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アジアの脱炭素化──困難だが避けては通れない道のり

特集アジア発、脱炭素の新潮流

気候変動対策の目標に向けた課題、公正で包摂的なエネルギー移行を進めるための地域協力の必要性、そしてアジアの脱炭素化における日本のリーダーシップの可能性――。エネルギー専門家であり、アジア・ゼロエミッションセンター(AZEセンター)所長を務めるヌキ・アギャ・ウタマ博士が、人類最大級の課題の1つに取り組む道筋を語る。

フィリピン・マニラ首都圏にある金融・商業の中心地、マカティ市の再開発計画では、緑地の整備、持続可能性、接続性に重点が置かれているの画像 フィリピン・マニラ首都圏にある金融・商業の中心地、マカティ市の再開発計画では、緑地の整備、持続可能性、接続性に重点が置かれているの画像

フィリピン・マニラ首都圏にある金融・商業の中心地、マカティ市の再開発計画では、緑地の整備、持続可能性、接続性に重点が置かれている

Point AZEC (アジア・ゼロエミッション共同体) Point AZEC (アジア・ゼロエミッション共同体)

AZECは、アジア地域におけるカーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出の実現に向けた協力のための枠組みであり、11カ国のパートナー国が参加している。エネルギー安全保障と経済成長を確保しつつ地域の脱炭素化を推進することを目的に、2023年に発足した。

●オーストラリア ●ブルネイ ●カンボジア ●インドネシア ●日本 ●ラオス ●マレーシア ●フィリピン ●シンガポール ●タイ ●ベトナム ●オーストラリア ●ブルネイ ●カンボジア ●インドネシア ●日本 ●ラオス ●マレーシア ●フィリピン ●シンガポール ●タイ ●ベトナム
ヌキ・アギャ・ウタマ博士①の画像 ヌキ・アギャ・ウタマ博士①の画像

エネルギー専門家、アジア・ゼロエミッションセンター(AZEセンター)所長 ヌキ・アギャ・ウタマ博士 再生可能エネルギー、エネルギー効率、グリーンデザインといった分野を専門とし、民間・公共・NGOの各セクターにおいて幅広いキャリアを積む。現在は、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)のエネルギー政策局長兼AZEセンター所長。研究者としてはインドネシアからオランダを経て、ロンドンとタイの大学院で研究を行う。京都では博士研究員としての勤務経験あり

q AZEセンターの役割と主な取り組みについて教えてください。

a 当センターは、2024年8月21日にジャカルタで開催された第2回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合で設立され、情報共有に加え、政策やプロジェクトに関する調査、AZECパートナー国における脱炭素のビジョンや道筋、政策策定の支援を行うプラットフォームの役割を果たしています。また、関連イニシアティブとの協調や民間企業、公共団体、学術団体間の連携も行っています。

センターは、脱炭素化に向けた4つの柱を軸としています。1つ目の「脱炭素化ロードマップ」では、各国の状況に応じて、目標とタイムラインを設定するとともに、カーボンニュートラル達成の推進に向けた主な要因を特定します。

2つ目の「セクター別行動計画」では、電力、モビリティ、工業といった中核分野における脱炭素化のために、不可欠な知見や技術を提供します。また同時に、水素、アンモニア、バイオ燃料、トランジション燃料、CO₂の回収・利用・貯留(CCUS)、さらには重要鉱物など、分野横断的な取り組みも支援します。

3つ目の柱である「市場形成を促す仕組み」は、経済成長を支えながら、脱炭素化技術への投資を評価・促進するため、市場構造の整備と調整を行います。

そして最後に4つ目の「ステークホルダー・エンゲージメント」では、知見の共有や協力の促進を通じて、AZECパートナー国間における地域協力と政策対話を活性化させます。

q 脱炭素化における共通の課題、国別の課題は何ですか?

a AZECが目指す、エネルギー安全保障、適正な価格、そして持続可能性を同時に実現するには大きな課題の克服が求められます。多くのパートナー国でクリーンエネルギーの導入を支える近代的な送配電網やエネルギー貯蔵、国境を越えた相互接続が不足しています。再生可能エネルギーや水素、CO₂回収、地域エネルギー取引、老朽化した化石燃料インフラへの新技術の導入にも大規模な資本投資が必要です。

他にも、クリーンエネルギーの価格や、現行の化石燃料への補助金の問題があります。多くのパートナー国における化石燃料の輸入への依存は、エネルギー安全保障に影響を及ぼしています。再生可能エネルギーには出力が安定しないという課題があり、エネルギー貯蔵やバックアップ電源への投資が不可欠です。

地域エネルギー協力も必要ですが、規制やインフラ整備に関する障壁に直面しています。炭素価格や新技術に関する規制・基準の国ごとのばらつきも、地域協力の妨げとなっています。

