特集エネルギー安全保障の新たな選択肢 バイオ燃料の現在地
米国・ミネソタ州で行われた起工式の様子
脱炭素へのシフトが進む中、今最も注目を集める領域の1つが、生ごみなどの有機性廃棄物からクリーンエネルギーを生み出す「廃棄物のエネルギー化」だ。広大な国土を持つ米国には豊富な有機性廃棄物が存在しており、大きなポテンシャルを秘める。この米国市場において、バイオガス技術を軸として事業展開を進めているのがカナデビア(2024年に日立造船から社名変更)だ。同社グループがミネソタ州で進めるバイオメタン事業とは――JBICがこの事業への支援を行う背景にも迫る。
「実は、米国全土で生ごみの分別収集を行う自治体は1割に満たないのが実態です。ほとんどの自治体が生ごみをそのまま埋め立てで処理しています」。こう話すのは、今回の案件を担当した福嶋南美だ。
埋め立てられた生ごみは、腐敗する過程で強力な温室効果ガスであるメタンガスを発生させ、地球温暖化の原因となる。一方で、見方を変えれば新たなビジネスの可能性を秘めた資源ということができる。この点に着目したのが、カナデビアだ。
JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部の福嶋南美(左)と高橋勝茂(右)
廃棄物を資源へ変える、カナデビアのKompogas®
世界市場で同社グループの競争力を支えているのが、カナデビアグループ独自の乾式メタン発酵技術「Kompogas®」である。この案件に参事役という立場で携わる高橋勝茂は、コンポガスシステムの技術の優位性をこう説明する。「コンポガスシステムは生ごみだけでなく、水分の少ない紙類などの有機性廃棄物も微生物の力で分解し、バイオガスへと変換することができます。また、発酵残渣を肥料として利用できるバイオ炭へと転換することも可能です」
JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部の高橋勝茂
ごみの性質に左右されにくく、最終的な廃棄物量を極限まで減らしながら資源へ生まれ変わらせる技術。「入り口と出口」で付加価値を生み出すこの技術こそが、カナデビアのさらなる米国市場進出を後押しした。
同社はこれまでも欧州や北米、アジア各国で有機性廃棄物を活用したエネルギー化事業を展開し、コンポガスシステムの導入実績を積み重ねてきた。JBICとの関係も、2017年、米国カリフォルニア州でのプラント建設事業に遡る。以降、JBICはファイナンスを通してカナデビアを支援するとともに、米国などを中心に各国の動向を共有し、コミュニケーションを築いてきた。こうした密な連携が今回の融資に結び付いた。
カナデビアが目を付けたのが、米国北部に位置するミネソタ州だ。というのも、同州では廃棄物削減や廃棄物をエネルギーに変換する技術の促進に向けた政策が積極的に進められているからだ。
海外展開支援を通じた、環境と社会への貢献
本案件はカナデビアグループがミネソタ州で長く廃棄物・リサイクル事業を行ってきた地場企業Dem-Con Companies, LLCに声を掛けたところから始まっている。地域に根差したごみ収集ネットワークを持つDem-Con Companiesにとっても、カナデビアグループが持つコンポガス技術は大きな魅力だったのだ。また、ミネソタ州政府は、「廃棄物ゼロ」の環境目標を掲げ、環境配慮型のインフラ事業に対して、補助金などを通じた支援制度を用意している。「『地場企業の廃棄物収集力』『カナデビアグループの独自技術』『自治体の積極的な支援』という3つのピースが噛み合い、事業が成立したのです」と高橋は振り返る。
主として新興国・途上国向けの支援を行うJBICが、今回なぜ米国での事業に対して支援できたのか。それは、JBIC法で定められた特定の対象分野については、先進国向けでも融資が可能とされており、今回のカナデビアグループの廃棄物処理事業がこの分野に該当しているためである。
JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部の福嶋南美
日本企業の海外進出支援に加えて、地球環境保全の文脈でも支援意義の高い事業である今回の案件。JBICが第5期中期経営計画で掲げる「社会課題解決」にもつながっている。「今回のカナデビアグループの事業は、米国ミネソタ州において有機性廃棄物の回収と利活用を行うため、衛生環境の改善にもつながります」と福嶋。
ミネソタ州で始まっているこの案件が、バイオ燃料活用の大きな可能性を示している。
JBIC インフラ・環境ファイナンス部門
社会インフラ部 参事役
第2ユニット兼第3ユニット ユニット長
高橋勝茂
2006年入行。環境審査室、インドでの駐在、産業投資・貿易部などを経て、現在は社会インフラ部にてユニット長兼参事役として、廃棄物処理施設・港湾・空港・物流施設などを担当するチームを率いる。エコリアム(Ecology+Atrium)を擁する美しい廃棄物処理施設(中工場)を有する広島県出身。九州大学経済学部卒
JBIC インフラ・環境ファイナンス部門
社会インフラ部 第1ユニット兼第4ユニット
福嶋南美
2025年入行。社会インフラ部にて廃棄物処理施設案件・鉄道案件などを担当。現在はフィリピンの上下水道整備事業の組成に従事。上智大学外国語学部卒





