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産業ファイナンス部門

事業環境と重点課題

新型コロナに続く物流のひっ迫・材料調達難等不確実性の高い事業環境

2020年以降拡大した新型コロナウイルス感染症は、一時の深刻な事態を脱しつつあるものの、日本を含む多くの国・地域の経済活動に引き続き影響を及ぼしています。新型コロナウイルス感染症発生直後の行動制限による大幅な操業制限は緩和されてきていますが、局所的なロックダウンによる部品・原材料の供給停滞、重要物資である半導体の継続的な不足に加え、ウクライナ情勢を巡る地経学リスクの高まり等、日本企業は不確実性の高い事業環境に置かれています。

JBICが2022年1月に発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2021年度)」においても、企業が最も脅威に感じるサプライチェーンの外的ショックは、「疫病」を抑えて「物流の途脱・ひっ迫」が最多となる等、複雑で長い調達網を抱える企業にとって、物流の安定的な維持が最重要課題であることが示されています。また、材料調達難・コスト増というさまざまな課題に直面する中、とりわけ半導体不足は需要サイドを中心として他の幅広い産業にマイナスの影響を与えていることを再認識する結果となっています。

サプライチェーン強靱化・再構築と新たな海外事業機会の創出

昨今、日本を含む多くの国・地域では、サステナビリティ経営の推進や脱炭素への取り組みが進展し、製造コストの上昇等の影響が懸念される一方、新常態における消費ニーズ等新たな事業機会の創出も見込まれています。脱炭素社会の実現やSDGsへの貢献等社会課題の解決と利益創出の両立が日本企業にとっても経営課題となっています。

このような状況下、日本企業はサプライチェーン強靱化・再構築や新たな海外事業機会の創出に向け取り組んでいます。日本企業自らが海外で設備投資を行い、製造拠点の集約・分散や製造拠点間での生産工程の再調整を行う動きに加え、M&Aを活用した動きも見られています。日本企業による海外M&Aは2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大きく減少したものの(2019年826件→2020年557件)、2021年は625件と、渡航制限の緩和や対象企業の調査を一部オンラインで取り組む手法の普及等に伴い回復基調となっています(図表1)。今後も、2050年カーボンニュートラル実現に向け、生産プロセスの革新、化石燃料から水素・アンモニア等へのエネルギー転換の動き、そのための技術開発やDX投資を通じた事業拡大や、M&A活用による海外展開の継続が見込まれます。

図表1

中堅・中小企業の海外事業展開

中堅・中小企業の海外事業展開に目を転じると、先に述べた事業環境に置かれている状況にありながらも、日系大手企業の現地における部材調達ニーズへの対応という進出動機に加え、海外市場の需要を直接開拓して商機拡大を目指す動きのほか、海外の医療・リサイクル等の社会的課題の解決に資するビジネスモデルで海外展開を行う中堅・中小企業も見られるなど、海外事業展開を検討する中堅・中小企業の裾野や進出先国、資金ニーズは多様化しています。

JBICでは毎年「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」において、海外事業展開における中期見通しの調査を行っています。2021年度の調査では、海外事業を「維持」または「強化・拡大する」と回答している中堅・中小企業は回答企業全体の99.0%と中堅・中小企業の海外事業展開の意欲は依然として高くなっています(図表2)。新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されるなか、中堅・中小企業の海外事業展開の回復・拡大が期待されます。

図表2

JBICの取り組み

新型コロナ危機対応緊急ウインドウによる支援、および、さまざまな産業における日本企業の海外展開支援

インドのオフハイウェイタイヤ工場の画像インドのオフハイウェイタイヤ工場
米国セブン‐イレブン店舗の画像米国セブン‐イレブン店舗
PLM 社の冷凍・冷蔵トレーラーの画像PLM社の冷凍・冷蔵トレーラー

JBICでは第4期中期経営計画において「経済情勢の変化に即応した政策金融機能の発揮」を重点取組課題の一つに掲げており、2020年4月に創設した「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」(2021年12月末終了)の下で、2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた日本企業が関与する156件の案件に対する支援を実施しました。

