
イノベーション推進による、我が国産業の創造的変革の先駆として
国際社会は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に突入し、地政学リスクの高まりも相まって、企業を取り巻く環境の変化がかつてないほどのペースで進んでいます。日本企業にとっても、持続的な成長のためのイノベーション創出に不可欠なGXやDXが急務となっています。
このため、先進技術の獲得や新たなビジネスモデルの展開を目指す日本企業から、M&Aや海外展開に取り組むに際して、エクイティを含むリスクマネーの供給がさまざまな場面で求められてきております。エクイティファイナンス部門では、こうした日本企業のニーズに応えるべく、出資業務の強化に取り組んできました。
2017年6月に設立した株式会社JBIC IG Partners(JBIC IG)との連携による取り組みも5つのファンドを設立するに至り、今後もJBICグループとしてエクイティを活用した案件の組成や日本企業の海外ビジネス支援に取り組んでいきます。また、2023年度の国際協力銀行法の改正により、スタートアップ企業を支援する機能強化が図られており、イノベーション創出を支援する取り組みを強化していきます。
我が国経済をより一層強靱なものとするためには、日本企業の有する技術・経験を活用した海外マーケットへの展開に加え、グローバルな視点で革新的技術を取り込み、ブレークスルーを実現していくことが極めて重要です。JBICは、リスクマネーの供給といったファイナンス面のみならず、日本企業が取り組むさまざまな投資案件やその形成において、投資先のみならず、合弁相手先である海外企業、さらにはホスト国に対するレバレッジとして、JBICの有するノウハウやネットワーク、ブランド力を活用したアクションを通じ、我が国産業の創造的変革に向け、日本企業のパートナーとしての役割を担っていきます。
エクイティファイナンス部門長 米山 泰揚(常務執行役員)
部門の概要
エクイティファイナンス部門では、リスクマネー供給強化に対応するため、出資案件・証券化に関する業務を行っています。
- 出資業務・証券化に関する業務
- 我が国企業によるM&Aや海外企業との事業提携等を出資により支援
- JBIC IGとの連携によるファンドを活用した出資業務
- 過去5年間の出資承諾実績額:約1,700億円(うち約1,400億円が環境・再生可能エネルギー分野)
事業環境認識(リスク・機会の認識)
日本政府が2023年6月に策定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」において、GX、DX、スタートアップ推進や新たな産業構造への転換に加え、我が国経済を強靱なものとする経済安全保障方針の推進が謳われています。その具体策として、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の実現をはじめとした対外経済連携の促進や技術と意欲ある企業の海外展開促進のため、関係政府機関の活用を強化していくものとされています。先進技術・新技術の獲得や新たなビジネスモデルの展開を目指す日本企業への支援強化は、日本政府の基本方針に沿ったものであり、またその実現のために、リスクマネー供給に対するニーズはますます高まりつつあります。スタートアップ推進については、日本政府が2022年11月に策定した「スタートアップ育成5か年計画」において、日本にスタートアップ・エコシステムを創出し、日本がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地となること目指すとされています。JBICとしては、こうした新たなニーズに対して特別業務の活用を含め対応するべく、態勢整備に取り組んでいます。
部門の戦略
Ⅰ. 持続可能な未来の実現
フレームワーク整備が先行する先進国における水素、蓄電池など次世代エネルギー事業、および新興国における再生可能エネルギーや基礎インフラ事業などへの参入を目指す日本企業の戦略的取組に対するリスクマネー供給を行っていきます。
Ⅱ. 我が国産業の強靱化と創造的変革の支援
日本企業が取り組む、グローバル/バリュー・サプライチェーン強靱化案件や革新的技術・事業獲得を狙うM&A案件に対しリスクマネー供給を行っていくとともに、スタートアップ投資について、JBIC IGを含むJBICグループとして、具体的投資案件の積み上げを通じて、グローバルなスタートアップ・エコシステム参入や、我が国のスタートアップ・エコシステムのグローバル化を目指した取り組みを行っていきます。
Ⅲ. 戦略的な国際金融機能の発揮による独自のソリューション提供
第5期中期経営計画の重点取組課題Ⅰ、Ⅱに関する新規投資案件組成に取り組むにあたり、我が国対外経済政策の構築・実現を行うべく、多国間連携、国際機関連携も含め、JBICの機能を発揮していきます。
株式会社JBIC IG Partners(JBIC IG)概要
JBIC IGは、JBICと(株)経営共創基盤(IGPI)が2017年6月に設立した投資アドバイザリー会社です。日本の政策金融機関であるJBICの国際金融に関する知見と、IGPIの長期的・持続的な企業価値・事業価値の向上を目的としたハンズオン型成長支援および投資事業に関する知見を組み合わせ、海外における事業機会を開拓し、規律ある投資を通じて、日本の産業界と投資家に長期的・持続的な価値を提供することを目的とした会社です。
JBIC IG Partnersとは
JBIC IG Partnersは、JBICとIGPIが設立した投資アドバイザリー会社です。

