JBIC「グローバルサウス」プロジェクト7選
インドの民間銀行への融資を通じて、日系自動車メーカー、日系建機メーカーへの貸付融資を展開。「世界の工場」を目指すインドで、インフラ部門を通した融資の状況について、米山智さんに聞いた。


インドでは環境汚染に対する規制が進み、今後、環境配慮型自動車の需要拡大も見込める
サプライチェーン強靱化のための日系メーカーへの「側面支援」
IT大国としての印象が強いインドだが、近年、製造業やインフラ部門の公共投資が成長分野として注目されている。2023年の経済成長率は8.2%を記録し、多くの企業がその成長に期待を寄せる。
21年3月には、日系自動車メーカーの現地サプライチェーンに必要な資金供給を行うことを目的として、インドステイト銀行との間で6億米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結した。また、23年3月には、日系建機メーカー支援として、インダスインド銀行との間で6000万米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約が実現した。
インドでは物流インフラの改善を目的とした「国家インフラ開発計画」に基づき、総予算規模100兆ルピーを投じるインフラ開発プロジェクトが計画されている。JBICインフラ・環境ファイナンス部門の米山智さんのチームもそこに着目し、建設機械セクターに照準を当てた。
「インドの建機市場は、販売台数ベースで世界第3位の規模。日系建機メーカーは、インドの掘削用建機市場で約6割のシェアがあり、高い成長が見込まれます」と米山さんは語る。


インド政府は「Make in India(メーク・ イン・インディア)」政策を掲げ、「世界の工場」になるべく、同国製造業への直接投資を世界中に呼びかけている。日系自動車メーカー、日系建機メーカーへの「側面支援」という2案件は、インドでリスクテイクをする日系企業だけでなく、そのサプライヤーであるインド企業、地場の民間銀行からもメリットを感じてもらえる案件となった。
「日本だけでなく、相手の国・企業の役にも立てる案件を考えられるのは JBICならではであり、この仕事の醍醐味かもしれません」と、米山さんはそのやりがいを語る。日系企業・インド企業の連携を橋渡しする取り組みは、まさにグローバルサウスと日本をつなぐ試みの1つと言えるだろう。


インフラ・環境ファイナンス部門
社会インフラ部第2ユニット
米山 智(よねやま・さとる)さん
2001年入行。企業金融部、国際金融第1部(中国担当)、米州投資公社(IIC)出向、経営企画部人事室、産業投資貿易部(M&A支援等に従事)等を経て22年より現職。慶應義塾大学法学部卒、南カリフォルニア大学ロースクール修了