また、「産業・社会構造の変革下における我が国産業の国際競争力強化支援」も重点取組課題に掲げています。2021年1月には「ポストコロナ成長ファシリティ」を創設し、日本企業の国際的なサプライチェーンの強靱化・再構築への対処や日本企業による海外M&A支援に取り組みました。

具体的には、日本企業がインドにおいて行うオフハイウェイタイヤ製造・販売事業に対する支援、日本企業が米国において行う自動車部品製造・販売事業に対する支援、日本企業が英国アナログ半導体企業や米国コンビニエンス事業等を買収するための資金を融資しました。

加えて、第4期中期経営計画の重点取組課題の一つである「国際経済社会の持続可能な発展に向けた地球規模の課題への対処」の取り組みとして、日本発のスタートアップ企業が米国において行う人工構造タンパク質素材の製造事業、日本企業がベトナムにおいて行うダイアライザ等医療機器の製造・販売事業、フィリピンにて行う輸液セット等医療機器の製造・販売事業および米国において行う手術機器等医療機器の製造・販売事業や、日本企業が米国において行う冷凍・冷蔵トレーラーのリース事業、タイにおいて行う加工食品等の製造・販売事業および日本企業がベトナムにおいて行う冷凍食品の製造・販売事業といったフードバリューチェーン強靱化に貢献する案件にも取り組み、社会的課題の解決に資する事業を支援しました。

海事産業および航空産業における日本企業の国際競争力の維持・向上のための取り組みも引き続き実施しました。これらの業界は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けており、いわゆる「巣ごもり需要」によりコンテナ船等に対する需要が増加する一方で、旅客需要の落ち込みやロックダウン等の影響を受けている企業もあります。こうした状況下、日本の航空会社による海外からの機体購入につき民間金融機関の融資に対する保証の供与を行い、また、航空機リース分野や海洋資源分野の日系企業の海外事業展開につき機動的な融資による支援を行いました。さらに日本企業による米国の大手海上コンテナリース会社の買収資金への融資を通じ、さらなる事業拡大・収益機会の獲得の支援を行っています。

中堅・中小企業の海外事業展開支援

JBICは本店および大阪支店に中堅・中小企業支援専門の部署を配置し、中堅・中小企業の海外事業展開支援に積極的に取り組んでいます。2021年度には、地域金融機関等と緊密に連携し、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた日本企業が関与する102件の案件を含む計116件の中堅・中小企業支援案件の出融資・保証等の承諾を行いました。

その支援先についても、従来の業種に捉われず、スタートアップ企業や、社会的課題の解決に資する事業等で現地市場を開拓する企業などへ広がりを見せています。JBICは、タイ・バーツをはじめとする現地通貨を含む外貨建て融資、あるいは地域金融機関に対するクレジットライン(ツー・ステップ・ローン)の設定等による地域金融機関自身の長期外貨資金の調達支援を通じて、中堅・中小企業の海外事業展開支援を行いました。

また、中堅・中小企業は大企業に比べて、海外事業に必要な情報収集等の面でも制約を抱えている場合があることから、中堅・中小企業支援の担い手である地域金融機関や公的機関、経済団体、中小企業支援機関、海外展開支援機関等との連携も強化しつつ、海外投資環境をはじめとする各種情報提供やJBICの海外駐在員事務所等も活用したセミナーや個別相談会を通じたきめ細やかな支援を実施しています。

日本企業が直面する危機や多様化するニーズへの対応

各国の政情や新興国経済の動向等、日本企業を取り巻く国際経済環境は絶えず変化しています。2021年は引き続き新型コロナウイルス感染症への対処、サプライチェーンの強靱化・再構築が多くの企業の課題として見られました。2022年に入り、新型コロナウイルス感染症の拡大により影響を受けた世界経済は一時の深刻な事態を脱しつつありますが、半導体不足の継続、原料価格の高騰や長期金利の上昇等、世界経済の不透明感に加え、ロシアによるウクライナ侵攻等、引き続き不安定な世界情勢は継続しています。JBICは、こうした変化や世界経済の動向、日本企業の資金ニーズ等を的確に捉えつつ、2022年7月に立ち上げた「グローバル投資強化ファシリティ」(調印期限:2025年6月末)も活用し、日本の産業の国際競争力の維持・向上のために貢献していきます。

