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定例記者会見(2021年3月2日)

株式会社国際協力銀行 総裁記者会見

1.ポストコロナ成長ファシリティ創設について 資料:P.3~5

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はじめに、ポストコロナ成長ファシリティの創設の経緯をご説明します。外国為替資金特別会計を使い、そこから米ドル資金を長期かつ低利で融通するという仕組みですが、JBICは、2020年1月に、政府の総合経済対策の一環として、「成長投資ファシリティ」を創設し、その下に、地球環境保全案件、例えば再生可能エネルギー案件や、環境技術取得を目的としたM&Aなどを支援する「質高インフラ環境成長ウインドウ」と、日本企業の海外展開を広く支援する「海外展開支援ウインドウ」を設置しました。

2020年4月には、新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策として成長投資ファシリティを拡充し、新たに「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」を設けました。これは、コロナ禍の影響を受けた日本企業を支援することを目的としており、例えばサプライチェーンの寸断や、需要の減少といった状況に対する緊急対応に取り組んでいます。

2020年7月、「国際協力銀行法施行令の一部を改正する政令」及び関連する財務省の告示が施行され、先進国向け及び国内企業向けの融資を拡充しました。JBICは海外事業を支援しており、国内企業向け融資は限定されていますが、現地法人への増資や親子ローンを供与するための資金も支援対象に追加しました。

本年に入り、再度総合経済対策の下で、「ポストコロナ成長ファシリティ」を創設し、2つのウインドウを設置しました。1つは「脱炭素推進ウインドウ」で、2050年のカーボンニュートラルを目指し、脱炭素社会に向けた質の高いインフラの海外展開等を支援するものです。もう1つは「サプライチェーン強靱化ウインドウ」で、日本企業による海外サプライチェーンの確保・再編・複線化等を支援することを目的としています。前述の「成長投資ファシリティ」の「質高インフラ環境成長ウインドウ」と「海外展開支援ウインドウ」は、この新ファシリティの創設で置き換わりましたが、「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」は、本年の6月末まで継続します。また、新ファシリティの創設にあわせ、先進国向けの融資の拡充を、2022年6月末まで延長することとなっております。

「脱炭素推進ウインドウ」について、「成長投資ファシリティ」の質高インフラ環境成長ウインドウを発展・強化し、新たに水素及びバイオマス燃料を対象とし、海外における製造・販売事業及び日本への輸入を含むサプライチェーン全体を支援対象に追加致しました。脱炭素化の切り札として期待される水素ですが、現時点ではコストが相対的に高いため、需要を拡大し、コストを安くしていく必要があります。JBICは、再エネ由来のグリーン水素と、化石燃料由来でCO2回収技術と組み合わせたブルー水素の双方を対象とし、水素キャリアの製造・輸送、さらに発電、輸送、産業用途などの水素の利活用も支援していきます。今後はこのような支援を含め、米国、豪州等とも連携しながら、我が国として日本企業等による脱炭素社会に向けた海外事業活動を後押しして参ります。

「サプライチェーン強靱化ウインドウ」については、「成長投資ファシリティ」の海外展開ウインドウを発展・強化し、日本企業のサプライチェーンを構成する海外事業者、例えば現地サプライヤーや販売代理店なども支援対象にしました。本年2月24日に、米バイデン大統領は、新たな大統領令に署名をし、同盟国及びパートナー国を巻き込んでサプライチェーンを強靱化してくことを表明しました。日本が第三国において重要かつ戦略的な物資等のサプライチェーンを強化することは、この米バイデン政権の対応ともシンクロナイズするものです。

2.日米豪連携の進展 資料:P.6~7

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日米豪連携の第1号案件として、本年1月、パラオ国営海底ケーブル公社が行う、シンガポールと米国本土の西海岸を結ぶ大容量の光海底ケーブルからパラオ島までの約110kmの海底ケーブル(支線)プロジェクトに対して支援を行いました。本件はNECが海底ケーブルを輸出するもので、特別業務として400万米ドル融資しております。パラオは人口が2万人程の小さな国ですが、地政学的な要衝にあります。主要産業が観光業であるパラオはコロナ禍で苦境に立たされ、一時は送電線の敷設を断念した経緯がありましたが、日米豪で連携・協力の上実現し、同枠組みでの第1号案件となりました。

同じく本年1月、米国国際開発金融公社(USDFC)との間で新たな覚書を締結致しました。これはUSDFCの前身である米国海外民間投資公社(OPIC)との間で2017年に締結した覚書をreviseするものです。USDFCとの間では、日米豪連携の枠組みの中でのASEAN諸国への具体的な働きかけとして共同でミッションを派遣してきましたが、さらに協力分野拡大を行うため、従来のインフラ、エネルギー、天然資源に加え、電力、水素、デジタル・情報通信、サプライチェーンを追加した他、協力地域としても、従来のインド太平洋、中東・アフリカに加え、西半球や中東欧での協力を追加しました。この覚書の下、今後は個別案件ごとに価値観を同じくする第三国とも連携することを確認しております。

3.最近の特徴的な取り組み 資料:P.8~10

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次に、2020年7月に実施した中東湾岸に位置するカタールにおける太陽光発電事業に対する融資です。首都ドーハの西方約80kmにおいて、発電容量約800MWの大きな太陽光発電プラントを建設・所有・運営し、完工後25年に亘ってカタールの電力水公社に売電するプロジェクトで、丸紅(持分比率20.4%)と仏TOTAL Solar International(同19.6%)等と協働して取り組んでおり、協融総額は3億3,000万米ドル、うちJBIC融資額が1億6,500万米ドルです。脱炭素社会の実現に向けたカタールにおける初の大型太陽光発電事業であり、JBICにとっても、これまでは多くのLNG案件への支援を行ってきましたが、同国での初の再エネ案件となりました。

2件目は、日立製作所によるスイスのパワーグリッド事業の買収に対する融資です。スイスのABB Ltd(ABB社)のパワーグリッド事業の買収資金を融資するもので、協融総額は約40億米ドル相当、うちJBIC融資額が24億米ドルです。日本国内における洋上風力の建設地は、風況の良い北海道や東北地方北部など、首都圏等の需要地から遠い場合が多いですが、送電ロスに対応するのが、ABB社が有する高圧直流送電技術です。本買収を通じて、日立がABB社の技術・ノウハウを活用し、海外での事業拡大や再エネ発電との連携によるイノベーションが促進されることが期待されます。

3件目は、インドステイト銀行を通じた自動車サプライチェーン支援事業に対する融資です。2020年10月、インドにおける日系自動車の販売金融等への支援として、協融総額10億米ドル、民間金融機関分4億米ドルにはJBIC保証を供与致しました。インドの自動車市場は、2019年度販売台数ベースで世界第5位であり、マルチスズキを中心とする日系自動車メーカーが市場シェアの過半を占める、日本にとって重要な市場です。2020年11月にモディ首相と直接対話を行った際には、本案件についてよく認識されており、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、インド国内のみならず、インド周辺国も含めた第三国での協力についても意見交換をしました。前述の日米豪連携においても、今後日本が中心となって、米国と豪州にさらにインドを加えたQUADの枠組みを活用していくことが重要だと考えております。

記者会見等