


株式会社国際協力銀行(JBIC)は2018年12月5日(水曜日)、「海外投資セミナー~わが国製造業企業の海外事業展開~」を開催しました。本セミナーでは、JBIC調査部 第1ユニット長 春日剛より、1989年から実施している「海外事業展開調査」の今年度の調査結果について、また、第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濱徹氏より、「加熱する貿易摩擦とアジア経済の行方」について、各々講演を行いました。当日は約70名のご参加があり、盛況のうちに終了しました。
本セミナーでは、はじめに春日より「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2018年度海外直接投資アンケート結果)」について報告しました。この報告では、2017年度におけるわが国製造業の海外事業の実績は概ね好調であったこと、また国内向け事業への積極性が高まる中、海外向けの事業展開には選択的な姿勢が見られ、「中期的有望国調査」では有望国の間でも得票率の二極化が進みつつあることを報告しました。また、保護主義的な政策の影響や環境規制の動向についても調査結果が報告され、足元で約3割の企業が保護主義的な政策の長期化が「減益要因である」と回答しており今後は海外直接投資の動向への影響に注視する必要があること、また環境関連では、世界的な環境規制の厳格化をビジネス拡大の好機と捉える見方も根強いことなどを紹介しました。
次に西濱氏より、米中貿易摩擦の見通しとその影響、中国をはじめとするアジア主要国の政治・経済を取り巻く環境などについての現状と見通しが紹介されました。まず米中貿易摩擦については、長期化が予想され、その影響はこれから顕在化すること、また世界の経済成長に減速感が出つつある中、とりわけ貿易依存度の高いアジアの新興国において米中貿易摩擦の影響が出やすいのではないかとの見解が示されました。他方、アジア地域全体としては、中国の市場規模が省レベルでみても極めて大きく引き続き有望であること、ベトナムが「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」を追い風に生産拠点として改めて注目されていることなどの明るい展望のほか、ASEAN域内のインフラ開発による経済の連結性強化と産業集積の高度化を通じ、アジア大洋州地域においてこれらの国が自由貿易圏の「核」となることへの期待も示されました。
JBICは今後も引き続き、日本企業の海外事業展開に関する様々な情報提供を行っていく予定です。