産業ファイナンス部門では、大企業のみならず中堅・中小企業も含めた多くの日本企業が直面する課題に応じた支援を継続すると共に、ポストコロナを見据えた日本企業の課題・ニーズを的確に把握し、第4期中期経営計画で掲げる地球規模の課題への対処、サプライチェーン強靱化や日本企業のデジタル変革等に向けたM&Aによる技術獲得等への支援等、日本の持続的な成長につながる新たなビジネス機会の探索と創造に貢献すべく、さまざまな金融手法を駆使し、またリスクテイク機能の強化等を通じて、日本と世界をつなぐ役割を引続き果たしていきます。

取り組み紹介

ルネサス エレクトロニクス(株)による英国法人Dialog Semiconductor Plcの買収資金を融資

日本企業の海外M&Aを支援

JBICは、ルネサスエレクトロニクス(株)(ルネサス)との間で、貸付契約を締結しました。本件は、ルネサスが英国法人 Dialog Semiconductor Plc(Dialog社)を買収するために必要な資金の一部を融資するものです。Dialog社は、Wi-FiやBluetooth等のコネクティビティ技術を得意とするアナログ半導体企業です。ルネサスは、Dialog社の買収を通じて、製品ポートフォリオを拡充し、IoT、産業、自動車分野の高成長市場向けに、さらに強力で網羅的なソリューションを提供することを目指しています。本融資は、こうしたルネサスの海外事業展開を支援するものであり、日本の産業の国際競争力の維持および向上に貢献するものです。

住友電気工業(株)のフィリピン共和国法人が実施する自動車部品の製造・販売に必要な工場建設・賃貸事業に対する融資

日本企業の海外事業展開を支援
ワイヤーハーネス(提供:住友電気工業(株))の画像 ワイヤーハーネス(提供:住友電気工業(株))

JBICは、住友電気工業(株)(住友電工)のグループ会社であるフィリピン法人IWS Realty Corporation(IWSR)との間で、貸付契約を締結しました。本件は、IWSRを通じて、住友電工のフィリピンにおけるグループ企業が行うワイヤーハーネス等の自動車部品の製造・販売事業会社向け工場建設・賃貸事業に必要な資金を融資するものです。

住友電工は、ワイヤーハーネス等製造・販売事業をグローバルに展開しており、IWSRは工場建設・賃貸事業を通じて、住友電工のフィリピンにおけるワイヤーハーネス等のサプライチェーンを支えています。

自動車内部の隅々に張り巡らされるワイヤーハーネスは、激しい振動、熱への耐久性が求められるとともに、電力と情報を確実に行き渡らせるための高度な製造技術が求められます。住友電工は、ワイヤーハーネスの高度な技術を確立することで、世界トップシェアを獲得し、世界で走る車の4台に1台は住友電工のワイヤーハーネスが使用されています*1。また、今後、普及が期待されるEV、自動運転車の実現には、ワイヤーハーネスの高度な製造技術が必要不可欠なものとなっており、本融資を通じて、住友電工のフィリピンにおけるワイヤーハーネス等のサプライチェーン強靱化の支援に繋がることが期待されます。

本融資は、こうした住友電工の海外事業展開を金融面から支援するものであり、日本の産業の国際競争力の維持および向上に貢献するものです。

注釈
  1. *1 
     住友電工の調査による市場シェア推計に基づく。

グローリー(株)による米国法人の買収資金を融資

日本企業の海外M&Aを支援
RRSのバックオフィス向け紙幣硬貨入出金機(提供:グローリー(株))の画像 RRSのバックオフィス向け紙幣硬貨入出金機(提供:グローリー(株))

JBICは、グローリー(株)との間で、貸付契約を締結しました。本件は、グローリーの米国法人Glory Global Solutions Inc.が米国法人Revolution Retail Systems, LLC(RRS)を買収するために必要な資金の一部を融資するものです。

