JBIC「グローバルサウス」プロジェクト7選
コロナ禍に行われたインドのヘルスケア分野の改善に向けた融資プロジェクトは、国際協調の意義を持つ一方、日本の地方銀行の海外展開をサポートする取り組みでもあった。プロジェクトを率いた三木田聖さんに聞いた。


インドでも新型コロナウイルスが猛威を振るったことは記憶に新しい
世界の人々の健康を守る、JBIC初のワクチン製造関連の融資
日米豪印(QUAD)は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、幅広い分野で協調し、地域に貢献することを方針に掲げている。2021年3月に開催された初のQUAD首脳会合では、新型コロナ対応を「最も喫緊の地球規模の課題」と位置付け、その中でインドのワクチン製造能力の強化に向け連携、JBICなど各国金融機関を活用することで合意していた。
インドはグローバルサウスの中心国の1つであり、またワクチンの世界的な製造拠点でもある。東南アジアやアフリカなどにも輸出しており、インドでの製造能力拡大は、国境を越え、広く世界の人々の健康にも役立つものだった。
22年5月、インドの政策金融機関インド輸出入銀行との間で、融資金額1億米ドル(うちJBIC融資分6000万米ドル)を限度とする貸付契約が締結された。JBICは民間金融機関の融資分に対し、保証を提供する。インド輸出入銀行を通じ、 ワクチンや治療薬を製造する地場企業を資金面で支えるが、インドでの新型コロナワクチン生産拡大に向けた幅広い分野に対する融資はJBICとしても初の試みだった。
JBICインフラ・環境ファイナンス部門で社会インフラ部次長を務めた三木田聖さんは、このプロジェクトの意義を次のように語る。

「融資は、ワクチンの製造企業だけでなく、医療機器の生産拡大や医療施設の整備といった分野にも及びます。コロナ禍の下、資金支援によるインドのヘルスケア分野の底上げで、インドの経済発展を下支えし、インドに進出している日本企業のビジネス環境の改善も後押しします」
本案件はJBICと三菱UFJ銀行、 八十二銀行、京都銀行との協調融資である。JBICによる融資保証をステップとして、地方銀行を含む民間金融機関は海外展開の道筋をつけられる。QUAD連携強化、地銀の海外展開とさまざまな成果が生み出されたと言える。


インフラ・環境ファイナンス部門
社会インフラ部次長(当時)
三木田 聖(みきた・さとし)さん
1997年入行。社会インフラ部では鉄道等の案件、米国等の国担当業務に従事。現在はエクイティ・インベストメント部長。一橋大学法学部卒業