特集スタートアップ支援が拓く未来
導入企業が自社工場内に設置して使用する装置「Venus-L6」。この1台で年間500トンの金属くずを高純度の金属素材に再資源化できる
その場でリサイクル可能な装置
金属加工の現場では、鋳造や切削、研磨などの工程で必ず金属くずが発生する。製造工程で相当量が金属くずになると試算されるが、その大半は価値の低い金属として安価に取引され、場合によってはリサイクルされず埋め立て処分に回される。長らく見過ごされてきたこの産業廃棄物の問題に光を当てたのが、Sun Metalon(サンメタロン)の西岡和彦CEOだ。
2021年創業、米国イリノイ州に本社を構え、日米双方に開発拠点を置く金属リサイクルのスタートアップである。発生したその場で金属くずから油分や水分などを取り除き、純度の高い金属として再資源化する装置「Venus-L6」を開発した。強みは「従来手法と比べてエネルギー消費が少なく、高純度の金属資源に変えられる上、省スペースで設置できること」と西岡さんは言う。
「産業を興すハードルを下げたい」と語るSun Metalonの共同創業者兼CEO 西岡和彦さん。学生の頃にアフリカでのボランティア活動で見た光景と、日本製鉄勤務時代から見据える製鉄業界の変化に対する認識がその熱意を生み出している
従来、金属リサイクルは「中央集権的なプロセス」だったと西岡さんは説明する。金属くずを1カ所に集め、重油やガスで加熱する大型の設備で再資源化。価値の高い金属も低い金属も混ぜてしまうので価値の低い素材にしかならず、リサイクルの過程でCO₂も排出する。
一方、Venusの動力源は電気。独自の技術で金属くずを内部から直接加熱し、短時間・少エネルギーで純度の高い金属にできる。装置は小型でコストも安く、導入企業の工場内でリサイクルが可能だ。再生可能エネルギー由来の電気を使えばCO₂も排出しない。1台のVenusで年間500トンの金属くずに対応できる。
「技術は日々改良を重ねており、中型のVenusから、大型で油分・水分に加え酸素も除去できる製品であるNeptuneへと進化もしていきます。モジュール型にしているので、アップグレードもしやすい設計になっています」
製鉄業界が分散型へと向かう潮流を見据えて開発中の、Venusより大型で、油分・水分に加え酸素も除去できる新製品Neptune(イメージ図)。これにより金属リサイクルだけでなく、金属製造を担えるようになるという
分散型へのシフトを見据えて
Sun Metalonの技術は10件以上の特許により保護されており、競合の参入に対して優位性を確保している。日本製鉄のエンジニアから転じて起業した西岡さんは、製鉄業界が高炉から電炉へ、鉄鉱石など原石の海外調達から金属くずを含む分散的な調達へとシフトしていくと見ており、自社製品で資源循環や脱炭素、国の経済安全保障に貢献していきたい考えだ。同社の顧客には自動車業界なども含まれる。
起業の原体験は、実は学生時代のアフリカでのボランティア活動にある。「孤児院の運営は個人の自発性に委ねられており、目の前で小さな命が失われていく現実を痛感しました。手助けしても、持続的な産業を生み出し子供たちが自立していけなければ同じことの繰り返しになる。そう考えて資源循環を核とする技術を思いついたとき、光が見えたんです」
経済合理性を重視する西岡さんは、どこでも産業を生み出せる世界を実現するため、「エコノミカル」「ローカル」「サステナブル」を軸に事業を展開していく。それにはグローバルな展開も不可欠だ。25年5月から出資を受けるJBICへの期待についてはこう語る。
「JBICは国内外で知名度が高く、当社が『JBICのスタートアップ企業向け出資の第1号案件』という点は反響がありました。グローバル展開でカギとなる海外投資家の紹介も、すでに多数進んでいます。今後はトップマネジメント層へのパイプ強化を支援いただけると嬉しい」
2025年秋、Sun Metalonの米国拠点でVenusを前にした従業員たち
Sun Metalon Inc.
共同創業者兼CEO
西岡和彦(にしおか・かずひこ)さん
東京大学大学院工学系研究科を修了後、日本製鉄で11年間エンジニアとして勤務(生産技術、加熱炉開発)。新原理に基づく金属加熱の技術を着想し、元同僚らと2021年に同社を創業した。その独自技術を軸に現在、日米を行き来しながら金属リサイクル事業を推し進めている





