株式会社国際協力銀行 総裁記者会見
- 日時)2019年7月25日 15:00~16:00
- 場所)国際協力銀行 本店
- 説明者)総裁 前田 匡史
Ⅰ.G20振り返り 資料:p.3~5
先月開催されたG20大阪サミットに関連してJBICの取り組みをご紹介します。
まず、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が採択されました。具体的には、「インフラ・プロジェクトが、価格に見合った価値を実現し、安全かつ効果的であることを確保する。これにより当初想定された利用法から逸脱しないようにするため、調達における開放性・透明性が確保されるべき」ということ、また、「プロジェクトレベルでの財務面の持続可能性、公的資金によるインフラ・プロジェクトや偶発債務に与えるマクロレベルでの債務持続可能性の影響が、考慮され、透明であることが必要」ということが合意されています。
JBICも本年6月、日米豪三国の政府系金融機関、すなわち米国・海外民間投資公社(OPIC)、豪州・外務貿易省(DFAT)及びオーストラリア連邦輸出金融保険公社(Efic)の三者との共同声明において同様の原則につき合意しています。この声明では、インド太平洋地域等におけるインフラ、エネルギー資源等のセクターで、開放性、透明性、包摂性、持続可能性、労働者や女性の配慮を含む環境社会に係る国際的な基準の順守、各ホスト国政府の主権尊重といった日米豪が共有するグローバルスタンダードを踏まえたファイナンス支援に向けた取り組みを継続していくことを確認しました。
中国との間でも、同じ5原則を前提に協力することで合意しています。本年4月、第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが北京で開催されました。昨年開催された第1回フォーラムと比して「質の高い」や「持続可能」といった言葉が頻繁に習近平国家主席の基調演説で引用されており、中国としてもこれらの原則を意識していることがわかります。JBICも本年5月、北京において中国国家開発銀行と共同で日中第三国市場金融フォーラムを開催しました。日中両国企業の第三国における協働について日中両国の民間企業や金融機関との間で幅広い意見交換を行い、100名余りの方に参加頂きました。
次に、ロシアのアークティックLNG2というプロジェクトにも進展がありました。ロシアの民間企業NovatekがヤマルLNGプロジェクトに続いて取り組もうとしている案件で、北極圏にあるロシア北部ギダン半島の陸上ガス田を開発し、年間1980万トンのLNGプラント(ヤマルLNGプロジェクトは年間1650万トン規模)を建設・運営するというものです。三井物産株式会社(以下「三井物産」)及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「JOGMEC」)は、G20の開催に合わせ、本プロジェクト会社の10%の持ち分を取得することに合意し、日露両首脳の前で文書を交換しました。生産されるLNGは北極海航路を活用し、日本を含むアジアと欧州などの主要なマーケットに販売されます。LNGの輸送に関しては、ヨーロッパ経由の西回り航路では34日かかるに対して東回り航路では約18日に短縮されています。本年7月1日、JBICとしても三井物産がJOGMECと共に設立した特別目的会社を通じて、本プロジェクト会社の持ち分を取得するための資金の一部として、総額1億2500万ユーロの融資に合意しました。元々北極海の東回り航路は1年間のうち約3ヶ月間しか航海できなかったところ、砕氷能力のある新しいLNG船を利用することで、年間7ヶ月間航海可能になると言われています。
Ⅱ.環境分野での取り組み 資料:p.6
環境分野における低酸素社会に向けた協力としては、政府としても、「パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、『低炭素型インフラ輸出』を積極的に推進する」としています。私も本年5月にベトナムに出張し、政府関係者と面談を行いました。
この他、太陽光発電事業等に必要な資金を融資するため、ベトナム外商銀行との間で地球環境保全業務(GREEN)の一環として、協調融資総額2億ドル、うちJBIC分1億ドルのクレジットラインを設定しました。
Ⅲ.TICAD7に向けて~アフリカ向けアプローチ~ 資料:p.7
本年8月末には横浜で第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されますが、JBICとしてもアフリカにおける日本企業の事業展開を支援しています。ここでは、3つのアプローチをご紹介します。第一に、社会・環境関連の支援を拡大するということで、「質高インフラ環境成長ファシリティ」を活用し、風力発電や地熱発電等のクリーン電源、水供給・水質汚染防止や廃棄物処理といったアフリカの社会的な課題に対する解決策を提供したいと考えています。また、ヘルスケアや通信、サプライチェーンの強化を含めたアフリカの持続可能な社会基盤構築を支援していきたいと思います。第二に、国際機関・他国との連携強化ということで、国際機関であるアフリカ開発銀行(AfDB)や欧州投資銀行(EIB)、或いはトルコやインドといった第三国との連携を通じて、アフリカ向け支援ネットワークや案件形成を一層強化したいと考えてます。第三に、日本企業によるアフリカ向けの輸出・投資の拡大を支援していきたいということで、本年5月と6月にそれぞれ輸出クレジットラインを設定しました。引き続き、地域金融機関等とも協力をしながら、取り組んでいきたいと考えております。