特集アフリカ 多様性と可能性の大陸


ケニアの現地法人開業時。現地で奮闘する日本人は2人、清水さん(中央)、小山瑞季さん(右から2番目)


未開拓市場に先乗り。地方銀行の挑戦
「日本の銀行グループで初のアフリカでの現地法人設立。その挑戦に大きな魅力を感じ、ぜひ自分が取り組みたいと自ら手を挙げました」。金沢に本社を置く北國フィナンシャルホールディングス傘下で、アフリカにおける金融事業を展開するCC Innovation AfricaのManaging Director、清水佑太朗さんはこう振り返る。
通常、金融機関の海外展開は、海外で事業を行う顧客の支援という「後追い型」が一般的だ。しかし今回は逆。
「まずは我々が先にアフリカに進出し、日本企業を連れて行こう」という発想が出発点だった。もちろんリスクはあるが、将来的な成長が有望視されるアフリカに、日本企業が目を向けるのも時間の問題と捉えている。他の金融機関がまだ足場を築いていない今、いち早く進出することは大きなビジネスチャンスでもある。さらに、海外支店ではなく現地法人としたのは、融資・投資・コンサルティングといった多様な業務を担うためだ。
北國銀行の母体である北國フィナンシャルホールディングスで海外事業に携わってきた清水さんは「自治体と連携して仮想通貨の発行に取り組むなど、銀行としては先駆的な挑戦を重ねてきた社風が、今回のアフリカ進出の後押しにもなった」と語る。
稼ぐ力をアフリカで、日本企業の伴走者として
2024年6月にケニアで現地法人の営業を開始してから1年。現地企業からの融資ニーズは高く、「想定以上の進展を見せている」と清水さんは言う。拠点をケニアに構えたのは、南アフリカに次いで日本企業の進出が多いことを踏まえた判断。英語が通じるのも好材料だ。さらに、高地に位置し「夏の軽井沢」とも呼ばれる過ごしやすい気候条件も味方する。
日本企業のアフリカでのニーズをさらに喚起し、日本とアフリカのビジネスを太くすることで、日本国内の経済活性化のタネをまく。北陸を地盤とする地方銀行にとって、地方経済の活性化は喫緊の課題であり、アフリカで地方企業が「稼ぐ力」を持てるよう支援することも重要な役割の一つだ。現在では、より広く日本企業の融資ニーズに応えるべく、現地政府や金融機関との連携にも取り組んでいる。
この1年、清水さんはアフリカ進出を目指すスタートアップ向けのイベントや、日本・東京商工会議所主催のセミナーなどに登壇。現地で実感するアフリカのニーズや、固有の課題を積極的に発信してきた。アフリカ進出を検討しており、相談したいという声も各所から寄せられている。
「アフリカといっても54カ国あり、一括りにはできません。自社の強みは何か、どの市場にどんな目的で進出するのか。そして、どんなパートナーと組むべきか。そうした多角的な視点から日本企業を支援していきたい」と力強く語る。
また、25年10月に、北國フィナンシャルホールディングスはCCIグループへと社名を変更する。銀行の枠を超え、より海外への展開・発信を強化していく。同社の挑戦のDNAは、ここアフリカでも息づく。

ケニアの首都ナイロビの夜景


CC Innovation Africa Ltd
Managing Director
清水佑太朗(しみず・ゆうたろう)さん