特集 地方銀行に聞く「海外進出支援の戦略」①


常陽銀行は茨城県水戸市に本店を構え、北関東エリアでは最大規模。足利銀行を傘下とする旧足利ホールディングスと経営統合し、めぶきフィナンシャルグループを発足した。
同行は上海、ハノイ、シンガポール、ニューヨークの4カ所に駐在員事務所を置く。取引先の中堅・中小企業の進出先としても、中国やベトナム、タイが多く、事務所のないタイではバンコクにある同グループの足利銀行の駐在員事務所と連携して進出企業をサポートする。
「足利銀行の取引先がベトナム進出を図る場合には、当行のハノイ事務所でバックアップしています。同様の連携は足利銀行が香港に拠点を持っているため、中国国内でも可能であり、成長著しいアジア全域をカバーしています」と、取締役常務執行役員の鳥羽吉嗣さんは語る。

製造委託先を探す取引先にベトナム企業を紹介する様子。同行の現地スタッフがアテンドし通訳まで行う
海外に進出している同行の取引先は、中堅・中小企業が約4割を占め、業種別では製造業が約6割、次いで卸売業が多い。従来は北関東から大消費地の首都圏へ進出するモデルが主流だったが、近年では海外展開に目を向ける企業が増えている。飲食業や人材派遣業などのサービス業は特に多い。
具体的な支援内容は、資金調達や貿易取引の資金決済から、海外情報の提供、マーケティング支援、現地法人の設立、仕入れ先の販路開拓、事業計画の策定まで、海外進出に必要な一連のサポートを提供する。
同行の海外進出支援業務で重要な役割を果たすのが外為オフィサーであり、全員が海外駐在経験を持ち、直接取引先の海外支援に携わってきた専門行員だ。茨城県内外の営業地盤を4つのエリアに分けてそれぞれ分担して配置されており、海外進出を検討する顧客に迅速に対応できる体制を整えている。
「海外進出を検討する顧客に専門行員が素早く対応することで、地域密着型の金融機関としてのコンサルティング機能を実現しています」
また、JBICとの連携では、ブラジルでの自動車関連会社の事業拡大を協調融資で支援した実績もある。
「グループ全体でも南米に拠点を持たないなか、JBICのリオデジャネイロ駐在員事務所を通じて適切な支援を受けられ、顧客にも安心してもらえました。当行だけでは支援が行き届かない地域でも、JBICとの連携によって顧客の進出ニーズに応えられるため、非常に有効です」
北関東から首都圏、アジアから世界へ。グローバルに地歩を築いていく。
