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JBICが現場から支える「アジア脱炭素の道」

特集アジア発、脱炭素の新潮流

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AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)は、ASEAN諸国や豪州などと連携し、地域の実情に応じたエネルギー転換を推進

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送配電網の整備や協業などを通じ、偏在するエネルギー資源を有効活用し、持続可能な市場の創出を目指す

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JBICは技術、ノウハウ、プロジェクトデザイン、インセンティブ設計まで含めた包括的な支援を提供する

送配電網の強化は、地域の特性を生かしたエネルギー転換を実現するための第一歩だの画像 送配電網の強化は、地域の特性を生かしたエネルギー転換を実現するための第一歩だの画像

送配電網の強化は、地域の特性を生かしたエネルギー転換を実現するための第一歩だ

気候の変化を生活で実感する。ローカルアクションが欠かせない

「脱炭素やカーボンニュートラルの実現には、それぞれの国や地域の特性に応じた『ローカルアクション』が不可欠です。その点でAZECという枠組みの登場は、時代の要請に沿った自然な流れだと言えます」。こう語るのは、JBICでAZECの取り組みを主導するインフラ・環境ファイナンス部門長の関根宏樹だ。

例えば、インドネシアやフィリピンなどの島しょ部では海面上昇による生活への脅威が顕在化し、タイやベトナムなどの大陸部でも豪雨や干ばつなどの異常気象が深刻化している。

「こうした気候変動を日常的に実感する人々にとって、気候変動対策としての脱炭素は生活に密着したテーマです。各国の政策に大きく左右されるテーマではなく、人々が着実に対応を求めるボトムアップ型のテーマと言えます。他方で、対策は、その他の生活に密着したテーマとのバランスの下で成り立つため、トップダウン型の『グローバルスタンダード』は押し付けに感じられ、心に響きにくいのです」

そこで求められるのが、画一的な数値目標を設定し、機械的に実行するのではなく、各国の実情に応じた柔軟なアプローチだ。「各国の状況に合わせた対応を前提に、お互いを尊重しながら協力のあり方を考える。それこそがAZECのコンセプトです」

地域に根ざした「ローカルアクション」を重視する点も、ASEAN諸国(ミャンマーをのぞく9カ国)が参画するAZECでは必然的な取り組みだ。当然、国ごとに脱炭素へのアプローチは多様で、進捗にも差がある。

AZECは、成長著しいASEAN諸国とG7で唯一のアジアの国である日本、さらには豪州も参加するアジア太平洋地域の大きな枠組みである。

2025年のASEAN議長国であるマレーシアは、日本と共同でAZECの議長国も務めており、地域内のネットワーク強化を最優先課題に掲げている。

豪州は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーに恵まれ、地理的にインドネシアに近いため電力の輸送も可能。水素やアンモニアの輸出により、エネルギー資源の偏在を補完する役割も担う重要なパートナーだ。

AZECには多様な国々が参加しており、日本単独でアジェンダを決定することはできない。日本の政策としては、各国の実情に応じた多様な道筋を許容しつつ、パートナー国の脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障の3つを同時に推進する「トリプルブレークスルー」を提唱している。

脱炭素1つとっても、実現は容易ではない。それでも、継続的にモチベーションを維持するにはどうすればよいか。その視点から導き出されたコンセプトがトリプルブレークスルーだ。「3つのすべてを同時に実現という考え方であるため、異を唱える国はありません」

連携を深めるAZEC主要4カ国とJBIC
の具体的取り組み
連携を深めるAZEC主要4カ国とJBICの具体的取り組みの画像 連携を深めるAZEC主要4カ国とJBICの具体的取り組みの画像
  • ベトナム
    日ベトナム官民協議体(AZEC/GX推進ワーキングチーム)を設立
    送電網整備支援のため、民間商業銀行とファイナンス・スキームを構築
    ベトナム産業貿易銀行と脱炭素化・エネルギートランジション支援に関する覚書を締結
  • インドネシア
    日インドネシア官民対話枠組みを設立し、会合を通じて日本企業の案件組成を支援
    ムアララボー地熱発電の拡張事業にプロジェクトファイナンスを提供
    国営電力会社とクリーンエネルギー分野での業務協定を締結
    国営肥料公社と水素・アンモニア分野での覚書を締結
  • マレーシア
    アンワル首相と会談し、AZEC協力の3分野で合意。日本の投資拡大を目指し、今後の協力と実務推進で一致
  • フィリピン
    政府間対話枠組みを設立
    主要財閥と覚書を締結、脱炭素分野での日本企業との協業を促進

JBICはベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピンとの協力を強化。官民対話の促進や金融スキームの整備など、制度構築やプロジェクト形成を多角的に支援。今後、具体的な案件がさらに拡大していく

コネクティビティの強化とイノベーションの方向付け

脱炭素に向けたローカルな取り組みを束ね、具体的な成果につなげる上で、関根は「コネクティビティの強化がカギになる」と指摘する。その具体例が送配電網の整備だ。

再生可能エネルギーには、地域ごとに特性がある。例えば、太陽光発電に適した土地、地熱資源が豊富な地域、風力発電に適した地形など、要素は偏在している。しかし、国ごとに電力供給が分断されてしまうと、効率的な活用が難しくなる。

「地域内で得意なエネルギーを活かし、電力を相互に供給する仕組みが必要です。特に東南アジアでは島しょ部が多く、大陸部でも送配電網のカバー範囲が限られているため、地域間の電力系統の連結が課題になっています。電気を作る・運ぶ・使うという3点を効率的に進めるには、送配電網の整備を軸としたコネクティビティの強化が不可欠です」

