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欧州からアジアへ、陸上から洋上へ、追い風吹く風力発電

特集 サステナビリティ、未来への架け橋③

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世界の風力発電量は過去10年間で約3倍に増加。再エネへの移行加速により、今後は洋上風力の新規着工が増えてくる見込み

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風力発電に適した土地かどうかは風況に強く依存する。風量、風向きに加えて季節変動も考慮した事業計画の策定が必要

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欧州と異なり荒波や台風などがあるアジアでの洋上風力発電。得られた知見は今後国内に横展開できる期待もある

欧州からアジアへ、陸上から洋上へ、追い風吹く風力発電①の画像

洋上風力の本場は欧州。風況の良い立地を先取り競争

風力発電は太陽光発電に続く再生可能エネルギーとして、そのポテンシャルに世界的な注目が集まっている。パネルの設置に広い土地や施設が必要で夜間は休止状態になる太陽光発電と比べ、昼夜を問わず風さえあれば発電できる強みがある。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、世界の風力発電量は2013年から22年までの10年間で約3倍に増えている。

風力発電には設備の立地の違いにより主に陸上風力と洋上風力の2種類がある。近年開発に勢いがあるのは洋上風力発電で、シェアの多くを欧州が占める。

現在、洋上風力発電の主軸となっているのは海底に固定した基礎に風車を設置する着床式と呼ばれる方式で、一般的に着床式の適地は水深60m未満の海域とされる。他方で今後の将来性が高いとされるのは洋上に構造物を浮かばせる浮体式で、水深が深くとも設置でき広域の海域が対象エリアとなる。

洋上風力は、四方を海に囲まれ、偏西風も吹くイギリスや北欧にて盛んで、イギリスでは全消費電力の4分の1以上を風力発電でまかなっている。

「欧州は風況のいい場所にアクセスしやすかったという点が大きかったと思っています」。こう語るのは、JBICインフラ・環境ファイナンス部門の岩織恭平さん。風況、すなわち風量や風向きが風力発電に適した環境が欧州には多くあり、設備投資もしやすかったことが大きいという。

「いかに風況のいい場所を見つけて早く押さえるか。風力発電開発の要諦はまずそこにあります。もちろん欧州の場合は、再エネ開発を支援する仕組みが早くからあったことも大きいと思います」

岩織恭平さんの画像

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部
第2ユニット(欧阿中東及び米州担当)調査役
岩織恭平さん

洋上風力発電の「着床式」と「浮体式」
洋上風力発電の「着床式」と「浮体式」の図

着床式と浮体式の適地は水深の深さに依存する。日本のように遠浅な海域が少ない国では浮体式への適性が高い。浮体式はまだパイロット段階だが造船等の日本の技術の強みも活かした開発に期待が高まる

そうした活況を呈す欧州市場で、JBICもフランスの洋上風力発電案件に参画。23年4月に、住友商事等の出資するフランスの洋上風力発電事業2案件(ノワールムーティエ、ル・トレポール)で、プロジェクトファイナンス(PF)による貸付契約をそれぞれ結んだ。

ノワールムーティエには限度額約11億ユーロ(協調融資総額約22億ユーロ)、ル・トレポールには限度額約11億ユーロ(協調融資総額約24億ユーロ)を融資する。ともに発電容量約500MWの洋上風力発電所を建設・所有・運営し、商業運転開始後20年間にわたって国営のフランス電力向けに売電する。

フランス政府は19年に「エネルギー・気候法」を制定し、30年の総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を40%以上とする目標を設定。その中で、洋上風力発電を23年に2.4GW、28年に5GWに拡大する計画がある。本プロジェクトはその施策の一環であり、早期の成立も必要とされていた。

岩織さんと共に案件を担当した佐々木健良さんが言う。「フランスではJBIC初となる洋上風力発電事業でした。金額も大きくフランスならではの課題もありましたので、パリ駐在員事務所も交えながらさまざまな角度からスキームを固めていきました」

直面した課題の1つは、JBICがフランスでの直接融資に必要なライセンスを持っていないこと。しかし、そんな国外の金融機関でもスピーディな案件形成ができることを示せたことが、交渉成立につながった。

