JBICストーリー
国際情勢や各国経済を多角的に分析し、日本企業の海外事業展開の判断を支援するJBIC調査部。その仕事に第一線で向き合う畑 仁美と共田怜央の若手職員2人が、手応えや意義を語る。
(左)
JBIC 企画部門
調査部 第1ユニット
共田怜央
2025年入行。調査部にて日本企業の海外事業展開・産業動向に関する調査を担当。大阪大学大学院医学系研究科修士課程修了
(右)
JBIC 企画部門
調査部 第2ユニット
畑 仁美
2022年入行。鉱物資源部にてブラジル国担当業務や鉄鋼関連案件の管理、新規案件の承諾業務に携わった後、ニューヨーク駐在員事務所での海外トレーニー研修を経て現職。国際教養大学国際教養学部卒
構造的な変化を捉え、経営戦略の「見取り図」を描く
「企業にとって、情報の価値がこれまで以上に高まっていると感じています」そう語るのは、調査部第2ユニットの畑 仁美だ。各国の政策や市場の動きが相次いで変化し、企業を取り巻く前提条件は常に更新され続けている。
こうした環境下では、個別の出来事に一喜一憂するのではなく、それらをどう読み解き、どこまでを構造的な変化として捉えるのかが問われる。調査部の役割は、断片的な情報をつなぎ合わせ、世界情勢や日本企業におけるグローバルビジネスの最新動向を読み解くための「見取り図」を描くことにある。
公開情報に基づく調査に加え、国内外の専門家との対話を重ねながら、地政学・地経学リスクが企業活動に及ぼす影響を整理し、JBICや日本企業にとっての示唆を提供している。
調査部では毎年、日本企業の海外事業展開の動向をまとめた調査報告書「わが国企業の海外事業展開に関する調査(GLOBE)」の結果を公表している。製造業・非製造業合わせて700社超の企業からの回答をもとに分析した2025年版では、「有望事業展開先」や「AIによる事業変革とビジネスチャンス」といった重要テーマの調査・分析に、25年4月に入行した調査部第1ユニットの共田怜央が携わった。
「企業の声を整理して可視化し、国内外に伝えていくことで、政策や議論につながっていく。そのプロセスに関われることに、この仕事のやりがいを感じています」と共田は振り返る。
世界中から生の声を拾い、各国の投資環境整備にも
調査部では、専門家やシンクタンクの知見に加え、日本企業の現場の声に丁寧に耳を傾けながら、世界の動きを読み解き、日本企業の意思決定を支える分析を行っている。
22年に入行した畑は、鉱物資源部でブラジルの鉄鋼関連案件に携わった後、24年から調査部第2ユニットに配属となった。営業の最前線から、いわゆるバックオフィスとされる調査部へ異動したことにより、海外出張は減ると思っていたが、「全く違いました」と笑う。
配属後は海外の専門家との面談も多く、欧州やインド、米国、韓国など世界各地を飛び回りながら情報収集にあたっている。地政学リスクの影響を調査・分析し、有効な筋書きを描いた上で、JBICの役員層へのブリーフィングや日本企業との意見交換、大学での講義および寄稿といった対外発信を行い、有益な情報の橋渡し役を担っている。
調査部の業務では大学での講義の経験も。「予想もしないような学生からの質問に新鮮な刺激を得ました」と畑 仁美は語る
一方、共田はGLOBEを通じて企業の声を丁寧に拾い上げてきた。「公開されている資料やウェブだけではわからない、現場の実感に触れられた」と振り返る。
そうして集めた声は、調査報告書として企業向けに発信されるだけでなく、各国政府関係者にも直接共有される。初めての出張先となったインドでは、日本企業が進出時に課題として挙げる複雑な法制度やインフラの整備状況について現地の関連省庁へ説明した。「日本企業の声を現地政府に届け、より良い投資環境づくりにつなげられる点に、この仕事の意義を感じています」と共田は語る。
初出張にてインド政府高官との意見交換会に参加(共田怜央、写真左)。GLOBEに対するインド政府の関心は非常に高い
グローバル情勢の解像度を高め、大局をもとに判断する力を養う
2人にとって、日頃から問題意識を持ち、メディアや文献などあらゆるルートを通じた情報収集は欠かせない。ただ、「情報を並べるだけでは付加価値を生まない。どうすれば一歩踏み込んだ分析ができるのか、自分で取捨選択する嗅覚を磨くことが大事だ」と上司からかけられた言葉が、強く胸に残っていると畑は語る。
また、共田はGLOBEの分析結果をもとに政府機関・企業側へ改善点を説明する中で、思うように伝えられないジレンマを感じた経験を振り返る。その際、上司から「相手が何を求めているのかをきちんと考えた上で説明内容を工夫すべき。金太郎あめのような同じ説明をしていては相手に響かない」と助言を受けたという。相手が本当に必要としている情報は何か。国・企業ごとにオーダーメードで向き合うことの大切さを、改めて実感したと話す。
質問票回収後、回答企業・専門家へのヒアリングを延べ約160件実施。訪問調査をはじめ、電話やメールも活用しながら、調査内容の背景を深掘りする
調査部での経験は、今後のJBICでのキャリア形成に向けた大きな学びになっていると、2人は口をそろえる。将来、海外駐在員事務所での勤務も視野に入れている畑は、「グローバル情勢を見る解像度が格段に上がりました。調査部で培ったスキルを生かし、より付加価値の高い情報を日本にフィードバックしていきたい」と今後を見据える。
一方、大学院時代に免疫の研究に取り組んでいたという、JBICでは異色の経歴を持つ共田は、まさか自分が日本企業の投資に関する調査を担当するとは思っていなかったと笑う。ただ、理系のバックグラウンドで培った視点は、企業や産業の技術的な評価を行う際にも役立っている。技術を起点に事業全体を見るようになったといい、「事業戦略を含め、企業全体の動きを大局的に捉えながら物事を考える視点を身につけることができました」と語る。
激動する国際情勢に向き合い、答えのない問いに挑み続ける日々は、今日も続いている。
JBIC 企画部門 調査部 第1ユニットの共田怜央
JBIC 企画部門 調査部 第2ユニットの畑 仁美
調査部は、国際経済・金融や地政学・地経学といった視点から、日本企業の海外事業展開を取り巻く環境について調査・分析を行っている。世界経済や国際情勢の大きな潮流を踏まえつつ、企業ヒアリングやデータ分析を通じて、日本企業にとっての課題や機会を整理し、JBIC内外に発信している





