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製造拠点から業種多様化・脱炭素化へ―――変わるベトナム経済

特集 ベトナム投資は共創の時代へ①

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成長を続け、2045年の先進国入り、2050年までのカーボンニュートラルを目指すASEAN随一の成長株

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86年のドイモイ(市場開放路線)開始、07年のWTO加盟を経て、FDI(海外直接投資)が増加、投資ブームに沸く

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日本企業の投資、JBICの支援も変化を続けるなか、日越外交関係樹立50周年となる2023年を迎えた

ベトナム投資は共創の時代へ①の画像 ベトナム投資は共創の時代へ①の画像

経済成長率8%、伸びる国内消費。もはや「安い製造拠点」ではない

南北1650キロにわたる国土に、約1億人が暮らすベトナム。人口の35%が首都ハノイや最大都市ホーチミンなど都市部に集住する。「ハノイでは至る所で建設工事が行われており、経済発展の最中にあることを肌で実感できます」。こう話すのは、着任から半年になる国際協力銀行(JBIC)ハノイ駐在員事務所の上辻春菜さんだ。

上辻春菜(かみつじ・はるな)さんの画像

JBICハノイ駐在員事務所/駐在員
上辻春菜 (かみつじ・はるな)さん 2018年入行。財務部、電力・新エネルギー第1部(洋上風力発電や太陽光発電のプロジェクトファイナンス、原子力案件等を担当)を経て現職。海外研修はシンガポールで積んだ。大阪大学人間科学部卒業

バイクだらけの街中を思い浮かべる人が多いかもしれないが、自動車の保有率も上がっている。「地元の人で賑わうイオンモールの駐車場は、土日は日本車や韓国車、地場財閥ビングループの国産車などでびっしり埋まります」と、上辻さんの同僚駐在員、池永あずささん。イオンモールにはユニクロや無印良品なども出店しているが、日本と遜色のない品揃えで、物によっては日本より高い値付けだという。

池永あずさ(いけなが・あずさ)さんの画像

JBICハノイ駐在員事務所/駐在員
池永あずさ (いけなが・あずさ)さん 2010年入行。米州ファイナンス部、外国審査部(トルコや中東欧諸国のソブリン審査等)、調査部等を経て現職。日本企業の支援や政策対話、調査のため、時にベトナム各地に赴く。京都大学法学部卒業

今でもバイクはハノイ市民の主要な交通手段だが、自動車も増えている(左)/1911年に完成し、100年以上の歴史を誇るハノイ歌劇場。発展を続けるハノイに今も残る古き良きベトナムを伝える建造物の1つ(右)の画像

今でもバイクはハノイ市民の主要な交通手段だが、自動車も増えている(左)/1911年に完成し、100年以上の歴史を誇るハノイ歌劇場。発展を続けるハノイに今も残る古き良きベトナムを伝える建造物の1つ(右)

「貧富の差はまだありつつも、所得水準は上昇しており経済は好調。昨年はASEANの中で最も高い8%の経済成長を達成しました。人々は今日より明日は良くなるというマインドセットで、子供への教育投資にも熱心です」と池永さんは感慨深く語る。

ベトナムと日本の関係といえば、一般には安い労働力を武器にしたASEANの製造拠点の1つ、そんなイメージがいまだ根強いかもしれない。だが、その「思い込み」はかなりのアップデートが必要だろう。ベトナムは大きく変わりつつある。

日本の店舗と造りもほとんど変わらないハノイのイオンモール・ロンビエン店。ベトナム人客で賑わうの画像

日本の店舗と造りもほとんど変わらないハノイのイオンモール・ロンビエン店。ベトナム人客で賑わう

野心的な「先進国入り×脱炭素」。対越投資が増加、注目高まる

現在、ベトナムは建国100周年となる2045年の先進国入りを目指し、21年4月に就任したファム・ミン・チン首相の下で経済改革を推し進めている。さらに同年11月には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すと表明した。

