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総裁メッセージ

不確実な世界における「先導役」として国際社会の課題解決に挑戦し続けます 株式会社国際協力銀行 代表取締役総裁 林 信光

JBICが果たす役割は日々進化する一方、信頼に応えることに変わりはありません

国際協力銀行(JBIC)に対する皆さまのご理解ご支援に、心から感謝申し上げます。

私たちを取り巻く世界は、3年前に第4期中期経営計画(2021~2023年度)を作成した頃と比較しますと、大きく変化しました。ロシアによる不当なウクライナ侵攻に続いて、2023年にはイスラエルとハマスの武力紛争が勃発したほか、世界各地で異常気象が頻発するなど、国際社会の不確実性は一層高まっています。米中の地政学的対立が続く中で、グローバルサウスと称される国々の存在感が増し、不安定な情勢の下で多極化が進んでいます。私たちが信じていたリベラルな国際秩序やグローバリゼーションの概念が揺らぎ、既存の価値観が問われている時代でもあります。

世界がこうしたさまざまなチャレンジに直面する今日、日本経済が持続的に成長するためには、経済安全保障の確保とサプライチェーンの強靱化、気候変動問題など地球規模の課題解決への貢献、デジタル技術などを駆使した変革への挑戦といった、グローバルな視野に立った取り組みが必要です。だからこそ、国境を越えた金融業務を行う唯一の公的金融機関であるJBICが果たせる役割は大きいと感じています。

振り返りますと、2016年に、まず専務取締役としてJBICの経営に参画して以来、海外での重要資源の開発や、産業競争力の維持・向上など、日本の対外経済政策に具体的なプロジェクトを通じて貢献していける醍醐味を実感しています。さまざまな政府や国際機関、グローバル企業と交渉し、具体的な案件を組成した結果として、現地で新たな雇用が創出され、地域の環境が現実に改善していく過程を間近で見てきました。私たちは政府の方針に沿った金融業務を、単に遂行するだけの組織ではありません。例えば次世代エネルギーとして期待される水素やアンモニアに係るプロジェクトを実際に支援することを通じて、現場での課題に直面し、課題を乗り越えてきました。我が国の政策を現場で実現するとともに、現場の経験から政策づくりに貢献できるのが、JBICならではの強みだと思います。

松尾芭蕉が「奥の細道」の旅を通じて体得した普遍的な理念に、「不易流行」があります。古くから変わらないもの=「不易」と、日々変化する新しいもの=「流行」は、対立するものではなく、それぞれが大切であるという考えです。不易と流行それぞれに価値があるというのは、私も日々実感していますが、芭蕉の卓見は、この2つが根本的には同一であるというところにまで、考えを深めた点にあります。JBICにおける業務も、まさしく「不易流行」です。1950年に、前身が設立されて以来、JBICは日本の対外政策を担う公的金融機関として、国際金融に関する専門性をベースにした業務を展開し、お客様の信頼に応えてきました。私は、脈々と受け継がれてきた「公共性」「国際性」「専門性」という柱、これらは、JBICの根幹を成す大切なバリューだと考えています。

代表取締役総裁林 信光の画像1

一方、JBICは、日々刻々と変化する社会情勢、世界の環境に対応して、日本企業が世界の最前線で活躍できるように、その業務や役割を常にアップデートしつつ、JBIC独自のリスクテイク機能や金融機能を駆使して変容させてきました。そして、現場のフロンティアにおいて国際機関等と連携して、幅広いステークホルダーの皆さまと共に国際ビジネスの最前線で新たな課題に立ち向かってきました。先の見えない時代にあっても、JBICはトップランナーとして引き続き国際社会の課題解決に挑戦し続けます。

GX対応やサプライチェーンの強靱化をはじめ、多様な事業を金融面で支援します

第4期中期経営計画の最終年度である、2023年度の出融資・保証承諾実績は2兆379億円となり、3カ年通期での出融資保証承諾額実績は、6兆4,187億円となりました。これは第3期中期経営計画の実績を上回る水準であり、重点取組課題ごとに設けた定量目標の達成状況も、おおむね良好な結果となりました。

GX(グリーントランスフォーメーション)への対応やグローバルサウスとの連携に資する案件では、トルコで発生した震災被害の復興に資する再エネおよび省エネ事業向け融資と保証、日印ファンド向け出資、日本企業がベトナムで展開するバイオマス燃料製造・販売事業向け融資を行いました。

