
株式会社国際協力銀行(JBIC)は2022年1月13日(木曜日)、「海外投資セミナー~わが国製造業企業の海外事業展開調査(第33回)~」を開催しました。本セミナーでは、JBIC調査部 第1ユニット長 春日剛より「海外事業展開調査」の今年度の調査結果について報告を行った後、4名のパネリストから講評やコメントを頂きました。当日はオンライン開催で約200名の方に視聴いただき、盛況のうちに終了しました。
本セミナーでは、はじめに春日より「2021年度海外事業展開調査」の結果報告を行いました。その中で、海外事業全般において新型コロナ前の水準への回復は先送りとなっていること、その要因として新型コロナとその余波を受けた不透明要因の影響が長期化していることを指摘しました。また「有望国ランキング」では昨年度調査に続き中国が首位を維持したいっぽう、米国が3位に浮上したことを今年の特徴として紹介しました。その後、サプライチェーンを巡るリスクについて、新型コロナ以上に「物流の途絶・ひっ迫」が認識されていること、半導体不足が全業種へ影響したことなどを説明しました。また、DXは導入を進める先進的企業と未着手企業が半々であり、特に先進的企業ほどDXにおいて海外との連携が進んでいることを指摘しました。最後に脱炭素の影響が約8割の企業に広がっていること、また多くの企業が「スコープ3」と呼ばれるサプライチェーン上の排出削減に意欲的であることを紹介しました。
次に、4人のパネリストからコメントを頂きました。まず、津田塾大学の伊藤由希子教授からは、本調査結果を「時代の課題を浮き彫りにするアンケート結果」と評したうえで、日本企業の脱炭素への取り組みについて、製造工程の省エネ化だけでなく「攻め」(新規事業の強化など)の姿勢が必要との指摘がありました。次に亜細亜大学の後藤康浩教授は、本調査において中国への投資意欲が長期的に低下傾向にあると同時に、その他の国にも軒並み課題があるとし、「製造業は彷徨える時代に突入している」と指摘しました。また、株式会社昭芝製作所の三原寛人代表取締役社長からは、新型コロナの流行下、海外展開先の医療体制の充実度は重要事項の一つとして認識を新たにしたこと、またDXへの取り組みにおいて人材不足が課題であること等、現場目線からのコメントを頂きました。最後に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の竹森俊平理事長からは、米国の生産拠点としての魅力が上昇している状況を踏まえ、「時代の転換点」の可能性があるとの指摘がありました。
わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2021年度海外直接投資アンケート調査結果)のプレスリリース及び報告書全文はこちら。
JBICは今後も引き続き、日本企業の海外事業展開に関する様々な情報提供を行っていく予定です。