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株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:林 信光)は、本日、JBICの2024年度業務実績を以下のとおり公表しました。なお、地域別や金融目的別の実績、過去5年間の推移などについては、別添資料をご参照ください。
Ⅰ. 出融資・保証業務
- 2024年度のJBICの出融資・保証承諾額は、前年度比26%減の約1兆5,061億円となりました。
- 2025年3月末時点の残高は、出融資残高が約15兆7,921億円、保証残高は約1兆3,290億円、合計約17兆1,211億円となりました。
Ⅱ. 業務上の主な取り組み
- 第5期中期経営計画の初年度となる2024年度は、各重点取組課題を踏まえ、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の下で脱炭素化に貢献する案件、銅鉱山開発・半導体・データセンターといった我が国の経済安全保障・サプライチェーン強靱化に資する案件、地熱発電や5Gネットワーク基盤関連では新しい技術を用いた案件、ウクライナ周辺国支援に向けた国際金融機関との連携を通じた案件など、JBIC独自の機能を発揮しつつ、特徴的な案件に取り組みました。具体的には、以下1.~4.のとおりです。
1.持続可能な未来の実現への取り組み
JBICは、さまざまなステークホルダーと共に、世界共通の課題であるカーボンニュートラルの達成やホスト国の抱える社会課題の解決を通じ、持続可能な未来を実現することに貢献しています。
- アジア地域においては、日本政府が掲げるAZEC構想を推進するため、主にベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、シンガポールにおいて活動を行いました。特に、インドネシアでは、AZEC構想の下で実現する具体案件として、地熱発電事業に対する融資を行いました。
- 水素・アンモニアに関連した支援として、UAEでは、日本企業が参画するアンモニア製造プラントを建設・保有・運営し、アンモニアの製造・販売を行う事業に対する融資を行いました。
- 再生可能エネルギーに関連した支援として、インドでは、太陽光発電事業に対し、日本企業と共に共同出資しました。
- 遺伝子治療薬関連事業を実施する米国企業を日本企業が買収するために必要な資金を融資したほか、インドネシアにおいてドローンを活用した測量・点検サービスの提供を行うスタートアップ企業に対し、同国での農園管理支援事業の買収に必要な資金を融資しました。
2.我が国産業の強靱化と創造的変革の支援
JBICは、エネルギー安全保障やサプライチェーン再構築などによる経済安全保障の確保、スタートアップを含む革新的技術・新事業の展開、中堅・中小企業の海外展開への支援を通じ、我が国産業の強靱化と創造的変革に貢献しています。
- 半導体分野においては、日本企業による、半導体などを搭載するプリント基板の設計ソフトウェアを設計・開発・販売する豪州の企業の買収に必要な資金を融資しました。また、半導体製造装置用の部品を製造・販売する日本の中小企業に対し、ベトナムでの製造・販売事業に必要な資金を融資しました。
- 通信分野においては、米国やインドにおいて現地法人を通じてデータセンター事業を実施する日本企業に対し、同事業に必要な資金を融資しました。
- 日本企業によるイタリアの自動車部品メーカーやオランダの食品メーカーの買収に必要な資金を融資するなど、さまざまな産業分野において、日本企業の海外M&Aを支援しました。
- 革新的技術に関連した支援として、ドイツにて日本企業が参画する、地熱発電の新技術を用いた初めての商用化プロジェクトである地熱発電プラントの建設・所有・運営事業に必要な資金を融資しました。
- また、日本企業の海外事業に必要な基盤を支える「特定外国法人」*1 向けの初の融資事例として、ドイツでOpen RAN技術を用いてネットワーク基盤を構築する事業に必要な資金を、同国関連企業へ融資し、民間金融機関の融資の一部に対する保証も提供しました。
- スタートアップ向け支援に関して、スタートアップ投資体制を強化することを目的として「スタートアップ投資戦略」を策定し、機動的な投資判断およびスタートアップに対する支援を可能とするために、同投資戦略に基づく出資関連業務に関する重要事項の決定・審議を行う「スタートアップ投資委員会」を新設しました 。
- 新たな取り組みとして、JBICが有する海外18拠点のネットワークを活用し、現地プロジェクトのモニタリング情報等を提供することで、地域金融機関が海外向け融資を実現しやすくすることを目的とした地域金融機関の海外事業モニタリング支援枠組みを開始しました。
- 個別案件に関しては、日本の中堅・中小企業がウクライナで実施する3Dプリント義肢装具などの製造・販売事業に必要な資金を融資したほか、日本の中堅・中小企業がラオスで実施するグリーン水素を活用したコーヒー焙煎・販売事業に必要な資金を融資しました。
- なお、2024年度では、日本の中堅・中小企業の海外事業展開支援を目的として、計61件、総額約130億円の融資・保証承諾を行いました。
3.戦略的な国際金融機能の発揮による独自のソリューション提供
JBICは、多国間連携や特別業務を含むリスクテイク機能等の独自のソリューションを活用し、対外経済政策実現を後押ししています。
- ウクライナおよび周辺国への支援として、同地域におけるウクライナの復興に資する事業に加え、黒海貿易開発銀行加盟国内における再生可能エネルギー等を中心とした気候変動緩和に資するプロジェクトを対象に、黒海貿易開発銀行を通じて支援すべく、黒海貿易開発銀行に対しクレジットラインを設定しました。加えて、ルーマニア政府発行のグリーンボンドの一部を取得しました。
- インド向けでは、インドの政府系金融機関に対し、同国の再生可能エネルギー・次世代エネルギー供給事業および省エネルギー発電・熱供給事業などを対象とするクレジットラインを設定しました。
- 中東・アフリカ向けでは、UAEの国営石油会社に対し、脱炭素・エネルギートランジション関連事業の実施に必要な資金を融資するためのクレジットラインを設定しました。また、ケニアにおいて日本企業が参画する地熱発電所建設プロジェクトに対し、地熱発電の設備一式を購入するために必要な資金をアフリカの地域開発金融機関経由で融資しました。
4.その他
- 2022年7月に「グローバル投資強化ファシリティ」を創設し、日本企業による脱炭素化をはじめとする地球環境保全への貢献、サプライチェーン強靱化、質高インフラ展開や海外における新たな市場創出を支援しています。
- なお、2024年度のグローバル投資強化ファシリティの融資・保証承諾実績は計108件、総額約1兆3,194億円となっています。
第5期中期経営計画策定時より世界の不確実性は増大していることを踏まえ、JBICは、我が国産業のサプライチェーン強靱化などの経済安全保障に資する取り組みや各国のニーズを個別に捉え、日本企業の強み・技術を活かし、課題解決・案件実現につながるように取り組んでまいります。
また、カーボンニュートラル・社会課題解決等を実現していく上で技術的ブレークスルー等も必要になる中、スタートアップ向け支援や新たな技術・事業の促進を含めて、リスクテイクや多国間連携等、JBICとしての独自の立ち位置・機能を活かして実施してまいります。
注釈
- *1
2023年10月2日付お知らせをご参照ください。