多国間連携に資する案件としては、台湾の洋上風力発電事業については融資と保証に加えて出資も行い、ウクライナ支援に関する案件では、ポーランド開発銀行が発行したサムライ債への保証を実施しました。社会的課題の解決に貢献する取り組みでは、ベナンにおけるランタン電化事業向け融資および保証、日本のスタートアップ企業がアンティグア・バーブーダで行う小規模分散型水循環システムの製造・販売事業向け融資を行いました。

資源確保に直結する案件としては、チリにおける銅鉱山拡張事業向け融資や、日本企業が鉄鋼原料を安定的に調達するためのブラジル企業向け融資を通じた支援を実施しました。また、日本企業の米国現地法人が手掛ける半導体の製造過程で必要な化学品等の輸送・保管事業の設備投資に必要な資金を融資しました。このほか、インドに進出する日系農機メーカーのサプライチェーンを、インドの地場金融機関経由で支援しました。さらに、世界中でデータセンターの需要が高まる中、日本の通信企業がインドで実施するデータセンター事業向け融資、中東欧ファンド向け出資を行っています。

世界の課題解決を「先導」し、「価値ある」未来を「共に創る」

国際情勢の歴史的・構造的な変化および課題への対処と、経済安全保障に対応したサプライチェーンの再構築、気候変動問題の解決につながる新技術の開発・普及などに向けて、JBICでは今般、2024~2026年度を対象とする第5期中期経営計画を策定しました。

計画立案の過程では、経営陣による議論の進捗を職員にも公開して意見を求めながら、検討を重ねました。その結果、本計画を遂行するためのテーマを、“Navigate toward and Co-create a Valuable Future”としました。

中期経営計画のテーマとして、Valuable Futureを目指して、我々はNavigateする、Co-create共創するということを記しています。Navigateするというのは、我々が先頭に立って、道を示していくということで、お客様とCo-createすることもあれば、さまざまなステークホルダーを巻き込んでCo-createするということでもあり、もちろん組織の中でCo-createするということでもあります。重要なのは将来がValuableであるため、どういう点においてバリュー、付加価値を我々が創出することができるかということです。お客様に対しても、プロジェクトに対しても、ホストカントリーに対しても、あるいは我々の組織の仲間に対しても、バリューを創出する仕事をそれぞれが実践していくんだ、というのがValuable Futureに込めた思いです。そのために、職員がより積極的で前向きな仕事ができるような組織にしていかなければなりません。

本計画では、JBICがこの3カ年で優先的に実行し実現したいと考える「重点取組課題」を、以下の通り4つ掲げました。

重点的取組課題の図

Ⅰ-Ⅳの取組課題は、それぞれが独立した目標ではなく、互いに連携しているものと捉えています。例えば「Ⅰ:持続可能な未来の実現」の中で掲げた、カーボンニュートラルと経済発展を両立していくには、「Ⅱ」の中の取組目標である「革新的技術・事業の展開支援」が不可欠です。イノベーティブな技術を商用化し、世の中へ普及させるには、JBICが保有する多様な金融機能を駆使してリスクテイクをし、「Ⅲ」に掲げた「独自のソリューション」を提供する必要があります。そのためには「Ⅳ:価値創造に向けた組織基盤の強化・改革」を着実に進め、職員一人ひとりがより前向きなマインドで働ける組織にしなければならないと考えています。

具体的な支援事例として2024年4月にJBICは、日本の電力会社が参画する、ドイツでの地熱発電プロジェクトを支援しました。この案件に適用された革新的なテクノロジーは、カナダ企業が保有する「クローズドループ地熱利用技術」というものです。従来の地熱発電とは異なり、地下の熱水や蒸気が十分に得られなくても効率的に熱を取り出せるため、試掘段階であきらめていた地域でも地熱開発が可能になります。世界で初めて、この技術が商用化されるプロジェクトです。民間の金融機関では、未商用化技術にはなかなか融資することはできませんが、JBICが先導して「特別業務」の適用によって技術リスクを取りました。また、私たちが保有するEUとの太いパイプを通じて、欧州イノベーション基金や欧州投資銀行など国際機関とも連携し、この案件を組成しました。このような、民間金融機関だけでは取り切れないリスクに挑戦し、JBIC独自の知見やリレーションを活かして、プロジェクトを実現していくことで、新しいビジネスモデルを開花させる先導役になっていきます。

