日本の未来を拓く 「サステナビリティ × 次世代の力」

※2022年11月24日付 日本経済新聞 朝刊 全面広告に掲載された内容を転載しております。
サステナビリティの追求は、いまや単なる社会貢献ではなく、豊かな国造りや企業価値の最大化につながる世界的な最重要課題となった。地球規模の課題解決の支援を掲げる国際協力銀行(以下、JBIC)執行役員サステナビリティ統括部長の矢野裕子氏が、タレントのパックン氏をお迎えし、今後の日本の活路について語り合った。
大きく変わるサステナビリティの価値

パックン JBICが、いま一番力を入れていることを教えてください。
矢野 日本はいま人口減少・少子高齢化、エネルギー情勢のひっ迫、気候変動などさまざまな課題を抱えています。さらにコロナ禍も一因として世界全体で社会変革が進み、カーボンニュートラル社会の実現などの「持続可能な開発目標」に取り組まなければ、国も企業も立ち行かなくなってきました。こうした中、JBICは「サステナビリティの追求」を最重要課題の一つとして掲げ、国際経済社会のサステナブルな発展に向けた取り組みをいっそう強化していきたいと考えています。気候変動対応を含むサステナビリティの実現に向けた方針として「JBIC ESGポリシー」を策定し、さらに組織体制を強化するため、今年6月には「サステナビリティ統括部」を新設しています。
パックン サステナビリティへの取り組みには、具体的にどのようなものがあるのですか?
矢野 温室効果ガスの削減やグリーンイノベーションの普及を支援するグリーンファイナンス、医療・衛生などの社会的課題の解決を支援するソーシャルインパクトファイナンスなど、多様な金融手段を積極的に提供しています。日本には中堅・中小企業を含め高い技術力を持った企業が多数存在します。その優れた技術、イノベーティブな技術を生かした海外事業を支援し、地球規模の課題解決に導ければと考えています。気候変動問題に関しては、ホスト国政府とのエンゲージメントや多国間連携により、新興国や途上国でのエネルギートランジションの推進を後押しすることにも注力しています。また次世代エネルギーとして注目を集める水素などについては、サプライチェーンの構築が急務であり、今年7月に「次世代エネルギー戦略室」を新設して関係先との連携強化に努めています。
パックン 私の母国アメリカでも何か取り組みはありますか?
矢野 カリフォルニアでは、日本企業が参画している水素ステーション事業を支援しています。
パックン カリフォルニアが環境や労働、人権関連の規制を導入すると、アメリカ全土、全世界へと広まるというカリフォルニア効果というものがありますが、水素ステーションもその期待がもてますね。
グリーンボンドの発行もニュースになっていましたが。
矢野 気候変動対策・環境保全事業を資金使途とするグリーンボンドを今年の1月と10月に発行しました。
パックン JBICが債券を発行して、投資家などから資金を集めるのですね。“Do well by doing good” という言葉がありますが、良いことをやって潤う、この考え方は成り立つと僕も個人投資家の立場として思いますね。
矢野 以前はサステナビリティというと企業のCSR 活動、社会貢献という色彩が強かったと思いますが、いまはサステナビリティを追求することで世界全体、国全体を豊かにすると共に、個々の企業価値も最大化する活動へと変わってきていると感じます。
日本の素晴らしさを世界に発信したい

パックン 世界でサステナビリティの認識が変わる中、日本でも次世代の人たちの活躍が大事になってきますが、JBICでは若い社員の活躍の場は広がっていますか?
矢野 多くの若手が活躍しています。海外事務所では若い職員がJBICの「顔」として駐在し、国際会議やビジネスの最前線に出ていくケースが多いです。また国内でも頼もしい役割を果たしてくれています。職員の中に若手が占める割合も大きいです。次世代を担う若手の皆さんが海外ビジネスの最前線に触れ、世界の中での日本を感じ、未来を考える環境があります。
パックンさんは東工大で非常勤講師をされていますが、いまの学生たちをどうご覧になられていますか?
パックン 僕のクラスの学生たちは熱い思いで世界ともっと関わりたい、日本の良さを世界に発信したい、そういう熱意を持っています。それが日本のサステナビリティの原動力だと僕は思っていますし、たとえ少人数だとしても、日本全国に同じ思いをもった若者はたくさんいるはずです。すごく希望があることだと感じています。
矢野 授業ではどのようなことを教えているのですか?
パックン 国際関係論です。国際関係を把握し、問題点、解決策を見つける学問的なスキルです。ただその実現には組織やお金、技術、人材など物理的なツールが必要となります。JBICがやっているのは、まさにそういったところだと思います。
ちなみにJBICでは、どのような人材を採用しているのですか?
矢野 私たちのミッションに共感し、目的意識とチャレンジ精神をもった人材です。人的資本は組織力の源泉であると考えています。日本、そして世界の未来を切り拓(ひら)いていく原動力として、次世代の多様な発想、イノベーティブな力が必要となります。熱意を持った次世代の方とぜひ共に考え、取り組んでいければと思っています。
パックン 人的資本という言葉、僕も大好きです。日本の一番の資源は、人です。教育レベル、道徳意識、受信力、そして人に迷惑をかけない文化。これにあと少しの積極性があれば、世界にもっと発信できると思います。面白いアイデアがあるのに発信せず自粛してしまう傾向など、素晴らしい資源をフル活用できていないのは、日本のもったいないところです。
日本と世界が共創する未来へ

パックン イノベーションがこの先の大事なカギとなる中、グローバル・イノベーション・インデックス(イノベーションに関する各国の能力ランキング)で日本は世界13位という結果でした。この現状をどのように捉えていますか?
矢野 日本が上位にいた十数年前に比べ世界における日本の立ち位置は大きく変わってしまいました。ただその反転の切り札こそ、サステナビリティだと思っています。
パックン 順位だけ見ると悲観的になりがちですが、僕は日本国民の力を信じたい。こういう数字を見ても、僕は前向きですよ。ほら、こんなに改善の余地があるって。
矢野 そうですね。JBICは世界と日本の間、民間セクターと公的セクターの間、いろいろな結節点に位置する組織です。こうした特別なポジションを最大限活用しつつ、サステナビリティという国際経済社会が抱える大きな課題に次世代の皆さんと一緒に覚悟をもって取り組み、新しい発想と活力で未来を切り拓いていきたいと考えています。そうした取り組みによって、日本企業がよりいっそう世界で活躍する未来につながっていくと確信しています。
パックン 日本の力が世界の力に、世界の力が日本の力に。そういう相互関係ができたらうれしいですね。
矢野 裕子氏
国際協力銀行(JBIC)執行役員 サステナビリティ統括部長
1993年東京大学卒業後、日本輸出入銀行(現国際協力銀行)に入行。97年に米エール大学にて修士号取得。2017年より船舶・航空宇宙部長、審査部長を歴任し、22年6月より現職。JBICのサステナビリティ関連業務全般を推進している。
パトリック・ハーラン氏
お笑い芸人・俳優 コメンテーター
芸名パックン。1993年米ハーバード大学卒業後、友人に誘われ来日。97年にお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。流ちょうな日本語を生かし多方面で才能を発揮。2012年より東京工業大学リベラルアーツセンターで非常勤講師を務める。米コロラド州出身。