PROJECT最前線 飲食店から最新の科学技術を扱う企業まで、多種多様な中堅・中小企業の海外展開を支援
JBICでは中堅・中小企業の多様なニーズに対応した各種支援メニューを提供している。中堅・中小企業ファイナンス室の大澤華音さんと大阪支店の中牟田直英さんに、支援の現状と醍醐味を聞いた。


(左) 産業ファイナンス部門
中堅・中小企業ファイナンス室
中堅・中小企業第2ユニット兼第1ユニット(東日本)大澤華音 さん 2021年入行。審査部にてコーポレート審査及びプロジェクトファイナンス案件管理に携わった後、シンガポール駐在員事務所での海外トレーニー研修を経て、現職。慶應義塾大学法学部卒
(右) 産業ファイナンス部門
大阪支店(西日本地域所管)
中堅・中小企業ユニット 中牟田直英 さん 2020年入行。財務部にて出納、資金繰り、決算や会計処理等経理に携わった後、メキシコシティ駐在員事務所での海外トレーニー研修等を経て、現職。北海道大学農学部卒
JBICの活用拡大に向けて、「おせっかいバンカー」たちが奮闘
「JBICは、中堅・中小企業支援の取り組みとして、地方銀行向けの説明会や海外投資セミナー、ビジネスマッチングなども積極的に行っています」と中堅・中小企業ファイナンス室の大澤華音さんは語る。
「海外事業向けの資金調達を考える際の選択肢として、JBICの活用をぜひ検討してほしいと思っています」と大阪支店中堅・中小企業ユニットの中牟田直英さんも力強く続ける。
JBICには、中堅・中小企業向けファイナンスを担当する部署が東京と大阪にあり、それぞれ東日本地域と西日本地域を管轄している。2023年度にJBICが承諾した案件数のうち約半数が中堅・中小企業向けとなっている。
JBICの強みは政策金融機関としての役割を活かした支援メニューにある。民間金融機関との協調融資において、クロスボーダー融資が可能であるほか、海外現地法人に対して親子ローンや出資を行う際の親会社向け融資を提供している。また、民間金融機関を経由したツーステップローンも取り扱っている。
さらに、例えばインドネシアでは、現地法人が一定の外部格付を有していない場合、インドネシア国外からの外貨建て借入が規制されているが、JBICの保証を活用することで民間金融機関からの外貨建て借入が可能になるといったJBICならではの強みも持っている。




以上の例はJBICが提供するスキームの一部であり、他にも民間金融機関を経由したツーステップローンなど各種形態があるが、いずれも民間金融機関との協調融資が前提となる
まずはこれらの活用メリットを広く知ってもらう必要があるが、全国的な知名度が十分ではないという課題もある。そこで欠かせないのが経営の悩みに寄り添う親切心と行動力だ。「『おせっかいバンカー』として、中堅・中小企業の課題解決や、地銀のサポートに、チーム一丸となって積極的に取り組んでいます」(中牟田さん)
扱う案件の多さから、すべての企業を訪問することは難しいものの、大澤さんは顧客や協調融資銀行である地銀の担当者と綿密に連絡を取り合う。中牟田さんも「時間の許す限り、極力自分の足で訪問しています」と語る。

支援する分野が多様なため、幅広い業種について学べるところが魅力だと楽しそうに語る中牟田直英さん
民間金融機関と多様な企業に融資。社会課題解決に向けた支援も
JBICの融資審査のプロセスは、顧客や民間金融機関から相談を受け、部署としての方向性を固めながら、企業からの提出資料をもとに審査を行うという流れだ。企業が成長プランをしっかりと描けているかどうかなどが融資の決め手となるが、EVなどの環境配慮、エネルギー安全保障、日本企業のサプライチェーン強靱化に資するかといった公的な視点も入る。
JBICの融資といえば、製造業やエネルギー産業が想起されるかもしれないが、それだけではない。
「確かに自動車関連などの製造業が中心ではありますが、飲食店や食品加工、日用品、最新の科学技術を扱う企業まで、支援する業種は多岐にわたります。『ラーメン屋からフュージョンエネルギーまで』を部署のキャッチコピーに掲げるくらい、幅広く支援しています」(中牟田さん)
近年では、豪州での先端分野の医療・医薬品開発支援など、社会課題解決に向けた事業を行う企業への支援も増えている。また、昨今サプライチェーン確保の重要性が増している半導体分野では、ベトナムで半導体製造装置用部品を製造する企業への支援も行った。大澤さんは「JBICとして、優れた技術を持つ日本企業の海外展開を支援できたことを嬉しく思います」と語る。

豪州は先端医療分野での研究開発のハブになっている
中牟田さんは、日本の中古車が多く輸出されているバングラデシュ向けに、自動車部品の再生加工品の製造・販売事業を行う会社への融資を担当した。JBICとしてもまだ案件自体が少ない国であり、第三国経由で融資するという特殊で難しいケースだったが、「JBICに蓄積された国際金融スキームの知見を活用し、複数の契約を結ぶことで進めることができました」と感慨深く振り返る。
海外の成長を日本に取り込み、企業と産業を支える力に
学生時代には国際政治を学んでいた大澤さんは「日本と世界の未来を見据えた仕事をしたいと思い、JBICを選びました。また、さまざまな業種と接点を持ち、誰かの成長を支える仕事ができることにやりがいを感じています」と笑顔で語る。

特定の事業分野や国に限らず、多方面での経験や挑戦をしていきたいと意気込みを語る大澤華音さん
中牟田さんがJBICを目指した理由には、海外の成長を取り込みながら、日本の産業全体を盛り上げたいという強い思いがあった。
「農業経済を専門に勉強していたこともあり、フィールドワークの一環で地方の企業の方々に話を聞く機会も多かったんです。それが、今の仕事と通じるものがあり、学生時代に描いていたことが希望通りに実現できています」
それぞれの経験を踏まえ、今後取り組んでみたいことについて二人に聞いた。
大澤さんは「ウクライナとその周辺国への支援について、中東欧の政府関係者と意見交換する会議に同席する機会があり、貴重な経験となりました。今後は、日本と世界の国々との間でJBICがどのような役割を果たせるのか考えるような仕事にも携わりたいです」。
中牟田さんも「現職とも関連しますが、スタートアップの支援や、インフラ・資源関係のプロジェクトファイナンスにも取り組んでみたいですね」と展望を語る。
今後のキャリアにも意欲的な二人。これからも大きく羽ばたいていくだろう。

産業ファイナンス部門 中堅・中小企業ファイナンス室 中堅・中小企業第2ユニット兼第1ユニット(東日本)の大澤華音さん

産業ファイナンス部門 大阪支店(西日本地域所管)中堅・中小企業ユニットの中牟田直英さん
融資概要
中小企業とは、原則として資本金3億円以下または常時使用する従業員の数が300人以下(製造業の場合)の企業及び個人を指し、中堅企業とは、資本金10億円未満の企業を指す。開発途上地域が基本的な支援対象国となるが、先進国であってもM&A資金や特定の支援に該当する場合は、融資が可能となる