現場と経営で培った経験を生かし 実効性のあるガバナンスを支える
私は2018年から4年間、19代目の総裁として業務執行を担い、2022年からはJBIC初の取締役会長となり取締役会議長を務めています。総裁に就任した際の記者会見では、初の生え抜き総裁に関する質問が多かったのですが、「私ほどこの銀行の業務や現場を知っている人はいない」という話をしました。こうした自負のもと、自らの判断と責任で組織を率いることを強く意識していました。総裁として執行を担った経験があるからこそ、執行側が何を考え、どこに難しさがあるのかを理解できます。一方で、取締役会議長としては、執行から一歩離れ、JBICの実力をふまえながら、より広い観点から、執行側に対してけん制し、指導することが私の役割だと考えています。
私が総裁のときは、過去に特殊法人だった名残もあり総裁が取締役会議長を務めていましたが、ガバナンスの高度化のために監督・評価と執行を分離するべく2022年にガバナンス態勢を整理し、全く異なるものへ発展させました。大事なことは、執行と監督がそれぞれの役割を果たし、相互に機能することです。
JBICの取締役会は、経営会議で決まったことをそのまま追認するような場ではありません。取締役会での議論は白熱し、予定調和で終わらせるのではなく、問題点や是正すべき点を必要なときには執行側にも指摘や投げかけをする。そういう緊張感があってこそ、ガバナンスは実効性を持つのだと思います。
現在、JBICは日米戦略投融資の対応を進めています。我々は株式会社国際協力銀行法上、しっかりとしたデューデリジェンスを行う義務があります。これは誰が何と言おうと国会および納税者に対する責任です。政策金融機関として重要な判断を行う以上、取締役会では、米国を含む相手国のさまざまな状況を把握・共有しながら、日本、世界、社会全般の視点もふまえつつ、日本の国益にとって何が必要なのか、相手国や国際社会にどういう意味を持つのか、そしてJBICとして本当に取り組むべき案件なのかを是々非々で議論し、決断していかなければなりません。
日本企業の「羅針盤」として JBICに求められている役割

いま、世界は大きく変わっています。地政学的リスク、経済安全保障、エネルギー安全保障、脱炭素、AIをはじめとする技術革新。どれを取っても、従来の延長線上だけでは判断できません。
重要なのは、待っているだけではいけないということです。寄せられた案件を審査し、支援することはもちろん大事ですが、それだけでは日本企業の新しい挑戦を十分に後押しできません。将来の成長産業をどう育てるのか、日本企業が新しい技術や市場にどうアクセスしていくのか。そこにJBICとして関わっていく必要があります。その一環として、(株)JBIC IG Partners(JBIC IG)がNordicNinja*1というファンドを設立しました。ヨーロッパのアーリーステージの企業を投資対象としつつ、日本企業も巻き込みながら、投資先企業の成長支援を行うことで、IPOにつながるような成果も出てきています。2024年からは、日本発のスタートアップ支援も開始しています。こちらはミドル・レイターステージを投資対象としており、グローバル展開を目指す日本発のスタートアップ支援を推進しています。こういった活動を通じて、日本のスタートアップ・エコシステムに貢献することが必要であると考えています。
JBICの価値を支えるのは、人とネットワーキングです。各国政府、国際金融機関、企業トップとの関係は、一朝一夕にできるものではありません。長い時間をかけて信頼を積み上げてきたからこそ、本当に必要なときに話ができる。私自身も、非業務執行の立場になったいま、これまで培ったネットワークから得た情報や視点を執行に共有し、大きな方向感を示すことがあります。単に専門的な知識を備えるだけでなく、今まさに海外で起こっていることはどういうことかを正確に把握しないといけません。若い職員には、できるだけ早い段階から海外に出て、国際感覚と人的ネットワークを自分のものにしてほしいと思っています。
私自身JBICに40年以上身を置いてきましたが、時代が変わっても、私が常に考えていることは変わりません。日本の国益にとって本当に必要な金融支援は何なのか。もともとはOECDアレンジメントで決められた制度金融を行う輸出信用機関であったJBICですが、その後、日本企業の海外投資が増え、エネルギー安全保障やサプライチェーン強靱化、経済安全保障の確保等のテーマが重要になり、果たすべき役割も大きく変化してきました。
日本企業の皆様には、固定観念にとらわれず、ぜひ成し遂げたいことをJBICに相談してほしいと願っています。話を聞かせてください。JBICは日本企業を先導する「羅針盤」のような存在であり続けたいと考えています。
これからも取締役会議長として、社外取締役を含む多様な知見を生かしながら、自由闊達に、しかし緊張感を持って議論する取締役会をつくっていきます。そして、JBICが日本企業の世界への挑戦を支え、社会から信頼される政策金融機関であり続けられるよう、ガバナンスの実効性をさらに高めていきます。
株式会社国際協力銀行
取締役会長 前田 匡史
注釈
- *1
JB Nordic Fund I SCSpおよびNordicNinja Fund II SCSpを指す





