特集エネルギー安全保障の新たな選択肢 バイオ燃料の現在地
2026年5月21日にプルタミナとJBICが共催したワークショップの参加者 (Photo: Courtesy of the Pertamina Energia Team)
エネルギー安全保障を支えつつ、脱炭素化の取り組みを前進
インドネシアが2060年までにネットゼロ(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を達成するという目標に向けて取り組む中、プルタミナは、従来からの石油・ガス事業を維持しながら低炭素の代替エネルギーを拡大する「デュアル・グロース戦略」を進めている。排出削減の取り組みの中心にあるのがバイオ燃料だ。JBICや日本企業との協力を深めつつ、同社はその導入を進めている。
「優先課題は、インドネシアのエネルギー安全保障を支えながら、長期的な脱炭素化の取り組みを前進させることです」と、プルタミナでVice President Investor Relationsを務めるジュファーソン・ビクター・マンゲンピスさんは言う。「従来の事業の成長によって自社のキャッシュフローとサービス提供の信頼性を担保しつつ、低炭素分野事業の拡大によって長期的な成長を図ります」
マンゲンピスさんは、バイオ燃料には2つの役割があると強調する。温室効果ガス排出削減と、燃料輸入への依存を減らすエネルギー安全保障の強化だ。燃料の純輸入国であるインドネシアは、2030年代に向けてエネルギー自給率を高めていくことを目指しており、国内でのバイオ燃料生産を外部依存の低減に向けた手段と位置付けている。
バイオ燃料への移行を先導するのが、プルタミナのチラチャップ製油所でSAFを生産するパイロットプロジェクトだ。この燃料はすでに、ガルーダ・インドネシア航空によるジャカルタ─ソロ間の試験飛行と、プルタミナ傘下のペリタ航空によるジャカルタ─バリ間の試験飛行に使われている。
SAFの生産を進める際の大きなハードルはコストだ。燃料コストに圧迫されている航空会社は、SAFと従来のジェット燃料の価格差に二の足を踏む。ただし、原料コストの低下や加工技術の改善によって、価格競争力が高まることが期待される。「最大の課題は、投資コスト引き下げにつながるファイナンススキームを提供できるパートナーを見つけることです」と、マンゲンピスさん。また、投資家のコミットメントを促すには、安定した長期的な規制の枠組みが不可欠だともいう。
地理的条件も課題だ。島しょ国であるインドネシアでは、遠隔地への供給にコストがかかる。物流・輸送インフラは日本との協力の余地が大きい分野だ。
日本企業が持つ高度な知見がバイオ燃料の可能性を膨らませる
エネルギー安全保障と脱炭素化のバランスを取るには、規律と忍耐が必要だとマンゲンピスさんは言う。
「私たちは、ただ全速力で走ろうとしているわけではありません。ランナーがスマートウオッチの『グリーンゾーン』を確認しながら、最適な心拍域を保つようペースを調整するのと同じです。極端に速くても遅くてもいけません」
そうした慎重なアプローチは、更新・拡充されたJBICとの覚書にも表れている。その対象はバイオ燃料に加え、地熱、水素、CCS(CO₂回収・貯留技術)などにも広がっている。中でも地熱は、とりわけ大きな可能性を持つ。プルタミナは、地熱を電源とするグリーン・データセンターの構想を検討している。
5月に開かれたワークショップには、日本企業14社がプルタミナとJBICとともに参加した。マンゲンピスさんは、そこで示された技術的専門性の深さに感銘を受け、日本企業が持つ高度な知見には、バイオ燃料生産の効率と品質を高める大きな可能性があると見ている。
22年に実施されたJBICからの融資(協調融資総額5000万米ドル、うちJBIC分3000万米ドル)が再生可能エネルギー事業を支える中、同社は今後も多くのプロジェクトが具体化することを期待している。さらに先を見据えれば、国内のエネルギー安全保障を確保した後、バイオ燃料は日本などへの輸出品になる可能性もあると、マンゲンピスさんは考えている。
その間も重要なのはバランスだと、マンゲンピスさん。先のランナーの例を引き合いに、笑顔でこう締めくくった。「結局、みんな『グリーン』が好きでしょう?」
プルタミナ
Vice President Investor Relations
ジュファーソン・
ビクター・マンゲンピスさん
Juferson Victor Mangempis





