特集 地方銀行に聞く「海外進出支援の戦略」④


大阪府と兵庫県を中心とする関西地域を地盤とし、2010年に旧池田銀行と旧泉州銀行の合併により誕生した池田泉州銀行。
「当行の取引先は中堅・中小企業が多いのですが、元々、海外との貿易も盛んな地域で、早くから、電機・電子、繊維・化学、機械・金属、自動車関連をはじめ多くの取引先が、大手企業の動きに呼応する形で海外展開を進めていました」と専務執行役員の宮田浩二さんは語る。
「中堅・中小企業は大企業と異なり、海外事業に関する専門部署がないケースも多く、当行では、親会社や現地法人向けの融資、為替・送金やリスク・ヘッジ手段の提供等に加え、現地の投資環境や各種規制・法制度、税務・会計面の情報提供、外国人人材や公的支援制度の紹介など、海外展開に関する広範なサポートを行っています。当行の頭取自らも、在阪の各国総領事と親交を深めるなどしており、そうした関係性も踏まえつつ、取引先への支援に努めています」

エアゾール事業を展開する株式会社ダイゾー(大阪市)の中国・張家港市の工場。JBICとの協調融資で支援
同行は、中国の江蘇省蘇州市とベトナムのホーチミン市に駐在員事務所を有するほか、アジア各国の地場銀行とも提携関係にある。
「蘇州市には、地元の池田市との友好都市関係の縁もあって現地事務所を開設しましたが、上海市近郊で大規模な工業団地も多く、地銀で唯一拠点を持つ当行は、蘇州市政府との関係も活かして進出支援を行ってきました。ベトナムについては、近年取引先企業の関心が高く、現地でのサポートへの期待感の高まりも踏まえ、事務所開設に至りました」
一方で、同行の海外拠点やリソースも限られるなか、地元企業の海外展開支援において役立つのがJBICとの連携だ。
「JBICには長年にわたり、その広範な海外ネットワークや質の高い現地情報、海外事業に係るさまざまな知見や支援メニューを活用させてもらっており、大変心強く思っています。最近協調融資を行った株式会社三ッ星(大阪市)によるフィリピンでの合成樹脂異形押出品等の製造・販売事業案件では、JBIC大阪支店からも現地出張に同行してもらったほか、モラブ阪神工業株式会社(神戸市)によるインドでの人材派遣事業案件では、JBICニューデリー駐在員事務所から現地の投資環境等について幅広く情報提供を受けるなど、さまざまな形で協力してもらいました」
25年には大阪・関西万博の開催で、世界の注目が高まる大阪。その先にはIR(統合型リゾート)も見据える。関西の地元企業と信頼関係を築く同行は、JBICをはじめとした外部リソースも活用しながら、中堅・中小企業の海外事業展開をさらに後押ししていく。