グローリーは1918年創業、国産初の硬貨計数機の開発を機に、さまざまな通貨処理機やセルフサービス機器の開発・製造・販売・保守に加え、電子決済サービス、生体認証ソリューション、ロボットSI等の事業を行っています。国内市場においてトップシェアを誇り、海外市場においては欧州を中心に36カ国で販売・保守拠点を有し、100カ国以上で事業を展開しています。北米において通貨処理機の製造・販売・保守の事業を行うRRSの買収により、両社の顧客基盤を活用したクロスセルによる事業拡大、ソリューション・製品ラインナップ拡充による販売強化、保守サービスを中心に事業効率性向上等のシナジーを発揮することで、北米地域における流通・小売市場での事業拡大を企図しています。

(株)ジェイ・エム・エスのフィリピン共和国法人JMS HEALTHCARE PHL, INC.が実施する医療機器等の製造・販売事業に対する融資

日本企業の海外事業展開を支援
ジェイ・エム・エス(JMS)の画像 

JBICは、(株)ジェイ・エム・エス(JMS)のフィリピン法人JMS HEALTHCARE PHL, INC.(JMSHP)が行う医療機器の製造・販売事業を対象とする貸付契約を締結しました。

JMSは、1965年に広島県廿日市市において、輸血起因の院内感染が発生しにくいプラスチック製のディスポーザブル医療機器(既に滅菌され、そのまま直ちに使用でき、かつ1回限りの使用で使い切る医療機器)の製造・販売を行う(株)日本メディカル・サプライ(1994年4月に(株)ジェイ・エム・エスに商号変更)として設立。医療機器の素材調達から製品化に至る全工程をほぼ内製化することを通じて、ユーザー要望への柔軟な対応力を強みとし、医療の安全と効率化、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に貢献する製品を開発してきたJMSは、輸液セット、シリンジおよび注射針、AVF針(血液透析用針)、血液透析装置、人工心肺回路、血液バッグ、成分献血用回路等幅広い領域で事業活動を行っています。

1970年代に海外進出したJMSは、現在、海外拠点として販売拠点が3つ、JMSHPを含む生産拠点が5つ、計8つのグループ会社を通じて世界約90カ国に製品提供しています。JMSHPに対する本融資は、感染症対策に資する輸液セット等の医療機器を製造するJMSHPが、JMSグループ各社を通じて日本、欧州、米国、および東南アジア向けに供給することを支援するものであり、各国の健康衛生水準の向上などに貢献することが期待されます。

三菱HCキャピタル(株)による米国大手海上コンテナリース会社の買収資金を融資

日本企業の海外M&Aを支援
被買収企業CAIのコンテナの画像 被買収企業CAIのコンテナ

JBICは、三菱HCキャピタル(株)との間で、アメリカ法人CAIInternational, Inc.(CAI)を買収するための資金の一部として、融資契約を締結しました。

三菱HCキャピタルは、高い流動性を有する高付加価値の資産を対象とした「グローバルアセット」を注力領域のひとつに位置付け、海上コンテナリース事業等の強化およびグローバル展開を計画しています。CAIは、1989年に設立された米国の大手海上コンテナリース会社であり、海上コンテナリース業界において世界有数のコンテナ保有数を誇っています。同社は、世界39カ国、180カ所のコンテナ返却先と使用契約を締結しているほか、12カ国に13拠点を有することで、世界各国のニーズに柔軟に対応しています。三菱HCキャピタルは、本買収を通じて、CAIを完全子会社化し、保有するコンテナ数(TEU*2ベース)で世界第2位グループの規模となり、今後も高い伸びが見込まれる海上コンテナリース需要を取り込むことでさらなる収益機会の獲得を目指しています。

本融資は、三菱HCキャピタルによる海外でのM&Aに必要な長期外貨資金を供給することで、日本企業の海外における事業拡大を支援するものです。

注釈
  1. *2 
     20フィートコンテナ1個分を表す単位。
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