


株式会社国際協力銀行(JBIC)は2018年12月6日(木曜日)に大阪で、12月7日(金曜日)に名古屋で、「海外投資セミナー~わが国製造業企業の海外事業展開~」を開催しました。本セミナーでは、1989年から実施している「海外事業展開調査」について、大阪ではJBIC調査部 第1ユニット長 春日剛、名古屋ではJBIC調査部 調査役 山崎香澄及び同ユニット 調査役 池永あずさより、今年度の調査結果についての報告をしました。また、亜細亜大学都市創造学部 後藤康浩氏より、「米中対立とデジタライゼーションがもたらす変化」について、ご講演をいただきました。当日は、大阪・名古屋共に各々約50名の皆様のご参加があり、盛況のうちに終了しました。
セミナーでは、はじめにJBIC調査部より「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2018年度海外直接投資アンケート結果)」について報告しました。この報告では、2017年度におけるわが国製造業の海外事業の実績は概ね好調であったこと、また国内向け事業の積極性が高まる中、海外向けの事業展開には選択的な姿勢が見られ、「中期的有望国調査」では有望国の間でも二極化が進みつつあることを報告しました。また、保護主義的な政策の影響や環境規制の動向についても調査結果が報告され、足元で約3割の企業が保護主義的な政策の長期化が「減益要因である」と回答しており今後は海外直接投資の動向への影響に注視する必要があること、また環境関連では、世界的に環境規制が厳格化されている中でそれをビジネス拡大の好機と捉える見方も根強いことなどを紹介しました。
次に、後藤氏より、昨今の米・中対立における両国の思惑と今後の見通しと、アジアにおけるデジタル化(デジタライゼーション)の現状についての解説がありました。まず米・中両国間の貿易摩擦については、鉄鋼・自動車・液晶パネルなどと同じく中国における半導体生産が今後爆発的に高まることが予想される中、過去の日米半導体摩擦のように米・中間の対立が半導体の生産能力を巡って深刻化するとの見通しが示されました。また、こうした米・中対立が、中国企業のアジアへの転出(産業空洞化)と、MVP(ミャンマー・ベトナム・フィリピン)など東南アジアにおける拠点再配置の起爆剤となる可能性が指摘されました。デジタライゼーションについては、デジタル化の波が、製品(プロダクト)のデジタル化、製造(プロセス)のデジタル化を経て、Eコマースや電子決済などサービス分野に波及していること、とりわけEコマースの分野では中国企業がアジア全域でシェアを確立しAmazonやUberなど米国企業が進出する余地がないという情勢について、現地スーパーマーケットでの販売形態や食肉生産におけるデジタル化の最新事例などとともに報告があり、活発な質疑が行われました。
JBICは今後も引き続き、日本企業の海外事業展開に関する様々な情報提供を行っていく予定です。