特集アフリカ 多様性と可能性の大陸


スエズ湾風力発電所Ⅱは、エジプト東部のアフリカ最大級の風力発電所(654MW)で2025年6月に商業運転を開始した。豊田通商は、アフリカの再生可能エネルギーの普及に貢献している
「面」で挑むアフリカビジネス。4分野を柱に全域展開へ
アフリカで100年以上にわたり事業を展開してきた豊田通商は現在、モビリティ、グリーンインフラ、ヘルスケア、コンシューマーの4分野を軸に、アフリカ全域を視野に入れたビジネスを進めている。大きな転機となったのは「フランスのアフリカ専門商社CFAO社への資本参画だった」と語るのは、同社アフリカ本部COOであり、CFAO社副社長を務める平田竜也さんだ。
それまで自動車販売事業を中心に東・南部アフリカで事業展開を進めていた豊田通商は、2012年にCFAOへ資本参画、16年には完全子会社化した。同社との連携を機に西部アフリカにも進出。セネガルでは同国初となる海水淡水化プラントの建設にも携わるなど、地域・事業分野の両面で取り組みの幅を広げてきた。
先が読めないアフリカゆえに、一国で政変などが起きてもアフリカ全体でリスクを吸収できるよう、事業を「面」で展開する体制が必要だと平田さんは語る。また、人口拡大が見込まれるアフリカで、現地のニーズに適した商品やサービスにより中間層をいかに取り込めるかもカギになる。市場の動向を知る現地企業とのネットワークの形成も不可欠だ。コンシューマー分野ではショッピングモールも展開しており、価格に敏感な顧客のニーズを細かく読み取る。
フランスに駐在する平田さんは、毎月のようにアフリカへ足を運び、現地・現物で事業の現場を自ら確かめる。「パリや東京で情報収集するだけでは本質はわからない。肌感覚で知ることは大切」。10年以上、アフリカ事業に携わってきたからこその実感だ。

「今後、飛躍するアフリカの成長を、しっかりと取り込んでいくためのプラットフォームを着実に築いている」と語る、豊田通商アフリカ本部COO兼CFAO社副社長の平田竜也さん
日本にとっての好機到来。TICADはマイルストーン
インフラ分野では再生可能エネルギー開発も強化、これにはJBICの支援も受けている。将来的な経済成長が期待されるアフリカで、着実に事業機会を広げていく方針だ。
平田さんが「事業を加速させる重要な機会」と捉えているのが、TICADだ。開催に向けて現地と連携しながら案件の形成を進めており、大きな事業の弾みになっているという。「世界情勢が複雑化し、米国が支援を大幅に削減するなど、アフリカ開発に向けた支援は不透明になりつつある。そのなかで日本への期待が高まっており、今は好機でもある」と前を見据える。



豊田通商株式会社
執行幹部 アフリカ本部COO
CFAO社副社長
平田竜也(ひらた・たつや)さん