JBIC IGのビジネスモデル
JBIC IGは、海外のパートナーと連携して、組成するファンドに対し投資助言を行うことを通じ、海外企業に出資を行っています。日本企業との共同投資や、日本企業と海外企業の橋渡しとしての役割を企図しています。
代表的な取り組みとして、2019年1月にバルト地域のファンドマネージャーであるAS BaltCapとの間で北欧・バルト地域におけるスタートアップ向け投資を行うベンチャーキャピタルファンドNordicNinjaを創設し、計20件の投資を実行しました。2023年3月には後継ファンドとなるNordicNinja IIを設立し、投資対象地域を北部ヨーロッパ地域全体に拡大して投資活動を行っています。また、2023年5月には米国およびポーランドにてファンド組成実績のあるff Venture Capitalと協働し、中東欧地域におけるスタートアップ向け投資を手掛けるベンチャーキャピタルファンドff Red & Whiteを新設しました。さらに2023年8月にはインドの政府系機関であるNational Investment and Infrastructure Fund Limitedと連携し、日印ファンド(India-Japan Fund)を立ち上げました。
JBIC IGは、これらファンドからの投資先企業と日本企業とを引き合わせ、協業を促進する活動などを展開しています。今後も、新たなファンドの組成を通じ、日本の産業界に付加価値を提供していきます。
JBIC IG Partnersの投資ストラクチャー概要
JBIC IGグループとして、海外のパートナーと連携し、組成する海外投資ファンドを通じて、海外企業に出資を行っていきます。

Project Highlight
日印ファンド(India-Japan Fund)への出資

2023年8月、JBICは日印ファンドへの出資コミットを行いました。JBIC IGがインドの政府系機関である National Investment and Infrastructure Fund Limitedと連携し運営するファンドです。本ファンドは、インドにおける再生可能エネルギー事業、電気自動車関連事業、廃棄物処理事業および水処理事業等の環境保全分野に加え、日本企業と協業する現地企業あるいはプロジェクトを投資対象としており、日本企業とインド企業の協業を促進することを目的としています。
インド政府は、2021年11月開催の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において「2070年カーボンニュートラル」を宣言し、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及促進等の気候変動対応を推進しています。また、2014年に公表した「クリーン・インディア」政策等を通じて、廃棄物処理や水処理といった国内の衛生問題の改善にも継続的に取り組んでいます。
また、多くの日本企業が不安定な世界情勢を受けたサプライチェーンの分断に直面する中、インドは生産拠点の移転先や新たな投資先として、近年経済成長が著しく、巨大な市場を有するとして注目されています。
JBICは、本ファンドの取り組みを通じて、インドにおける環境保全や日本企業の国際競争力の維持および向上に貢献していきます。
- その他の取り組み
プレスリリース(セクター:出資)