最大の課題の1つが資金調達です。例えば、ASEANパワーグリッド(APG)構想だけでも、推計で160億米ドルにも上る設備投資が必要とされています。AZECにおける脱炭素化の目標を達成するには、資源を効果的に活用し、地域の協力を密にしていくことが欠かせません。

AZECは、「一つの目標、多様な道筋」というコンセプトを掲げており、カーボンニュートラルの実現にはさまざまな道のりがあることを認識し、各国の地理的条件、経済状況、技術力、制度設計、社会的背景、そして公平性といった要因を考慮しています。

資金調達以外にも、先進的なグリーン技術やトランジション技術の利用、技術移転といった技術的な障壁を含む、多くの課題が存在します。

具体例として、送配電網インフラの問題が挙げられます。例えば、電力需要の高いシンガポールでは、マレーシアやタイからの送電に課題があります。また、ベトナムでは再生可能エネルギーの発電容量が16~19GWに達していますが、インフラや系統接続の不備により、ピーク時には一部地域で停電が発生しています。

もう1つの課題として、電力を貯蔵して供給を安定化させる方法が挙げられます。これについては蓄電池などの解決策が検討されていますが、確かな答えはまだ見つかっていません。

マレーシア、タイ、フィリピンをはじめ、この地域はバイオ燃料が豊富です。これは化石燃料輸入への依存度を減らす一助となり得ます。しかし現状、輸送部門におけるバイオ燃料の利用比率は非常に限定的です。そこでインドネシアではバイオディーゼルとバイオエタノールの使用を大幅に増やす具体的な施策の導入を進めています。

ヌキ・アギャ・ウタマ博士②の画像

q アジアおよび世界における脱炭素化の取り組みの現状をどのように評価しますか?

a 国際的には排出量を削減し、世界の平均気温の上昇を摂氏1.5度未満に抑えることを目指すという認識が広く共有されていると思います。世界の再生可能エネルギー容量は拡大を続けており、太陽光、風力、グリーン水素への投資も記録的な水準に達していますが、依然多くの課題が残されています。

アジアでは、再生可能エネルギーの急速な成長がインフラ整備の遅れや規制の不整合、石炭と天然ガスへの根強い依存といった要因で制約を受けることが少なくありません。特に中国、インド、インドネシアなどの国々では、その傾向が顕著です。

この地域での重要な傾向として、エネルギー安全保障、適正な価格、持続可能性の3つの要素を同時に実現するエネルギー移行の道筋に関心が高まっています。

日本と韓国は、水素とアンモニアの混焼技術の発展で主導的な役割を果たしており、ASEAN諸国は、再生可能エネルギーの電力網への導入や、炭素市場の整備に取り組んでいます。また、ASEANエネルギー協力行動計画(APAEC)は、地域連携における推進役として重要な役割を担っています。

APAECとAZEC、そして炭素市場の協調を通じた地域協力は、アジア全体としてのエネルギー移行を、首尾一貫した、現実的かつ実行可能な形で進めていくために不可欠であり、経済状況にも即した取り組みです。

q アジアの脱炭素化の取り組みにおける日本の役割や、JBICができる貢献についてどのようにお考えでしょうか?

a 日本の取り組みは特に石炭に依存する経済において、エネルギー安全保障、適正な価格、持続可能性という3つの要素のバランスを重視した現実的なものです。日本は化石燃料の使用の性急な廃止を求めずに、AZECやアジアCCUSネットワークなどを通じて、段階的かつ現実的な脱炭素化の道筋の構築と推進に取り組んでいます。

このような流れの中で、JBICはクリーンエネルギー関連プロジェクトに対して、低金利融資やリスク保証、トランジションファイナンスを提供することにより、アジアのエネルギー移行を資金面から支える重要な役割を担っています。JBICがトランジションファイナンスに取り組むことで、アジア諸国はエネルギー安全保障と産業競争力を維持しつつ、脱炭素化に必要な資源を確保することが可能となります。

私は世界が脱炭素化において、緩やかとはいえ有意義な進展を遂げていると楽観的に見ています。再生可能エネルギーは急速に拡大しており、エネルギー貯蔵技術も着実に進歩しています。各国は移行を進めるために水素やアンモニア、CCUS、バイオ燃料などの多様な選択肢を模索しています。

国際会議で打ち出される野心的な目標は、世界の関心を脱炭素化に向ける意味では重要ですが、本当に肝心なのは、その目標を地域や各国の具体的な行動へと効果的に反映することです。

マングローブは生物多様性を支え、バイオマスを増加させ気候変動対策にも貢献するの画像

マングローブは生物多様性を支え、バイオマスを増加させ気候変動対策にも貢献する

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