株式会社国際協力銀行(JBIC)メキシコシティー駐在員事務所は、2024年9月5日にメキシコシティーで、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)およびメキシコ日本商工会議所(カマラ)との共催にて、日墨水素フォーラムを開催しました。
日墨水素フォーラムは、カマラの水素分科会*1の活動に連動する形で、JBICメキシコシティー駐在員事務所が2023年8月に実施した「メキシコにおける水素ビジネスと日本企業参入の可能性に係る調査」の結果を日本とメキシコの関係者に発表しつつ、水素分野における両国の有識者による情報交換・意見交換の場として、JETROが開催したものです。このイベントは、オールジャパンでメキシコの産官学の関係者を巻き込み、同国における水素関連の事業環境整備と具体的な案件形成に向けた流れを創出することを狙いとしています。
本フォーラムでは、JETROメキシコ事務所の中島所長による開会挨拶、久我カマラ会頭(メキシコトヨタ自動車副社長)による挨拶の後、JBICメキシコシティー駐在員事務所の細川駐在員が調査結果を発表し、メキシコにおける水素事業のポテンシャルや日本企業との協業可能性について言及しました。
つぎに、「メキシコにおける水素サプライチェーン構築のポテンシャルと課題」というテーマで、イスラエル・ウルタド氏(メキシコ水素協会会長)、中畑貴雄氏(JETRO調査部主任調査研究員)、およびJBICメキシコシティー駐在員事務所の中野首席駐在員によるパネルディスカッションが行われ、メキシコの持つ水素事業の可能性や課題について意見交換がなされました。
続いて、「州政府および非日系企業による水素関連プロジェクトへの取組事例」というテーマで、メキシコ国内で複数のクリーン水素関連プロジェクトに取り組む非日系企業や国連開発計画(UNDP)のパネリストによるパネルディスカッションが行われ、メキシコ市場の魅力と課題、水素プロジェクトの事例、州政府との連携の重要性について言及がなされました。
さらに、「日系グローバル企業による水素関連事業の取り組み事例とメキシコでの可能性」というテーマで、久我高輝氏(メキシコトヨタ自動車)、杉山由記氏(メキシコ三井物産)およびイグナシオ・ガルシア氏(メキシコ三菱パワー)、ならびにJBIC次世代エネルギー戦略室の日高室長代理によるパネルディスカッションが行われました。各社はメキシコ以外の国で推進する水素関連プロジェクトや水素国家戦略および水素事業の社会実装戦略について紹介し、メキシコのポテンシャルについて議論がなされました。このテーマの結びとして、オールジャパンとしてメキシコ政府の国家戦略策定プロセスに積極的に協力する用意があることを強調しました。
最後は、杉山カマラ社会インフラ委員長(メキシコ三井物産副社長)による閉会挨拶が行われました。
本フォーラムには、日系・非日系企業、メキシコ連邦・州政府機関、学術機関等から約70名が出席しました。メキシコには生産・消費・将来的な輸出の観点から水素関連産業育成のポテンシャルがある一方、メキシコ政府による明確な水素戦略及び関連規制・インセンティブ等が整備されていない課題が指摘され、今後産業育成を促進するために必要な指針やステップ等について幅広い意見交換やネットワーキングがなされました。また本フォーラムは、スペインメディアのAgencia EFEにも取り上げられました。【①México y Japón buscan estrechar alianzas para hidrógeno limpio (efe.com)、②Japón invita a México a la descarbonización con tecnología para obtener hidrógeno limpio (efe.com)】
JBICは今後も、日本の公的金融機関として、海外政府とも緊密に連携し、日本企業の事業機会創出およびビジネス促進、ならびに脱炭素化への世界的な取り組みを積極的に支援するとともに、関係国との経済関係の一層の深化・発展に貢献していきます。
注釈
- *1
メキシコにおける水素関連事業での新規案件形成を目指して、2022年7月に関心の高い在メキシコの日本企業が中心となりカマラの社会インフラ委員会に設置された分科会です。JBICメキシコシティー駐在員事務所、在メキシコ日本大使館、JETROメキシコ事務所および独立行政法人国際協力機構(JICA)メキシコ事務所も第1回会合から参加しています。