中所得国であるベトナムにとって、飛躍的な成長とカーボンニュートラルの両立は野心的な目標に映る。

JBICハノイ駐在員事務所の首席駐在員、安居院徹さんはこう見る。「年率6%以上のペースで成長し続けないと『2045年の先進国入り』が難しいなかで、脱炭素を掲げた。しかしだからこそ、国際社会では『中所得国の罠』(成長が鈍化し高所得国の水準に達しないこと)を前向きに乗り越えようとするベトナムを支援しようとの機運が高まり、外資も新たな投資機会を見出そうとしています」

安居院 徹(あぐいん・とおる)さんの画像

JBICハノイ駐在員事務所/首席駐在員
安居院 徹 (あぐいん・とおる)さん 1999年入行。アジア大洋州ファイナンス部、西日本オフィス、経営企画部等を経て2019年より現職。東京大学法学部卒業。英マンチェスター大学院修士及び神戸大学大学院MBA。エネルギー政策・投資動向等の講演多数

外国からの対越投資の変遷を振り返ってみると、大きく3つの転機があった。1986年のドイモイ(市場開放路線)開始、94年の米国の対越経済制裁解除、そして07年のWTO(世界貿易機関)加盟だ。さらに現在は、ベトナムの参画する経済連携協定等の広がり、地政学的重要性の高まりを受け、生産移管などサプライチェーン再編の受け皿に。これらも追い風に「第4次ベトナム投資ブーム」が始まっていると言える。

そんな変遷の中で、当初はODA(政府開発援助)中心だったが、WTO加盟後はFDI(海外直接投資)が急増。FDIの累積認可額は08年に1000億米ドルを超えると、その後10年で一気に3500億米ドルに迫る規模に拡大した。進出する企業も、製造業中心から非製造業へ、大企業から中堅中小企業へと裾野が広がっている。

ハノイの画像

発展と伝統が共存するハノイ。各地で建設工事が行われ、日本の政府開発援助で建設されたニャッタン橋(左上、2015年開通)も市民生活に役立っている。一方で、線路脇に商店や家屋が立ち並ぶ通りなど、昔ながらの光景も

日本企業の97%「中長期的関係を」。小売業など業種も変化してきた

日本からベトナムへの経済協力が本格化するのは他国に先駆けた92年のODA再開からだが、それと前後して、JBICでは93年に国際金融市場への復帰支援を行っている。当時、世界銀行やアジア開発銀行などに対してベトナムの債務延滞が膨らんでいた。これを返済しないと新しい資金を入れられないため、アメリカの制裁解除を前に、JBICが2250万米ドルを拠出しブリッジローン(つなぎ融資)を実施したのだ。

2010年代に入り、日本企業のFDIも大きく動き出す。「対越ODA実績で日本は1位ですが、対越の累積FDIでも日本は3位なのです」(上辻さん)

JBICが日本の製造業向けに実施した海外事業展開調査(22年12月公表)では、中期的な有望事業展開先国として、ベトナムはインド、中国、米国に次ぐ4位に(ASEANでは3年連続トップ)。JBICハノイ駐在員事務所による在ベトナム日本企業へのアンケート調査(21年、195社回答)でも、97%の企業が「中長期的にベトナムにおける投資を拡大したい」と回答し、力強い期待感を示している。成長に伴いベトナムの人件費は高騰し始めているが、それを理由に「より安い国へ」という傾向は見られない。

地場財閥ビングループが運営する大型ショッピングモール「ビンコムセンター・メトロポリス」と日本食レストランの画像

左写真の中央右に見えるのは、地場財閥ビングループが運営する大型ショッピングモール「ビンコムセンター・メトロポリス」(上階は高級レジデンス)。近隣には低層の古い街並みが残り、まだら模様のハノイの発展を象徴するかのよう/ハノイの「ビンコムセンター・メトロポリス」内には日本食レストランも多く、人気を博している(右)

「ベトナムには勤勉で手先の器用な人が多い。教育水準も高く、いろいろなことに対する理解も早いのです」と安居院さんはその背景を説明する。ベトナムから日本への人材流入も活発になっており日越関係が深化していること、そして何より経済成長に伴ってベトナムの国内市場が拡大していることも、忘れてはならない。

