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株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:林 信光)は、わが国製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケート調査を実施し、本日結果を発表しました。今回の調査は、本年7月に調査票を発送し、9月にかけて回収したものです(対象企業数936社、有効回答数495社、有効回答率52.9%)。本調査は、海外事業を行う日本の製造業企業の海外事業展開の現況や課題、今後の展望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で36回目となります。(報告書全文:わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告)
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本年度調査では、「事業実績評価」、「中期的な事業展開姿勢」、「有望事業展開先国・地域」等の定例テーマに加え、個別テーマとして「変容するサプライチェーンへの対応」、「ビジネスの変革や新たなビジネスの拡大(イノベーションを含む)に向けた取り組み」、「サステナブルな社会の実現に向けた取り組み」等について調査を実施しました。
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本調査結果の要旨は以下の通りです。
(1)海外事業を取り巻く環境が不透明な中、今後の海外展開の強化・拡大姿勢が低下するなど、模索が続く
今年度の調査では、2023年度の海外生産比率(36.0%)及び海外売上高比率(40.0%)ともに上昇基調を維持し、海外売上高比率は過去最高の水準となった(別紙1)。一方で、今後の海外事業展開にかかる強化・拡大姿勢については、コロナ禍からの上昇基調がマイナスに転じた。世界的な需要の鈍化や中国経済の減速、米中対立を含む地政学リスクの高まり、他国・地場企業等との競争激化等が背景にあると考えられる。
(2)有望国ランキングではインドが3年連続で首位を維持。中国は6位に順位を落とし、有望国としての中国離れが鮮明に
今後3年程度の有望な事業展開先国については、インドが得票率を昨年度から10ポイント以上伸ばし、2位以下を更に引き離して3年連続の首位となった(別紙2)。昨年度3位の中国は大幅に票を落とし、それがインドに流れる形となった。脱中国の受け皿としても期待が寄せられるベトナムは2年連続で2位を維持。米国は、足元の労働コストの上昇も懸念され得票率を落とすも、マーケットに対する評価やイノベーションの中心地としての期待等から3位となった。
(3)サプライチェーンの見直しが進む。脱中国の動きがある一方で、調達先を中国に広げる企業の動きも
経済合理性の追求や米中対立を含む地政学リスクの高まり等を背景に、製造業企業の間にサプライチェーンを見直す動きが拡大。製造・販売拠点や原材料等の調達先に関して「脱中国」を進めつつ日本や他国を組み入れることによるサプライチェーン強化を図る動きがみられた。他方、一部の業種ではコスト削減の必要性や中国国内の需要への対応から、日本から中国に製造・販売拠点や原材料等調達先を移管する企業もあった。
(4)ビジネスの変革に向けた取り組みは米国を中心に、中国、ASEANにも拡がる
回答企業の約9割が、ビジネスの変革に向けた取り組みを行っている。3割超の企業が海外の企業や研究機関、スタートアップとの連携やM&Aを通じて変革を目指す。特にスタートアップとの連携では米国の事例が最も多く、AIを用いた最新技術や再生エネルギー関連の協業の例が見られ、イノベーションのフロンティアとしての認識が拡がっていることを確認。その他、中国、ASEANでも商圏の拡大や現地化に向けたM&Aや研究機関との連携がみられ、企業の広範な取り組みがみられた。
(5)脱炭素・循環経済への取り組みが進展。生物多様性や人権問題への対応は取り組みが限定的
約65%の企業が製品の省エネ化等を通じた脱炭素への取り組みを、また約45%の企業がリサイクル等を通じた循環経済への移行にかかる取り組みを実施。ただし、海外での取り組みは2割程度と限定的で、コスト増の受け入れ、補助金の少なさ等が海外での取り組みの障壁となっていることが判明。製造業の各企業は、今後の脱炭素社会・循環経済への移行も意識し、自動車・蓄電池、バイオマス等の資源循環、再エネ、水素・アンモニア等の分野を成長機会として期待。他方、生物多様性や人権問題への取り組みは、昨年度からの進展は見られず、企業の規模によって取り組みに差があった。
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本年度調査では、非製造業企業の海外事業展開に関する調査も実施しました。また、昨年度に引き続き企業開示データ・新聞記事データ等を用いたテキストマイニングによる分析も実施しました。ご参照ください。
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JBICでは、今回の調査結果を踏まえ、国際的な競争に直面している日本企業の海外事業展開支援及び各国・地域の投資環境改善に向けた現地政府当局や関係機関との対話等を引き続き行っていきます。
別紙2:(抜粋)中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域