もう1つ、関根がローカルアクションを基盤とした脱炭素推進のカギとして挙げるのが「イノベーションの方向付け」である。地域ごとに、脱炭素やカーボンニュートラルへのアプローチは異なる。AZECは、各地域の実情に応じてトランジションを進めるためのコミュニティを形成する枠組みだ。その際、注目すべきテーマを明確にし、政策誘導によって市場を創出することが重要になる。

「各国が単独で取り組むよりも、共通のテーマを設定し、政策誘導を通じて市場を育てることが大切です。方向性を合わせて、それぞれができることを積み上げていけば、マーケットは自然と拡大していきます。イノベーションを推進するには、パートナー国の主権を尊重しつつ、協調して方向性を揃えることが重要です」

関根宏樹①の画像

ファイナンス協力の段階へ。民間を巻き込み個別案件を実施

コネクティビティの強化やイノベーションの方向性が整った後、次のステップとなるのがファイナンス協力だ。ここでも、日本が果たすべき役割は大きい。

「日本はAZECにおいてリーダーシップを求められる立場です。パートナー国をつなぐファシリテーターとしての役割に加え、技術的ソリューションの提供、コネクティビティの強化、イノベーションの加速といった面でも期待されています」

例えば送配電網の整備において、日本は高圧直流送電(HVDC)技術を有している。HVDCは長距離・大容量の送電に適し、再生可能エネルギーの統合や送配電網の相互接続を効率的に行う技術で、新たな送電ソリューションの1つとして注目されている。

ファイナンス協力の段階では、民間セクターを巻き込んだ個別案件の実施が重要になる。ここでJBICが本領を発揮する。JBICは単なる金融支援にとどまらず、支援対象と密接に連携し、環境・社会への影響を考慮しながらプロジェクトを実現してきた。単に経済的な便益を追求するのではなく、全体の便益を重視しながら、プロジェクトの採否や支援のあり方を工夫してきた実績がある。

「AZECなどの国際的枠組みで脱炭素への注目が高まっていますが、JBICの基本的な行動方針は以前から変わりません。ローカルアクションとの親和性が高い取り組みは、元々組織に根付いています」

AZEC主要4カ国の電源構成 AZEC主要4カ国の電源構成の図 AZEC主要4カ国の電源構成の図

東南アジア各国では依然として石炭がエネルギー供給の主力を占めており、天然ガスへの移行や再生可能エネルギーの導入状況には差がある。各国の実情に応じた現実的なアプローチが求められる 
出所:経済産業省資源エネルギー庁資料(2024年5月)

アクションプランの実現に、JBICの包括的支援ツールを駆使

これまで、地域の実情に即した取り組みを実施してきたJBIC。その成果について、関根も自信を見せる。

「AZECでは昨年、今後10年のアクションプランを発表しました。ルール形成の推進や個別プロジェクトの組成を柱とするプランですが、その実現には当然、投資が必要です。今後10年間、プロジェクトを継続的に創出し、支援していくことがJBICの使命でもあります」

AZECは脱炭素にフォーカスしているが、JBICは脱炭素を含む総合的なソリューションを提供する構えだ。まず、地域特性や歴史的背景を踏まえ、課題を的確に把握。その上で、環境・社会への影響を精査し、丁寧なコミュニケーションを通じてソリューションを提示する。

ここでのソリューションとは、技術、ノウハウ、プロジェクトデザイン、インセンティブ設計まで含めた包括的な支援ツールのことだ。場合によっては、補助金などの公的資金と民間資金を組み合わせるブレンデッド・ファイナンスの手法を活用し、資金供給を行うこともある。実行フェーズでは、こうしたツールをフル活用し、サイクルを回しながら案件化を進めていく。

案件化の見込みが高いものについては、優先的に進める体制も整備している。特にASEAN諸国に対しては、プロジェクト実現に向けて推進する仕組みを次々と立ち上げている。

「具体的には、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピンですね。既存の動きをさらに加速させるとともに、各国のプロジェクトが実行フェーズへ進むよう働きかけています」

また、JBICが他国の技術を紹介するという形で課題を解決するアプローチも考えられる、と関根は指摘する。

「社会課題や必要なソリューションは多様で、日本の技術のみでソリューションを提供することができるとは限りません。JBICが他国の適切な技術やビジネスモデルをも紹介し、それによって日本の投資も実現しつつ課題が解決すれば、それも重要な貢献です。結果として、日本がグローバルパッケージを主導して成功したという形になれば、信頼されるパートナーとなるわけですから、非常に価値があります」
AZECが象徴するように、脱炭素化は単なる環境政策ではない。経済発展、エネルギー安全保障、地域協力を包括的に推進する戦略として、その重要性が高まっている。その実現に、JBICが果たす役割もより多様で広範なものになっていくだろう。


関根宏樹②の画像

PROFILE

関根宏樹②の画像

JBIC常務執行役員
インフラ・環境ファイナンス部門長

関根宏樹(せきね・ひろき)

1995年、東京大学経済学部卒業、日本輸出入銀行(現JBIC)入行。2005年、ロンドン・ビジネススクール金融修士課程修了。インフラ・ファイナンス部門などを経て、20~21年、英国王立国際問題研究所客員研究員。月に1度、関係国の駐在員も交えて、JBIC内でAZECに関する会議を行っている

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