株式会社国際協力銀行 総裁記者会見


- 日時)2026年2月26日(木曜日)15時00分~16時00分
- 場所)国際協力銀行 本店
- 説明者)総裁 林 信光
- 配布資料)定例総裁記者会見
1.最近のJBICの取組~第5期中期経営計画の重点取組課題の取組状況~ 資料:p.1~12
本章では、第5期中期経営計画の重点取組課題に沿って、具体的な活動をご説明申し上げます。
Ⅰ. 持続可能な未来の実現 資料:p.1~2
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米国における案件事例(低炭素アンモニア):
JBICは、水素・アンモニアに積極的に取り組んでいくことを念頭に2022年に次世代エネルギー戦略室を設立しましたが、実際には、特にグリーン水素・アンモニアはコストが非常に高く案件を進めるのは難しい面があります。日本の製造業において低炭素アンモニアに対する期待が高まる中、本プロジェクトは、CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)技術を用いて低炭素アンモニアを製造するものです。本プロジェクトは、日本の経済産業省が実施する「価格差支援メカニズム」(注1)の対象にもなっています。
(注1)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)に基づく価格差に着目した支援制度 -
ウズベキスタンにおける案件事例(再生可能エネルギー):
本案件にて日本勢と共に参画しているACWA Powerは、中東・アフリカ地域を中心に発電・海水淡水化・水素製造事業等の実績を有するサウジアラビアのエネルギー関連企業です。中央アジアに位置するウズベキスタンは地政学的にも重要な国であり、このような地域で同社と一緒に案件を組成できたのは意義があることだと思っています。本件は、アジア開発銀行・欧州復興開発銀行・イスラム開発銀行という複数の国際開発金融機関との協調融資により実現した大型のプロジェクトファイナンス案件です。 -
インドにおける案件事例(バイオ燃料):
インドは中国に並んで石炭火力による発電が多い国ではありますが、再生可能エネルギー普及に向けた取り組みにも力を入れております。本件は、同国でバイオ燃料の製造・発電事業向けの支援を行ったものです。本プロジェクトが行われるアッサム州は、インドにとって地政学上の重要性も高い地域である一方、所得が低いという課題があります。本プロジェクトは、同地域における所得向上にも寄与するものであり、2025年5月に行われた本プロジェクトの完工式にはモディ首相も参加するなど、インド政府にとっても重要な取り組みになります。 -
コートジボワールにおける案件事例(ESGサムライ債):
コートジボワールは、アフリカの中でも政治経済的に安定している国であり、JBICとしてのコートジボワール向け支援としては、2025年5月に実施した同国政府に対する初のクレジットライン設定(注2)に続くものです。コートジボワール政府が発行するサステナビリティボンドに対する保証を行うことで、同国の発展に貢献しつつ、社会問題の解決につなげることを目指しています。(注2)2025年5月30日付プレスリリースをご参照ください。
Ⅱ. 我が国産業の強靱化と創造的変革の支援 資料:p.3~7
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原油資源(UAE):
UAEは日本にとって原油の最大の輸入先です。JBICは、原油の安定的確保を目的とした融資をUAEの国営石油会社であるADNOCに対し計7回(本案件含む)実施し、非常に密接な関係を築いてきました。ADNOCとは、同社の脱炭素・再生可能エネルギー分野での取り組みにおける日本企業との協業促進に向けた連携強化も進めています。 -
アルミニウム(ブラジル):
日本がアルミ地金の全量を輸入に依存する中、本案件の融資先であるブラジル法人ALBRASは、これまで40年にわたって日本にアルミを提供している企業です。あらゆる産業で低炭素アルミの必要性が高まる中、本案件は、再生可能エネルギーの電源を豊富に有するブラジルで低炭素アルミを製造する資金を融資するものであり、脱炭素に向けたサプライチェーン強靱化に資する取り組みです。 -
炭素繊維(米国):
東レは従来から炭素繊維分野に強い企業ですが、当該分野においても中国・韓国の企業が競争力を増してきています。本融資は米国における東レのサプライチェーン強化を目的に実施したものです。 -
コンテナ船/造船業(シンガポール):
日本の造船業は、中国企業の高いシェアおよび韓国企業の特定分野における競争力の高さを前に厳しい状況にありますが、海上貿易への依存度が高い日本にとって非常に重要な産業です。また、裾野が広い産業であるため、造船業向け支援は地域の雇用創出につながり、地域経済にとっても重要となります。また、本案件の支援対象となるコンテナ船はメタノールやアンモニアにも燃料転換できる次世代の船であり、その新規性においても支援意義がある取り組みです。 -
スタートアップ向け支援:
