特集 地方銀行に聞く「海外進出支援の戦略」③


「杜の都」仙台に本店を構え、東北各県に拠点を置き多くの取引先を抱える七十七銀行は、地域最大の地銀だ。創業は明治11年(1878年)、地元では「しちしち」の愛称で親しまれ、長い伝統と絆を地域に持つ。
同行は東北で盛んな製造業や食品加工業等の海外展開支援を注力分野に位置づける。「日本の人口減少が加速するなか、消費市場や人材確保の面で魅力的なASEANを中心とした海外展開は、取引先も非常に高い関心を持っています。当行が海外ネットワークを拡充し、東北企業の海外展開を後押しすることは、地域金融機関としての使命だと認識しています」と常務取締役の青木一洋さんは語る。

遠藤製作所のベトナム・ハノイにある工場内部の様子。コンピューター制御の多機能工作機械が量産を行う
シンガポールと上海の駐在員事務所に加え、ASEAN域内の金融機関などと人材派遣を含めた連携を行うなど、海外ネットワークを拡充している。とりわけ2016年開設のシンガポール駐在員事務所は、設立から8年かけて培った知見と基盤を活かし、現地法人化に向けた手続きを進めている。
「25年1月の法人設立、同年4月の事業開始に向けて準備を整えています。現地法人化により、コンサルティング機能を強化することで、顧客の多様なニーズに応えられるようになります」
精密機械部品の製造・販売を行う株式会社遠藤製作所(山形市)のベトナム現地法人向けの協調融資は、JBICとの連携強化の象徴的事例だ。「遠藤製作所の案件では、JBICとの協調により、ベトナム特有の規制に関する知識のほか、クロスボーダー融資のノウハウも蓄積できました。ベトナム進出に関する引き合いは多いので、この経験を他の案件にも展開できることは大きなメリットです」
ベトナムに加え、人口増加と経済成長が見込まれるインドネシアへの取引先企業の関心が高まっており、24年10月、同行として初めてインドネシアのコンサルティング会社へ人材派遣を開始した。
「海外に行くと各地で異なる『匂い』を感じます。それは、各地の歴史、文化、習慣などに基づくもので、こうした背景を理解しなければ現地でのビジネスは難しいと考えます。当行では今後も海外各地への継続的な人材配置を通じ、現地の情報やネットワークを蓄積・拡充し、取引先の海外展開支援に取り組んでまいります」
世代を超えて歴史をつないできた同行は、地域と共に東北から新しい時代を共創していく。