そうした変化もあって、かつては製造業やインフラ関連が大勢を占めていた日本の対越FDIも、近年は多様化が進む。新規の認可投資件数ベースでは、21年に約3割が小売業になった。これを側面支援するコンサルティングやITも上位に入っている。

一方、製造業の投資を見ても、中国に集中していた投資をベトナムへ、さらにベトナム国内でも拠点を地域分散させる「ベトナムプラスワン」が広がっている。
 

これからは脱炭素分野に期待。JBICは政策対話にも重点を置く

JBICはこれまでに、315件、8481億円相当の金融支援をベトナム向けに実施(23年1月末時点)。上述のような製造業のサプライチェーン強靱化が1つの柱だが、もう1つの注力分野はエネルギー事業だ。累計でベトナムの総発電容量の13%相当を担う事業に融資を行ってきた。

ベトナム政府がカーボンニュートラルへの覚悟を表明した今、再生可能エネルギーや送配電網拡充、ゼロエミッション火力発電などで日本が協力できる分野も増えていくだろう。

JBICの主なクリーンエネルギー・製造業向け支援実績の画像 JBICの主なクリーンエネルギー・製造業向け支援実績の画像

日本企業のサプライチェーン強靱化や、再生可能エネルギーの普及といった分野等、これまでベトナム向けに累計315件、8481億円相当を支援してきた(2023年1月末時点)。今後はさらに脱炭素の取り組みへの支援を強化していく

JBICの主なクリーンエネルギー・製造業向け支援実績の画像

免責:地図上の表記は図示目的であり、いずれの国及び地域における法律上の地位、国境線及びその画定、並びに地理上の名称についても、JBICの見解を示すものではありません。

そうした中、JBICは新たに立ち上げた日米豪3か国の連携枠組みも活用しつつ、政策対話や個別案件支援に取り組む。そのため、現地対応を担うハノイ駐在員事務所の向き合う業務は広範囲だ。ベトナムの法制度は現場の運用が不透明なケースも多く、投資許可等の取得にも苦労が伴うが、そうした面で進出企業をサポート。制度改善や政策形成を後押しすべく、ベトナム政府・省庁との政策対話にも注力している。

その1つが03年に始まった「日越共同イニシアティブ」という、投資環境改善を両国で進める官民対話の枠組みだ。ハノイ駐在員事務所はそのうちエネルギー分野のワーキンググループのリーダー役を担ってきており、ベトナムの首相や関係省庁担当者に提言をしたり、会談の機会を持ったりと、精力的に動く。

「これを個別企業レベルでやると、自社事業の許認可当局に意見する形になるため、話を進めにくい。JBICのような機関が日本企業の声をうまく集約できれば、日本のプレゼンスを発揮していく上でも有用な活動になるはずです」(安居院さん)

2021年にベトナムで初めてとなる都市鉄道がハノイで開通、交通事情の改善が期待されている(カットリン駅)の画像

2021年にベトナムで初めてとなる都市鉄道がハノイで開通、交通事情の改善が期待されている(カットリン駅)

日越関係を重視する岸田文雄首相はこれまでに3度、チン首相と会談している。22年5月の会談では、チン首相から日本語とベトナム語で「誠実、友情、信頼」と記した書が贈呈された。

「史上最良の関係」と評される両国は、2023年が外交関係樹立50周年。もはや支援する側・される側の関係ではないというのが、現地をよく知る安居院さんら3人の実感だ。優秀なIT技術者も多く、「例えばオンライン決済の浸透など、日本より進んでおり学べるところもあると感じます」と上辻さんも言う。

これからの日越関係は「未来志向」で「共に創る」。互いを補完し合いながら歩んでいく、次の50年が始まろうとしている。

JBICハノイ駐在員事務所の駐在員とスタッフたちの画像

JBICハノイ駐在員事務所の駐在員とスタッフたち。個別案件支援からリサーチ、政策対話まで、その業務は多岐にわたっている

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