JBIC ヒストリー Vol.8
日本政策金融公庫から分離・独立し、再スタートした国際協力銀行。激変する国際情勢に対応し、サプライチェーン強靱化などの新たな課題解決に取り組む。


株式会社国際協力銀行の初代総裁に就任した奥田碩氏の就任記者会見の様子(2012年4月2日) 写真:毎日新聞社/アフロ
新JBICとして切る新たなスタート。震災復興に向け海外展開を支援
2012年4月、株式会社日本政策金融公庫から分離・独立した株式会社国際協力銀行(新JBIC)が始動。初代総裁は、トヨタ自動車株式会社の代表取締役社長や一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の会長などを歴任した奥田碩氏。民間出身の総裁就任は、新たな船出を印象付けた。
東日本大震災により影響を受けた日本企業のグローバルサプライチェーンの復旧・復興や急激に進んだ円高への対応にも迫られるなか、前年5月に施行された株式会社国際協力銀行法では、業務規定の改正などが行われた。
これにより、民間金融機関だけでは対応できない大型インフラ案件や巨額の資金を必要とする輸出案件について、「我が国の産業の国際競争力の維持又は向上に関する国の施策の推進を図るために特に必要があると認められる場合として政令で定める場合」に限り、先進国向け輸出金融の供与が認められることとなった。
また、海外進出を目指す中堅・中小企業に向けたツーステップローン、民間金融機関が通貨スワップ契約を通じて現地通貨を調達するための支援であるスワップ保証なども認め、日本企業の海外事業展開を支援した。
法改正で支援範囲を拡大。ウクライナ復興支援にも参画
その後も二度の法改正を実施、業務機能が強化された。16年の法改正では、海外における社会資本の整備に関する事業に限り、特別業務を導入。海外インフラ事業に係る銀行向けツーステップローンや社債(プロジェクトボンド等)の取得など支援手法の多様化も実施された。
また、世界的なコロナ禍であった20年4月に「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」を、翌年1月には「ポストコロナ成長ファシリティ」を創設。時限措置として先進国向けの投資金融や大企業向け国内融資が可能となり、グローバルなサプライチェーン全体を支援することで、日本企業の海外事業の継続を支えた。
23年の法改正では、激変する国際情勢に対応するため、JBICのさらなる機能強化が図られた。日本企業のサプライチェーンの強靱化、スタートアップ企業を含む日本企業のさらなるリスクテイクの後押し、国際協調によるウクライナ復興支援への参画といった分野における支援ツールが拡充した。
こうして、1950年の日本輸出銀行の設立に始まる70年以上の歴史において、国際協力銀行はその役割や形態を時代の流れに応じて柔軟に変化させながら、常に日本および国際経済社会の健全な発展に貢献する政策金融機関としての役割を果たしてきた。今後も国際社会の課題解決における先導役として、その歩みは続く。
■株式会社国際協力銀行法と
国内外情勢
2011年 | 3月 | 東日本大震災発生 |
---|---|---|
5月 | 株式会社国際協力銀行法公布 | |
2012年 | 4月 | 株式会社国際協力銀行発足 |
2016年 | 10月 | 法改正により海外インフラ事業支援を強化 |
2020年 | 3月 | 新型コロナウイルスのパンデミックを WHOが宣言 |
2022年 | 2月 | ロシアによるウクライナ侵攻 |
2023年 | 4月 | 法改正により日本企業のサプライチェーン強靱化やさらなるリスクテイクの後押し、ウクライナ復興支援への参画を企図 |