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2008年6月16日
- 国際協力銀行(総裁:田波耕治)は、本日、東京都内において、ロシア連邦サハリン州沖合におけるサハリンⅡプロジェクト(フェーズ2)について、本プロジェクトの実施主体であるサハリン・エナジー社(CEO:イアン クレイグ)との間で、総額37億ドル限度のプロジェクトファイナンスベース*1の融資契約に調印しました。本融資は、民間銀行団との協調融資であり、民間銀行団は総額16億ドル限度の融資を行う予定です。
- 本プロジェクトは、日本の総合商社である三井物産及び三菱商事、世界最大の天然ガスの保有埋蔵量を誇るロシアの国営企業であるガスプロム、石油メジャーのシェルが出資するサハリン・エナジー社が、サハリン州沖合のピルトン/アストフスコエ、ルンスコエ両鉱区を対象として石油・天然ガスを開発・生産する大規模プロジェクトであり、本融資は、本プロジェクトにおける海上プラットフォームの建設、石油・ガスパイプラインの建設、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)プラントの建設等の資金に充てられます。本プロジェクトからは、LNGが年間約960万トン生産され、このうち5割強(日本の年間総輸入量の約8%に相当)が日本向けに供給される予定です。また、原油については、日量約15万バレルが生産され(日本の総輸入量の約4%に該当)、このうちの相当量が日本向けに供給される予定です。
- 日本のエネルギー資源の中東依存度が高水準にある中、本プロジェクトは、日本のエネルギー供給源の多様化に貢献することが期待されます。特に、LNGについては、日本の最大の供給先であるインドネシアからの供給が今後大幅に減少することが見込まれる中、本プロジェクトは新たな大規模な供給源となることが見込まれており、日本のエネルギー資源の安定的確保という政策意義が認められるものです。また、本プロジェクトは、地理的に日本に近いロシア極東に位置することから、日本のエネルギー安全保障上も大変重要なものと考えられます。当行は、こうした意義に鑑み、本融資を通じて本プロジェクトを支援することを決定しました。
- 本プロジェクトは、三井物産及び三菱商事が長年に亘り権益を保有し(2社合計:22.5%)、ガスプロム(50%+1株)、シェル(27.5%-1株)と共同で大規模エネルギー資源開発案件として進めてきているものであり、当行は本融資を通じて、日本企業の海外における資源開発事業を支援します。また、本プロジェクトには、世界最大の天然ガスの保有埋蔵量を誇るロシアの国営企業であるガスプロムが参画するため、本プロジェクトへの支援を通じて産ガス国との関係を強化し、将来的な日本のエネルギー資源の確保に貢献することも期待されます。
- 本プロジェクトは、地理的に北海道に近いことから、北海道のステークホルダーの方々から本プロジェクト実施による環境面での影響について関心が寄せられております。当行としては、こうした北海道のステークホルダーの方々のご意見が本プロジェクトの環境社会配慮対策(油流出対応等)に反映されるべく、サハリン・エナジー社に働きかけを行ってきました。当行としては、今後も引き続き本プロジェクトに対するモニタリングを通じて、サハリン・エナジー社に働きかけを行っていく予定です。
- なお、本件調印に際して、本プロジェクトの関係者の皆様より、以下のとおりコメントを頂いております。
【三井物産】
「ロシア初のLNGプロジェクトであるサハリンⅡプロジェクトは、日本を始めとするアジア・太平洋地域のエネルギー安全保障に大いに資するものであり、本融資契約が調印出来たことは、日露両国関係の更なる発展に大きく貢献するものと確信しております。国際協力銀行を始めとする銀行団、サハリン・エナジー社、LNG買主各社、ガスプロム、シェル、三菱商事他関係者の皆様の本契約に至るご尽力に対し心より感謝致します。」(三井物産株式会社代表取締役社長 槍田 松瑩様)
【三菱商事】
「この度のサハリンⅡプロジェクト向け融資契約調印は、本プロジェクトにとって有意義であり、サハリン・エナジー社の株主として喜ばしいことと思っております。当社は他株主と共に、需要家並びに関係するステークホルダーにサハリン・エナジー社が信頼されるエネルギーサプライヤーとなる様、引続き全力でサポートして行く所存です。」(三菱商事株式会社代表取締役社長 小島 順彦様)
【北海道漁業環境保全本部】
「今般貴行とサハリン・エナジー社との間で総額37億ドルに昇る融資契約が調印されましたこと、心よりお慶び申し上げます。本サハリンⅡプロジェクトはわが国のエネルギー安全保障上からも、また今後の日露関係発展の見地からも極めて重要な事業であり、貴行の今回の融資御決定に当本部と致しまして、そのご英断に敬意を表する次第です。一方、北海道のまさしく近隣地であるサハリンでの石油ガス開発事業の推進に伴い、関連諸施設における事故及び原油及びLNGの輸送が北海道周辺海域において過去に例を見ない水準で活発化することによる、油流出事故等の潜在的なリスクの増大化は否めない事実であり、当本部をはじめとして、北海道漁業関係者の不安は隠せない状況にあります。その中で、責任ある政府系金融機関として、貴行が融資主体となり、本事業に対し公式に適切なる影響力を行使できる立場となられたことは私どもにとりましても非常に心強い限りであります。貴行に措かれては、今回の融資御決定に際し、かかる事情に十分ご留意の上、事業主体であるサハリン・エナジー社への指導監督ならびに関係政府諸機関への働きかけにつき、従前にも増したご配慮を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。」(北海道漁業環境保全本部長 平野 正男様)
(参考)
本プロジェクトは、フェーズ1及びフェーズ2として、段階的に実施されるものであり、フェーズ1に関して、当行は、116百万ドルの融資を実施済(1997年12月)。当該融資は、アストスコエ構造において簡易洋上生産設備を利用して行なう原油生産を対象としたものであり、1999年7月から夏季のみ生産を開始し、ピーク時には日量9万バレルの生産が行われております。