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2013年11月29日
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株式会社国際協力銀行(JBIC総裁:奥田 碩)は、「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」に関するアンケート調査を実施し、本日結果を発表しました。今回の調査は、本年7月に調査票を発送し、7月から9月にかけて回収したものです(対象企業数992社、有効回答数625社、有効回答率63.0%)。本調査は、海外事業に実績のある日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で25回目となります。 (報告書全文:わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告)
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本年度調査では、「中期的海外事業展開見通し」や「海外事業展開実績評価」、「有望事業展開先国・地域」などに加え、個別テーマとして「中国の事業見通し」、「事業展開先国におけるインフラのニーズと課題」、「グローバル経営の課題と今後の戦略」についても調査を行いました。
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本調査結果の要旨は以下の通りです。
(1)中期的な有望国ではインドネシア、インド、タイ、中国の得票率が拮抗
中期的な有望国では上位有望国の順位が大きく変動。中国が調査開始以来はじめて第1位から第4位に後退する一方、市場拡大への期待が高いインドネシアがはじめて第1位となった。インドは第2位に留まるも得票数は大きく減少し、第3位のタイを含め、上位4ヶ国の得票率が40%前後で拮抗する結果となった。但し、長期的(今後10年程度)な有望国では引き続きインド、中国が第1位、第2位であり、両国は今後も主要な事業展開先として認識されている。
(2)中国を有望国から外した企業は「労働コスト上昇・労働力確保困難」を最も懸念。一方、有望国として挙げた企業はマーケットの規模・成長性を評価
前回調査において中国を有望国に挙げた企業で、今回調査でも中国を引き続き有望国に挙げた企業数はほぼ半減したが、今回調査で中国を有望国から外した企業のうち中国事業を縮小・撤退すると回答した企業はごく少数に留まった。また、今回調査で中国を有望国から外した企業の4割強が「労働コスト上昇・労働力確保困難」を最も懸念する一方、中国を有望国として挙げた企業の多くは市場の規模・成長性を評価しており、中国に対する視点の違いが結果を二分した。
(3)わが国製造業企業の海外展開は拡大の方向
海外生産比率は拡大基調に戻り、回答企業の8割以上が引き続き海外事業を強化・拡大する姿勢にある。海外事業を強化・拡大する企業の9割弱は国内事業を維持、拡大する姿勢にある。海外事業は、海外情報の国内開発への寄与、海外事業経験者の増加による組織力向上、国内事業の効率化などで国内事業に貢献している。
(4)わが国製造業企業の新興国市場での取組は一定の成果
新興国市場における主な販売先は今後も日系メーカーが中心であるが、非日系メーカーへの販売も一定程度拡大する方向にある。また、所謂B to C取引である消費者向け事業を実施する企業は約15%であるが、中間所得層もターゲットに含めている企業が多く見られた。アジア新興国市場における製品競争力は中国系、韓国系、インド系企業と比べ自社がやや上とする評価となっている。今後は、新興国への一部の本社機能の移管が進み、またグローバルITシステムの導入が進むことが示された。
(5)新興国の電力インフラではインドにおいて問題があるとの回答が多い
新興国の電力インフラでは現地で事業展開している企業の約3割が問題があると回答しており、上位有望国ではインドにおいてその割合が約6割と最も高い。一方、工業用水に関しては、問題があると回答した企業は約1割に留まった。また、運輸・通信インフラ(道路、鉄道、港湾、空港、通信ネットワーク)に関しては、全地域に共通して道路への改善ニーズが最も高い。 -
JBICでは、今回の調査結果を踏まえ、厳しさの続く国際的な競争環境にある日本企業の海外事業展開支援及び各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当局や関係機関との対話などを引き続き行っていきます。