株式会社国際協力銀行 総裁記者会見
- 日時)2019年2月26日 16:30~17:20
- 場所)国際協力銀行 本店
- 説明者)総裁 前田 匡史
Ⅰ.G20に向けて
今年は日本でG20が開催されます。まず、このG20におけるアジェンダに関する取り組みについてご紹介致します。
1.低炭素化の実現 資料:P.3
一つ目は低炭素社会の実現であり、取り組みを3点説明します。
1点目はガスバリューチェーンの構築です。各国におけるガス発電への燃料転換促進に貢献すべく、ガス火力発電所建設に対するファイナンスにとどまらず、LNG受け入れターミナル等のインフラを含めたガスバリューチェーン全体の構築支援をパッケージで提案していきたいと考えています。これは、従来型の石炭火力から、ガス火力等のより環境負荷が少ない、持続可能な発電事業への転換を促進するための取り組みです。
2点目は温室効果ガス削減に向けた一層の取り組みです。地球温暖化の問題については、問題があるかないかという根源的な論点はありますが、いずれにしても再生可能エネルギー関連事業は促進していく必要があるだろうと考えており、先ほどの石炭火力からガス火力への転換とともに取り組んでいきたいと思っております。後ほど、実績のところでも世界最大規模の洋上風力発電、イギリスのMoray Eastという案件をご紹介します。
3点目は、交通や都市開発の分野です。グリーン・モビリティやスマート・シティ等の新世代の社会インフラの整備に必要な最先端のテクノロジーの開発推進、新技術の積極的な活用に向けた支援を強化して参りたいと考えております。
2.ダイバーシティー 資料:P.4
2016年9月、JBICはマイクロファイナンス機関向けに投融資を行うJapan ASEAN Women Empowerment Fundに対して出資承諾しました。このマイクロファイナンス機関は、ASEAN諸国等における女性による起業等を支援しており、JBICは最大3,000万米ドルの出資を行うものです。
また、昨年、女性の社会進出を支援していく取り組みの一貫として、G7の2X Challenge: Financing for Womenに対し、カナダ、フランス、イギリス、米国等とともに、日本からはJBICとJICAが参加しております。これはG7における取り組みでしたが、G20の参加国に拡大する形で、取り組みをさらに強化していくものです。
3.日米豪連携 資料:P.5
自由で開かれたインド太平洋構想という日本政府の取り組みに沿って、昨年11月のマーク・ペンス米国副大統領の来日機会を捉え、JBICがアメリカのOPIC(海外民間投資公社)との間で取り組んできた協力を拡大し、豪州のDFAT(外務貿易省)、同じくEfic(輸出金融保険公社)との間で、インド太平洋地域を含む第三国における日米豪の協調プロジェクト促進のために業務協力協定を締結しております。
Ⅱ.2018年度の特徴的取り組み
1.オープンイノベーション促進に向けたファンド出資 資料:P.6
2018年度の取り組みについて、特徴的なものをご紹介致します。まずオープンイノベーション促進に向けたファンドへの出資です。北欧・バルト地域のJB Nordic Fund Iに対し、JBICと戦略投資家であるオムロン、パナソニック、ホンダの3社がLPとして参加しております。BaltCapというバルト地域で最大のファンドマネージャーと私どものグループ会社であるJBIC IG Partnersが共同でGPとしての役割を果たします。
北欧・バルト地域は、サイバーセキュリティー、AI等、IT先端分野のスタートアップ企業が多くございまして、ビジネス活動が活発です。いわゆるユニコーンと言われる企業も出てきており、政府系ファンドによるベンチャー企業支援等を背景として、すでに世界でも有数のスタートアップ企業のハブになっております。このファンドは、投資家である3社の日本企業と同地域のIT先端企業との事業提携、いわゆるビジネスマッチングの機会や日本企業によるIT先端企業への投資機会の獲得を促進し、日本企業の活動を戦略面で支援していくことを目的としています。金額は、全体で1億ユーロの規模であり、スタートアップ企業向けでは、この地域では最大規模のファンドになります。JBICのLPとしての出資額は最大で4,000万ユーロと、LP投資家の中では最大規模の投資を決定しています。
2.世界最大規模の洋上風力発電向け融資 資料:P.7
2018年11月、イギリスのMoray East洋上風力発電事業に対するプロジェクトファイナンスを承諾しました。JBICの融資承諾額は7億4,300万ポンド、協調融資総額は15億1,700万ポンド、これはJBICにとって過去最大の再生可能エネルギー事業向けの融資になります。
MOWEL(Moray Offshore Windfarm (East) Limited)がイギリス北部スコットランドのMoray沖合22kmで総発電容量950MWという巨大な発電容量の洋上風力発電所を建設・所有・運営するもので、昨年の夏に創設しました「質高インフラ環境成長ファシリティ」の対象案件であります。本件では、MHI Vestasという、三菱重工とデンマークのVestas社による合弁会社が製造する最新式の機器を使用しますが、JBICはこのMHI Vestasに対し、2014年3月に出資参画をしています。このように、本件は低炭素型インフラ及び本邦ユーティリティの海外事業展開を積極的に推進していくという我が国政府の方針に合致したものです。
3.特別業務によるアルゼンチン向け融資枠の設定 資料:P.8
2018年11月、インフラ関連設備輸出を対象とするアルゼンチン国立銀行向けの輸出クレジットラインを設定致しました。JBICの融資承諾額は3,600万米ドル、協調融資総額6,000万米ドルです。昨年アルゼンチンのブエノスアイレスにおいて開催されたG20のサミットに安倍総理が参加された機会を捉えて調印しました。20年ぶりのアルゼンチン国立銀行向けの融資であり、リスクの高い案件に対して融資を行う特別業務勘定を活用し、2017年5月のアルゼンチン政府向けの融資に続いて同国を支援するものです。
4.アフリカにおける港湾開発を支援 資料:P.9
今年TICAD 7が横浜で開催されます。2019年1月、JBICはアンゴラ政府向けに輸出クレジットラインを設定致しました。一部新聞報道にも出ておりましたが、アンゴラの交通省の港湾局が実施するナミベ湾の包括開発プロジェクトにおいて、豊田通商等からの機器・設備を購入するための資金に関するものです。本件は、JBIC初のアンゴラの港湾セクター向けの融資あり、IMFとの間でもこの融資について情報共有を行うことで、IMFの同国向け支援方針とも合致した債務持続性に配慮した融資です。