


株式会社国際協力銀行(JBIC)は2020年1月28日(火曜日)、「海外投資セミナー~わが国製造業企業の海外事業展開~」を開催しました。本セミナーでは、JBIC調査部 第1ユニット長 春日剛 及び 調査役の池永あずさ より、1989年から実施している「海外事業展開調査」の今年度の調査結果について、また、株式会社日本総合研究所 調査部 岩崎薫里 上席主任研究員より、「オープン・イノベーション:海外スタートアップ企業と日本企業の連携について」、各々講演を行いました。当日は約140名の参加があり、盛況のうちに終了しました。
本セミナーでは、はじめに春日及び池永より「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2019年度海外直接投資アンケート結果)」について報告しました。事業実績評価と今後の事業展開の調査結果報告では、米中貿易摩擦やブレグジット問題の混迷といった不透明な世界情勢のもと、企業が海外事業展開に慎重な姿勢を取っていることを指摘しました。また、有望国調査では中国の得票率が大幅に低下したこと、同時にアジア各国に再評価の機会がもたらされていることを説明しました。その後、米中摩擦についての調査結果が報告され、マイナスの影響が幅広い業種に広がっていること、そのような状況下で多くの企業がサプライチェーンの組み換えなどの対応により米中双方との共存の道を模索していることにつき紹介があり、最後に企業のオープン・イノベーションの取り組みについて、海外連携先としての有望都市ランキング上位に中国の都市が複数ランクインしていることを踏まえ、従来の単なる製造拠点にとどまらない、中国の先進的なものづくりの拠点としての一面が伺えることを示唆しました。
次に岩崎上席主任研究員より、日本企業の海外におけるオープン・イノベーションの取り組みについての報告がありました。はじめに、日本企業の間でみられる、国内外のスタートアップ企業と連携してオープン・イノベーションに取り組む動きの広がりにつき説明がありました。また、特に海外のスタートアップとの連携については、過去にシリコンバレーに進出し、成果を上げられなかった日本企業の失敗要因などを紹介したうえで、近年は日本企業側でも、現地に派遣する職員により強い決定権限を持たせる等、スタートアップとの協業で成果をあげるための工夫がなされ始めているとの説明がありました。一方、近年スタートアップ企業が多く誕生し注目を集めているASEAN地域について、域内各国(シンガポール、インドネシア、フィリピン等)の地場スタートアップの特徴や成長分野につき紹介があったほか、日本企業側でも、アジア市場の開拓や新規技術・ビジネスの獲得を見越して、ASEAN発のスタートアップ企業との協業が注目される傾向にある旨、事例紹介と共に説明がありました。最後に、日本企業は、ASEANの地場スタートアップ企業と組むことでアジア地域の最先端の課題や潮流をつかめ、将来大きな影響力を保有しうる企業との関係を構築できること、またASEANのスタートアップ企業にとっては、日本企業との協業を通じて一流の技術や日本の市場への足掛かりを得られるとのメリットが挙げられ、相互に理解を深めながら協力関係を築き、共に成長を目指して欲しいとの期待が示されました。
JBICは今後も引き続き、日本企業の海外事業展開に関する様々な情報提供を行っていく予定です。