JBICは、スタートアップの投資体制を強化しています。従来、スタートアップ向け支援についても通常の案件と同様の意思決定ラインで、支援の検討を行っていましたが、現在は、スタートアップ投資委員会を立ち上げ、そこに権限を一任する体制を整えています。このような体制の下、日本発のスタートアップのうち、特にレイターステージのスタートアップ向けに投資を行っています。投資実績は4件ありますが、そのうちの一社である米国のSUN METALONは、製造工場等で発生する金属廃棄物を、その場でリサイクルをすることが出来る特殊な技術を有しています。 -
革新的技術・事業の展開支援(フュージョンエネルギー(核融合)、水循環システム):
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フュージョンエネルギーは今後必ず必要となる重要な脱炭素エネルギー源です。日本では京都フュージョニアリングという会社が先進的な取り組みをしていますが、世界的に技術競争が激化しています。日本政府および日本の産業全体としてバックアップすることが重要であり、この度JBICも融資を行いました。
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カリブ海の島嶼国では、日本のように大規模な水道パイプラインを建設するのは現実的ではありません。このような中、ポータブルな家庭用水循環システムの製造・販売事業は社会的にも意義があると考え、政府系金融機関という立場を活用し現地政府と会話を行いつつ、WOTAに対し、JBICとして2回目の融資を行いました。
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地域金融機関との連携強化を通じたグローバルに活躍する中堅・中小企業支援:
JBICは、中堅・中小企業向け支援に注力して取り組んできています。そのような中、中堅・中小企業を支援する地域金融機関との間で覚書を締結し、JBICが有する海外拠点のネットワークを活用した海外事業のモニタリング情報等を共有しています。ありがたいことに、数多くの地域金融機関の皆さまからお話しを頂き、多数の覚書を締結しております。また、それに基づく案件も着実に出てきているところです。
Ⅲ. 戦略的な国際金融機能の発揮による独自のソリューション提供 資料:p.8~12
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南米における取り組み:
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南米の大国であるブラジルは、2025年にはCOP30を開催し、現ルーラ大統領の政権の下、脱炭素社会の実現に向けて熱心に取り組んでいます。JBICは、ブラジルの国営石油会社であるPetrobrasとの間で、脱炭素・環境関連事業に必要な融資を目的とするクレジットラインを締結した上で、具体的な融資案件の実行に向けた協議を継続しています。
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加えて、同国におけるバイオ燃料・送電分野を中心とする気候変動対策への支援を進めるべく、JBICはクレジットライン組成に向けた覚書を複数の国営金融機関と締結しています。ブラジルは日本企業の活躍が多い国でもあるため、JBICとしても引き続き未来につながるような案件を発掘していきたいと考えています。
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アフリカにおける取り組み(3Dプリント義足、LPG事業):
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一般的に、義足製造は専門家が多くの時間をかけて製造する必要がありますが、インスタリムは、独自開発の3Dプリンター技術を用いてより安価・効率的な義足の製造を実現しています。JBICは、同社が医療機器等の普及が不十分であるナイジェリアで実施する製造・販売事業向けの資金を融資しました。
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サブサハラ・アフリカ地域では家庭用燃料として薪や木炭を使用することから、温室効果ガスの発生が問題となっています。JBICは、液化石油ガス(LPG)への転換を支援する取り組みとして、ETC GroupのLPG事業に融資をしました。
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アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)に関連した取り組み:
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高い競争力を有する商船三井が実施するシンガポールにおけるFSRU傭船事業に対する融資を行いました。本支援は、シンガポールによるガスの安定的な輸入実現にも貢献します。