人的資本を拡充し、エンゲージメントの高い組織づくりを進めます

重点取組課題の「Ⅳ:価値創造に向けた組織基盤の強化・改革」は、社内制度や勤務環境の整備を中心に、段階的に進めてきたことですが、今後3カ年でさらに進展させます。

JBICの企業理念と行動原則を踏まえ、日本および国際経済社会の健全な発展に貢献していくには、根幹業務を担っている職員一人ひとりが、公共性と国際性、そして金融に関する専門性を高い水準で備えていることが前提となります。そのために、優れた人材の獲得・育成と、その活躍を後押しする働き方改革を推進してきました。過去2年間の成果としては、まずオフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークをセキュアな環境で遂行できるように、ネットワーク基盤を整備しました。並行して、全ての総合職の職員にパソコンやスマートフォンに加えてタブレット端末を配布し、ペーパーレス化と業務の効率化を一気に進めました。2023年4月には、「JBIC Academia」という新たな研修体系を創設しています。この体系の中に、自律的なキャリア形成・能力開発を支援するべく、海外職務経験、ファイナンスや言語などの知見、ビジネス・マネジメントスキルなどを幅広く習得できる多様な研修を設定しています。また、ワークライフバランスに配慮して、男性育休取得の普及を含む育児・介護と仕事の両立支援、勤務体制の柔軟化などを目的とした諸制度を整備してきました。見かけの数字以上に、柔軟な働き方ができる職場だと感じている職員が増えているようです。第5期中期経営計画の下、このような人的資本の充実化につながる環境整備・制度設計を継続し、また、多様な考えの人が納得感を持って気持ちよく働ける、ダイバーシファイされた組織づくりをさらに進めていきます。

代表取締役総裁林 信光の画像2

私は、各職員の仕事がプロジェクトの関係者にとどまらず、世の中にいかに役立っているかを、職員一人ひとりが実感できる組織をつくっていきたいと考えています。そうした組織づくりを進めるために、「役員コミットメント」として、役員がコミットする事項を取りまとめ、面談、案件、事案について、早い段階で役職員ともにブレーンストーミングを行い、役員自ら、大きな方向性に向けた建設的指示と、必要な調整を行っていくことなどを行内に示しました。職員の多様性を尊重し、役職にかかわらず対等に対応すること、どんな場合でも誰もが発言しやすい組織風土をつくること。従来の価値観にとらわれず、新しいこと、新しいやり方にチャレンジし、職員の成長を促す組織文化をより浸透させること。そして、役員としてビジョンを示し、求心力を高めていくことを目的としています。明るくなければつまらないし、楽しくなければ仕事ではない。そして仕事は裏切らないと考えています。私自身が先頭に立って、JBICを明るく楽しい職場に、価値ある未来を提供できる組織にしていきたいと考えています。

“制約の多い世界”で、JBICはより大きな期待に応えて役割を果たしていきます

不確実性が一層高まっている国際社会の情勢を鑑みると、昨日より今日、そして今日より明日は、ますます“制約の多い世界”になると、私は考えています。これまでグローバリゼーションによって恩恵を受けてきた日本企業が、今後どのように活動のスペースを見出していけるのか、日本とって必要なエネルギー資源を確保しサプライチェーンを強靱化していくのか、という課題はより困難にならざるを得ません。こうした課題を解決していくために、JBICへのお客様の期待はより大きくなっていきます。我々もより創意工夫しリスクを取って、不断の業務革新をしていかなければなりません。「公共性」「国際性」「専門性」を柱に、我々が先導(Navigate)し共創(Co-create)する、「我が国および国際経済社会の健全な発展に寄与する」重要性は、今後さらに高まっていくと信じています。

そのためにも日頃よりフットワークを軽くして、お客様とのコミュニケーションを絶やさず、現場で起きていることを自分の目で見て体感し、自らも成長していかないといけない。環境変化に後追いで対応するのではなく変化を自ら先取りし、リスクを取って問題解決能力を最大限に発揮していくということが必要です。JBIC職員がお客様に新しいアイデアやファイナンスを提案・提供することはもちろん、お客様や関係者を結びつけ、相手国政府や関係当局との橋渡しをすることも、ますます活発にできる組織にしたいと思っています。

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