「欧州での実績として2018年に支援した英国での洋上風力発電事業を挙げ、PF融資事業や現地金融機関と連携した融資スキームを提案することで、理解を得ました」(佐々木さん)

佐々木健良さんの画像

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部
第2ユニット(欧阿中東及び米州担当)副調査役
佐々木健良さん

エジプトでは陸上風力が拡大。火力発電から再エネへ移行を後押し

新規着工件数では洋上が市場をけん引するが、陸上風力発電もタービンの大型化が進んでおり、風況のいい場所が確保できればまだまだ開発の余地はある。JBICが23年3月に、豊田通商及びユーラスエナジーらが出資するエジプト法人との間で貸付契約を締結したPF案件もその1つだ。

「本事業は、17年に貸付契約を締結した1号案件の実績を踏まえ、発電規模を増強した2号案件となります」と、案件を担当した小川力生さんは話す。

エジプト政府も再エネ由来の発電設備容量を30年までに35%、35年までに42%まで増強する目標を掲げる。本事業はエジプトがこれまで大きく依存してきた火力発電から再エネへの移行を推進する上での貢献が見込まれている。

「発電所が位置するエリアでは、夏に比べ冬は風況が悪化する季節変動があります。これを考慮に入れた返済計画をたてることで事業が円滑に進むようにしています」(小川さん)

小川力生さんの画像

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部
第2ユニット(欧阿中東及び米州担当)
小川力生さん

JBICが支援する最近の風力発電プロジェクト
JBICが支援する最近の風力発電プロジェクトの表 JBICが支援する最近の風力発電プロジェクトの表

※参考情報:1台湾ドル=4.7円(2023年11月現在)

多国間かつ複数の関係機関が参画。東アジアでの洋上風力の先行事例

一方、洋上風力発電では後発となるアジアでも、JBICが支援するプロジェクトが進行している。23年、三井物産等が出資する台湾の海龍(ハイロン)洋上風力発電事業に参画し、9月に融資金額約1012億円及び保証金額約47億台湾ドルを上限とするPF契約を、10月に最大約88億台湾ドルの出資契約を締結した。

台湾は22年3月に「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」を発表し、50年までに電力供給に占める再エネの割合を60~70%に引き上げる方針を掲げている。

洋上風力発電の推進は、こうした再エネ移行政策に沿うものでもある。台湾は大陸に面した本島の西側に洋上風力発電の適地が集中する。本案件もそのエリアがターゲットだった。

陸上風力発電の適地は平野に限られるが、コストや、施工・メンテナンス面では洋上風力発電よりも強みがあるの画像

陸上風力発電の適地は平野に限られるが、コストや、施工・メンテナンス面では洋上風力発電よりも強みがある

インフラ・環境ファイナンス部門の伊藤祐基さんはこう振り返る。「JBICとして初の台湾での洋上風力発電事業ということに加え、融資規模も大きなプロジェクト。関係当事者の数も多く、案件組成には時間がかかりました」

1つの金融機関で担える金額には限りがあるため、規模が巨額となる案件では、複数の金融機関の参加が必須となる。本件では最終的に、民間金融機関等からの融資に加えて、欧州(イギリス、ノルウェー、ベルギー)、カナダ、オーストラリアそして日本の6カ国7機関からの保証を取りつけた。

伊藤祐基さんの画像

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部
第3ユニット(アジア担当)調査役
伊藤祐基さん

もう一人の担当者である田村昌之さんは言う。「注目度が高い一方で、先行事例もまだ少なく、サプライチェーンも未発達なのが台湾の洋上風力発電事業です。建設リスクを始めとする事業性の審査を慎重に進めました」

田村昌之さんの画像

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部
第3ユニット(アジア担当)副調査役
田村昌之さん

海底地質の安定した欧州と比べると、台湾はより複雑で、台風などの自然災害もある。漁業者との調整等も必要であり、事業実施に向けたハードルは高い。

「ただ、台湾はアジアの洋上風力発電では先陣を切っているため、ここで得たノウハウや経験の横展開が期待されます。もちろん日本にもです」(伊藤さん)

再エネ転換に向かう全世界的な流れの中で、期待の高まる風力発電。海と陸の両面から、JBICもその推進を支えていく。

JBIC インフラ・環境ファイナンス部門 電力・新エネルギー第1部メンバーの画像
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