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株式会社国際協力銀行(JBIC、総裁:林 信光)は、26日、中部電力株式会社が出資するドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」)法人Eavor Erdwärme Geretsried GmbH(以下「Eavor Geretsried社」)との間で、地熱発電及び地域熱供給事業を対象として、融資金額約43百万ユーロ(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンス*1による貸付契約を締結しました。本融資は、欧州投資銀行、株式会社みずほ銀行、ING Bank N.V.との協調融資により実施するものであり、協調融資総額は約131百万ユーロです。民間金融機関の融資部分には株式会社日本貿易保険(NEXI)による保険が付されます。また、本融資は「特別業務」*2として実施するものです。
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本プロジェクトは、Eavor Geretsried社が、ドイツのバイエルン州において、同社が有するクローズドループ地熱利用技術*3の初の商用化プロジェクトとして、発電出力約8.2MW(熱出力約64MW)の地熱発電プラントの建設・所有・運営を行うものです。地下の深さ約5,000mにクローズドループを掘削・設置し、内部に水を循環させることで、地下熱を効率的に取り出し、地上で発電や地域熱供給を行います。
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当該技術は、運転中に温室効果ガスの排気量が大幅に削減されることに加え、欧州域内における安定的な再生可能エネルギー由来の電力・熱供給に貢献することが評価され、欧州イノベーション基金による支援も決定しています。
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EUは2050年までのカーボンニュートラル達成を最優先課題に掲げており、再生可能エネルギーの利用拡大を推進しています。また、ドイツ政府は、2030年までに電力消費量に占める再生可能エネルギー割合を80%に引き上げることを目標として掲げるほか、熱供給に関しても、住宅・産業用地などの新興開発地で新たに設置する全ての暖房設備のエネルギー源について、65%以上を再生可能エネルギー由来とすることを義務づけており、本プロジェクトはこうしたEU及びドイツ政府のエネルギー政策に沿うものです。
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日本政府は、「エネルギー基本計画」(2021年10月発表)において、日本の地熱資源のポテンシャルを踏まえ、2050年に向けて抜本的な地熱発電の導入拡大を実現するため、革新的な新たな技術開発に取り組むことを明示しています。また、「インフラシステム海外展開戦略2025」(令和5年6月追補版)において、カーボンニュートラル・脱炭素移行への支援として、ホスト国のエネルギー政策に適合し、高度な技術を活用して環境負荷を抑制した質の高いエネルギー・電力インフラに対する金融支援を実施する方針を掲げています。本プロジェクトへの融資はこうした施策に沿うものであり、日本企業が出資者として事業参画し、長期にわたり運営・管理に携わる海外インフラ事業を金融面から支援することで、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献するものです。
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欧州投資銀行及びJBICは、2021年10月にEU及び日本が主導的役割を果たす環境・気候変動等の分野における両機関の連携の強化を目的とする業務協力協定を締結しています*4。本件はこうした協定にも沿った取り組みです。
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JBICは今後も、日本の公的金融機関として、様々な金融手法を活用した案件形成やリスクテイク機能等を通じて、日本企業の脱炭素化に向けた海外インフラ事業展開を金融面から支援していきます。
1. 設備構成図
2. プロジェクトサイト位置
3. 完成予想図
(出典:中部電力ウェブサイト)
注釈
- *1
プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定する融資スキームです。
- *2
特別業務の開始については、2016年10月3日付お知らせをご参照ください。
- *3
従来の地熱発電と異なり、地下の熱水や蒸気が十分に得られない地域でも効率的に熱を取り出すことが可能であることから、幅広いエリアでの開発が可能となります。
- *4
2021年10月25日付プレスリリースをご参照ください。