- タイでは、他のASEAN諸国と比して、発電事業の自由化が進んでいます。このような中、JBICは、タイに進出している日本の製造会社によるクリーンな電力の調達・省エネの推進への支援を行っています。具体的には、同国において省エネ投資推進プラットフォーム(AZEC-SAVE)を立ち上げた上で、省エネ機器のリースを行う東京センチュリーの現地法人に対するクレジットライン設定を行い、同国における日本企業の省エネ技術導入を促進しています。
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インドにおける取り組み:
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インドは、JBICの2025年度海外投資アンケート(GLOBE)調査(注3)において「中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)」にて圧倒的に1位になっている国で、日本企業の進出が進んでいます。このような中、日系自動車メーカーが、インド市場にて環境配慮車両の製造・販売能力を拡大するためのサプライチェーン強化に必要な資金を、インド最大の国営商業銀行のSBIを通じて融資しています。
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同様に、JBICは農業関連市場に強みを持つインド地場銀行であるICICI銀行を通じて、日系農機メーカーのサプライチェーン強化に必要な資金を融資しています。(注3)2025年12月11日付プレスリリースをご参照ください。
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ウクライナ・周辺国における取り組み:
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ウクライナ侵攻開始から4年が経過していますが、JBICは引き続きウクライナ支援を行っております。ウクライナ支援を行うポーランドの政府系金融機関が発行する私募円建て外債の一部取得を通じてウクライナ避難民向けの人道支援に資金拠出を行いました。
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加えて、周辺国のポーランドにおいては、商船三井が実施するFSRU傭船事業に対する融資を通じて、同国のロシア産天然ガスへの依存度を減らし、代替の輸入天然ガスへの移行を支援しました。
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今後、欧州のパリ・ロンドンに続く第三の事務所としてポーランドのワルシャワに事務所を設立する予定です。経済発展が進む同地域におけるGX・DX関連分野での日本企業向け支援を行うとともに、ウクライナ復興支援を強化することを目的としています。
2.日米政府の戦略的投資イニシアティブに関する対応 資料:p.13~14
最後に、日米政府の戦略的投資イニシアティブに関するJBICの対応について、説明します。
2025年9月4日の了解覚書の締結に伴い、日本が最大5,500億米ドルを米国に出融資することが決定しました。本覚書においては、海外事業向け支援という文脈において、JBICと、日本貿易保険(NEXI)の保証が付いた民間金融機関による融資が期待されています。
2026年2月18日付の三省(財務省・経済産業省・外務省)プレスリリース(注4)において、具体的に3つのプロジェクトを推進していく旨の発表がございました。これまで、JBICも参加する形で、日米の各関係者との間で案件の遂行に向けて調整し、JBICとしてこれまで培ってきたプロジェクトファイナンスの案件組成の経験や、さまざまなリスクの対処法に関する知見を動員し、協議を進めていきました結果、先般、ようやく該当の3つのプロジェクトについて推進することを合意できるレベルに到達できました。
三省プレスリリースにも記載のとおり、引き続き日米間での協議をしている状況でありますが、これらプロジェクトは経済安全保障上重要性が認められ、日本企業にとっても、中堅・中小企業含め、ビジネスの拡大につながるものと考えております。それに加え、JBIC法にも規定されております、日本裨益・償還確実性・収支相償といった原則が確保できるよう、さらなる詳細の調整を進めている状況です。
米国の関税措置を受け、JBICが現地事務所や業界関係者にヒアリングを実施したところ、多くの日本企業は、関税の影響やインフレ・金利への波及を見極めるため「様子見」の姿勢を示しています。また、既に米国に工場を持つ企業の中では現地生産へのシフトを進める動きもあるものの、サプライチェーン全体を急に変更することは困難であるということが読み取れます。JBICとしても、日米交渉の動向を注視しつつ、設備投資資金等の資金需要の発生に対しては引き続き支援を行っていく所存です。
(注4)財務省発表のプレスリリースは、日米政府の戦略的投資イニシアティブの第一陣プロジェクトについて : 財務省をご参照ください。





