まえて設置した「海外展開支援出資ファシリティ」とあわせ、日本企業の海外展開を支援する「車の両輪」として、海外M&Aやインフラ、資源案件等への長期資金供給を通じて、中堅・中小企業を含む日本企業の海外展開を積極的に支援していきます。
〔別 添〕
1. 出融資・保証総括表
2. 地域別・金融目的別承諾額
3. 国際協力銀行業務概況(過去5年間の推移)